相場展望5月20日 良い所取りしてきた株式市場、悪材料に反応強める 仮想通貨ビットコイン急落で、NYダウ一時▲580ドル安

2021年5月20日 10:47

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/17、NYダウ▲54ドル安、34,327ドル(日経新聞)
  ・想定以上に物価上昇が進み、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和的な金融政策の見直し時期を早める可能性が意識された。
  ・インフレ懸念を背景に、米長期金利の先高観が根強く、金利上昇局面で相対的に割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売りが優勢となった。

【前回は】相場展望5月17日 日本株の下落率大きい原因は『日銀ETF購入の変化』 これは、日銀による『テーパリング(金融の段階的縮小』

 2)5/18、NYダウ▲267ドル安、34,060ドル
  ・NYダウは寄付き時は上昇していたが、住宅着工戸数が予想を下回ったほか、法人税増税を警戒し、下落に転じた。(フィスコ)
  ・4月米住宅着工戸数が予想外に前月比▲9.5%減と、予想▲2.2%以上に鈍化した。住宅需要は強いものの、建設労働者不足や木材など資材価格の高騰が、住宅供給の制約となって景気回復を抑えかねないと、米景気への楽観的な見方がやや後退した。資本財など景気敏感株の一角に売りが優勢となった。主力ハイテク株は金利低下にもかかわらず、売りが続いたのも相場の重荷になった。(日経新聞)

 3)5/19、NYダウ▲164ドル安、33,896ドル(日経新聞)
  ・代表的な仮想通貨ビットコイン価格は5/19、急落し、市場心理を冷やした。ビットコイン関連銘柄のテスラ、スクエアなどが軒並み下げた。
  ・仮想通貨の急落が、割高感のある成長(グロース)株の売りを誘った。
  ・売りは景気敏感株にも広がり、航空機のボーイング、建機のキャタピラー、米原油先物の下落を受けて石油のシェブロンも売られている。
  ・NYダウは一時▲580ドルを超える場面があった。
  ・リスク警戒感が高まり、VIX恐怖指数は+3.9%増の22.18に上昇した。

●2.米株式市場は、今まで『良い所取り』して上昇してきたが、最近は『悪い材料にも反応始める』

 1)悪い材料
  (1)金利上昇
  (2)インフレ圧力増
  (3)コスト上昇で企業業績への懸念
  (4)住宅着工件数の伸び鈍化
  (5)ビットコイン急落

●3.ビットコイン、イーサが▲20%超安、暗号資産市場で時価総額1兆ドル消失(ロイターより抜粋

 1)中国の規制強化や環境問題への意識の報道などで急落につながった。5/19朝、前日から▲22%超安い30,066ドルと1月終盤以来の安値を更新した。4月14日に付けた直近の高値64,895ドルから▲54%下回る水準。ビットコインはその後、下げ幅を縮小したが、それでも4万ドルを下回っている。

 2)テスラは前週にビットコインによるテスラ車支払いの受付を停止すると表明した。

 3)暗号通貨イーサも一時▲40%急落し、最高値から▲57%安を記録した。その後、下げ幅を縮小した。

●4.FOMC議事録公表を受け、金融緩和の縮小協議開始への思惑強まる(フィスコ)

 1)NY外為市場の反応として、金利先高観を受けドル買いが再燃した。米債券市場では下落し、10年債利回りは1.62%から1.68%まで上昇した。

 2)FOMC議事要旨の内容
  (1)目標が達成されるまで、金融緩和を継続。
  (2)経済・雇用活動の指標は強まった。
  (3)2%を上回るインフレを目標に。
  (4)ボトルネックは来年以降も物価圧力を与える可能性。
  (5)インフレは一時的に上昇後、低下。

