相場展望3月25日号 米金融緩和策縮小時期はFRB想定より前倒しか? 2021年米政府支援効果額はGDPの最大3割にも

2021年3月25日 07:51

小

中

大

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/22、NYダウ+103ドル高
  ・FRBの銀行に対する資本規制緩和措置終了でNYダウは下落して始まったが、10年国債利回りが低下したためハイテク株が買われ、NYダウも上昇した。

【前回は】相場展望3月22日号 米FRBの『金利上昇を招く決定』でダウ下落、日銀『ETFショック』、日経平均2重苦で大幅下落

 2)3/23、NYダウ▲308ドル安、32,423ドル
  ・欧州の新型コロナ異変種の感染再拡大から、世界経済の正常化への遅れが懸念された。
  ・長期金利が低下し、金融など上昇が続いた景気敏感株、旅行・レジャー関連株が大幅に下げた。

 3)3/24、NYダウ▲3ドル安、32,420ドル(日経新聞)
  ・米国ではワクチン普及に加え、追加経済対策による個人消費押し上げ期待が根強い。
  ・前日に売られた景気敏感株に買いが入ってNYダウは+300ドル超まで上昇したが、ハイテク株の売りが強まったのを受け、取引終了直前に下げに転じた。
  ・ナスダック総合は▲265安(▲2.01%安)の12,961。SP500 は▲21安の3,889。

●2.米政府のコロナ大規模経済対策で、2021年GDP拡大に大きく寄与、しかし急成長がリスクに

 1)政府経済支援
  (1)2020年12月   9,000億ドル
  (2)2021年03月 1兆9,000億ドル
     合計    2兆8,000億ドル ⇒ GDPの14%相当する規模

 2)政府から個人への所得移転と消費抑制により貯蓄が1兆6,000億ドル増加(想定)
  (1)2020年の消費抑制額   5,000億ドル
  (2)2021年の所得移転額 1兆1,000億ドル
     合計        1兆6,000億ドル

  この貯蓄増分を消費待機額とみれば、抑えてきた旅行等への通常消費がワクチン接種進展により爆発的に支出に回り、消費が急膨張する可能性がある。なお、現在の1回目以上の接種は2割程度であり、バイデン大統領指示の5/1までに接種完了となれば集団免疫獲得が現実味を帯びる。

 3)加えて3兆ドル規模のインフラ投資等が検討されている。3兆ドルを加えると2021年合計実質支援額は5兆8,000億ドルとなり、GDPの29%に相当する巨額な規模となる。

 4)なお、貯蓄増分のうち相当額は株式投資に回ったという。ワクチン接種拡大による消費増は、株式市場にとって資金流出につながる懸念がある。

 5)消費の膨張は物価が上がる要因でもあり、インフレ率増⇒金利上昇⇒FRB金融政策変更(段階的な、利上げ+量的金融縮小)を予想せざるを得なくなる。FRBの政策決定が後追いとなると、悪循環を生む可能性を懸念する。

●3.米国債大幅下落(金利上昇)で、早まる米利上げ時期(ブルームバーグより抜粋

 1)先週の米国債市場の混乱で大きなショックを受けた債券トレーダーは、今後さらに損失が膨らむことを覚悟した。こうした状況を受け、米金融当局者に利回り上昇への対応を求める圧力が高まっている。