●5.米5月NY連銀製造業景気指数は1カ月連続で活動拡大、物価は過去最高へ (フィスコより抜粋

 1)価格の上昇は、住宅市場にも表れている。建設コストは前年比で+12%、木材費は+300%の上昇、銅は+90%上昇した。

 2)様々な指標からか価格の上昇は明らかである。今後は、果たして価格上昇が連邦準備制度理事会(FRB)の見通し通り「一時的」にとどまるか、または一部市場が警戒しているようなインフレ高進につながるかどうかを見極めていくことになる。

●6.バフェット氏、石油株や銀行株を売却し、現金保有額を積み増しているのに注目したい    

 1)1~3月期に、石油大手のシェブロンの株式を大幅に減らした。 また、銀行大手のウェルズ・ファーゴ株の全株を売却した。

 2)バフェット氏、「米経済は、予想以上にインフレが進行し、『過熱』」と認識。

●7.米賃金上昇:急速な経済再開に伴い、飲食業界や小売りなどでは人手不足(日経新聞)

 1)米バンカメ :最低賃金20⇒25ドルに引上げ、長期的に人材確保・格差是正
 2)マクドナルド:従業員の時給を平均10%引上げのため
 3)アマゾン  :物流施設の従業員の昇給を半年前倒しする

●8.米・4月住宅建設許可件数は176万戸(年換算)と、予想177万戸を下回った(フィスコ)

 1)4月住宅着工件数は156.9万戸と、予想170.5万戸・3月173.9万戸を下回った。

 2)解説 (トレーダーズ・ウェブより抜粋
 ・建設許可の増加が需要の底堅さを示す一方、実際の着工件数の伸び悩みがコロナ禍に おける感染拡大の回避を理由とした作業の遅れや、建設に従事する労働力不足の影響などによるボトルネックの状況を示すとされ、住宅市況の改善を停滞させていると受け止められることも考えられる。
 ・消費への波及効果も大きい住宅市況の改善が滞るとの見方が、景気改善の遅れを懸念した米金利低下とドル売りにつながることも想定しておきたい。

  解説 (ロイターより抜粋
  ・一戸建て住宅の着工件数は前月比▲13.4%減の108.7万戸で、昨年12月に記録した14年ぶりの高水準から一段と減少した。
  ・建材費の高騰により建設業者が手控えている可能性がある。

●9.クラリダFRB副議長は、緩和縮小時期は尚早との見解を繰り返す(フィスコ

 1)クラリダFRB副議長は、2021年米国GDPは6%成長、おそらく7%と強い成長を予想していることを明らかにした。

 2)同時に、労働市場にはまだ「深い穴」があるとし、4月雇用統計には失望を表明。

 3)インフレの上方圧力は一時的との見方を繰り返したものの、もしインフレが高過ぎる水準まで上昇したら行動するとした。

●10.イエレン米財務長官、米インフラ投資と増税案は企業の収益性や競争力を高める(ロイターより抜粋

 1)インフラ投資計画は、雇用を創出して、国民に直接的な利益をもたらす。

 2)法人税は「過去の標準に戻る」にすぎない。

 3)インフラ投資は、企業の純利益を高め、国際競争力を向上させる。

●11.JPモルガンは、ワクチン接種完了者は勤務時のマスク着用を不要に (ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/17、上海総合指数+27高、3,517
  ・中国の経済指標が総じて下振れするなか、国内の金利上昇懸念も後退し、金融緩和策継続の期待が強まった。
  ・4月中国経済統計では、小売売上高や鉱工業生産などの伸びが、予想以上に低下している。経済回復ペースの鈍化により、インフレ高進の警戒感はやや薄らいだ。

  ・業種別では、消費関連、ITハイテク関連が強い。

 2)5/18、上海総合指数+11高、3,529
  ・新型コロナワクチン接種回数が5/16時点で4億693万回に達した。
  ・ただ、経済回復に伴い、金利が上昇するとの警戒感がも依然としてくすぶっており、株式市場の上値は重い
  ・業種別では、石油・石炭株上げを主導し、非鉄株も高い。半面、消費関連株日一角が冴えない。

 3)5/19、上海総合指数▲18安、3,510
  ・2カ月半ぶりの高値水準を切り上げていたため、利益確定の売りに押された。
  ・業種別では、石炭・石油などの資源関連の下げが目立ち、自動車や電力はしっかり。

●2.中国・4月主要経済統計、新型コロナの影響からの回復傾向続くが鈍化傾向(NHK)

 1)工業生産    前年同月比+9%増、電気自動車や産業用ロボットなどの生産増。

 2)固定資産投資  1~4月で前年同期比+19.9%増、不動産開発やハイテク産業での投資。

 3)小売業売上高  前年同月比+17.7%増、スポーツ用品や宝飾品が好調。
          ただし、前月の3月比+0.3%と小幅増加で、消費の底上げが課題。

 4)コストアップ  原材料価格の上昇による企業の生産への圧力が強まっている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/17、日経平均▲259円安、27,824円(ロイター)
  ・前週末の米株高を好感し一時+220円超と上昇したが、国内コロナ感染拡大やワクチン接種遅れが重石となり、売り優勢の展開となった。
  ・グロース株の軟調に対し、バリュー株に堅調が目立ち、相場全体を下支えした。

 2)5/18、日経平均+582円高、28,406円
  ・NYダウが▲54ドル安と小幅安にとどまり、投資家心理が持ち直した。外資・国内の投資家による押し目買い・買戻しで、大幅高となった。
  ・5/10からの下げ幅には、台湾株の下落が牽引したが、5/18はその台湾株の上昇が追い風となって半導体関連など幅広い銘柄が上昇した。

 3)5/18、日経平均▲362円安、28,044円
  ・米主要株価指数が下落したのを受け、日本株式市場も大幅に反落した。米国で住宅着工工数が材料高のため抑制されていると示唆され、インフレによる悪影響を警戒する動きとなり、景気へ楽観論が後退した。
  ・暗号資産(仮想通貨)のビットコインが急落したことも投資家心理の悪化となり、電機や自動車などの輸出、化学や情報・通信などを中心に幅広い業種で売りが優勢となった。

●2.日本株式市場も『良い所取り』相場であったが、『悪材料に強く反応』する相場展開に変化

 1)▲2,070円安に対して、5/14~18に+959円高と下げ幅の46%を戻した。

 2)この戻し高は、あくまで急落後の押し目買いで、持続的な上昇につながるとはいえない。冷静に見ることも必要。

 3)年初来新安値銘柄が日経平均上昇時でも多数発生 ⇒ 相場は強気に転換していない
       5/7  5/10   5/11  5/12  5/13 5/14  5/17  5/18  5/19            
  日経平均 +26  +160  ▲909 ▲461 ▲699  +636  ▲259 +582 ▲362
  年初高値  8   117    69   35  23   50   57   63   57
  年初安値  6    27   125  317 432  114   170  80  103

 4)恐怖指数(VIX)は、投資家の不安心理を表すという20ポイントを上回っている
        5/7   5/10  5/11  5/12  5/13  5/14  5/17  5/18  5/19
  VIX指数 18.48 18.20  22.70 26.27  28.31 24.09  26.20  23.74 25.73
  日経平均 +26  +160  ▲909 ▲461 ▲699  +636  ▲259  +582 ▲362
   (円)

●3.企業動向

 1)トヨタ  半導体不足で6月に2工場で稼働停止、約2万台の生産に影響。(NHK)
 2)ファーストリテイ 米税関当局はユニクロの綿シャツを輸入差し止め(NHK)
            中国・新疆ウイグル自治区での強制労働で生産された疑い。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2326 デジタルアーツ ITセキュリティで業績堅調。
 ・2162 nms   製造業派遣・請負。業績好調。
 ・6182 ロゼッタ    人工知能活用の自動翻訳。業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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