 2)2013年に利回り急上昇を招いた「テーパータントラム(市場の癇癪)」以降で最大となった。資産全体に警戒信号が点滅している。

 3)市場が織り込む米利上げ時期は、米金融当局が想定するよりも少なくとも1年早い2022年後半になる可能性がある。

●4.米長期金利は低下しているが、米株価上昇には至らず

 1)10年債利回りは、3/22に1.68%、3/24に1.608%と、1.7%割れを維持した。
 
 2)長期金利低下にもかかわらず株価反発につながらないのは、株式を売った資金が債券に還流していることを示唆している可能性がある。

●5.パウエルFRB議長、イエレン財務長官の下院議会証言等に注目(モーニングスターより抜粋

 1)市場との対話を意識したコメントが出れば、米長期金利の上昇を抑制し、株式市場に買い安心感が広がる可能性がある。

 2)ところが、イエレン財務長官は「インフラ投資するために増税が必要」と発言。 ⇒ 3/23、米株価下落。

 3)3/17のFOMC(米連邦公開市場委員会)で2023年末までゼロ金利政策を維持する方針が示された。

 今後、FRB高官の発言機会があり、見解の違いが鮮明となれば、早期利上げ観測が再燃につながりかねないので、注視したい。

●6.米バイデン政権は成長戦略に3兆ドル(約327兆円)を検討(時事通信より抜粋

 1)成長戦略の内容
  (1)インフラ整備:道路、電気自動車(EV)の充電設備、送電網
  (2)環境対策
  (3)先端通信技術開発
  (4)省エネ住宅

 2)下記項目は分離して提案するか検討
  (1)教育支援
  (2)経済格差是正

●7.FRBは今年後半にテーパリング(段階的縮小)発表し、2022年初に開始の見通し(フィッチ)

●8.米製造業PMIの3月は59.0に上昇したが、新型コロナによるコスト圧力が続きインフレ懸念(ロイター)

 1)HISマークイットが公表した3月米製造業購買担当者景気指数(PMI)は2月58.6から59.0に上昇(予想59.3)した。

 2)製造業は米経済の11.9%を占める。

●9.バイデン政権はFTC委員にIT大手規制論者のカーン氏を指名(ITmediaより抜粋

 1)バイデン大統領は3/22に、米連邦取引委員会(FTC)の委員にリナ・カーン氏を指名。

 2)カーン氏は下院司法委員会の独禁法小委員会の補佐官を務め、IT大手の分割を主張した。

●10.米中古住宅販売の2月は前月比▲6.6%減と予想以上に減少、前年同月比+9.1%(フィスコ)

 1)寒波の中、住宅ローン金利が上がっていることや、供給逼迫に伴う価格上昇で、勢いが弱まる可能性がある。(ロイター)

●11.米2020年経常赤字、12年ぶりの高水準(共同通信)

 1)米商務省3/23発表、2020年経常赤字は前年比34.8%増の6,472億ドル(約70.2兆円)

●12.企業動向

 1)インテル  半導体増産へ2兆円投資でアリゾナ州に新工場建設(NHK)
 2)マイクロソフト  アプリ運営「ディスコード」買収巡り協議、100億ドル超(ロイター)

●13.欧州関連

 1)ドイツはロックダウンを4/8まで延長。新型コロナウイルス変異種感染拡大などでフランスやイタリアなどもロックダウンを再開している。(フィスコ)

 2)スエズ運河でコンテナ船が座礁、運河が通行不能(日経新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/22、上海総合指数+38高、3,443
  ・中国人民銀行が金利安定化スタンスを強調したため、金利高の警戒感が薄れ、銀行株が相場を牽引した。(亜州リサーチ)

 2)3/23、上海総合指数▲31安、3,411
  ・欧米各国との対立が懸念、上値が重く素材関連の下落が目立った。(亜州リサーチ)

 3)3/24、上海総合指数▲44安、3,367
  ・中国は経済活動の正常化が進むが、欧米における新型コロナ感染再拡大で景気回復の遅れが警戒され、欧米の景気動向に敏感な素材関連の下落が目立つ。(亜州リサーチ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)3/22、日経平均▲617円安、29,174円
  ・下落要因
   (1)米国株の下落
   (2)米金融規制緩和の終了
   (3)日銀のETF購入方法の変更による不透明感
   (4)ルネサスエレクトロニクスの工場火災による半導体不足を警戒して自動車・部品会社の株価下落 半導体供給不安
   (5)米長期金利の上昇に対して、金利の落ち着きがみえない
   (6) 東京五輪・パラリンピックで海外からの一般観光客受け入れ断念

 2)3/23、日経平均▲178円安、28,995円
  ・米株高を背景に、一時+300円超上昇したが、米国先物やアジア株軟調が重石となり、2月以降の上昇相場を牽引してきた銀行、鉄鋼、海運などの景気敏感株の売りが広がった。
  ・バイデン政権が新たに3兆ドル(約327兆円)規模のインフラ投資を検討と伝えられ、国債発行増加による米長期金利の上昇への警戒感も出た。

 3)3/24、日経平均▲590円安、28,405円
  ・米長期金利は低下したものの、 欧州のコロナ感染拡大で景気回復期待が後退し、景気敏感株と値嵩株を中心に下落した。
  ・日経平均の寄与度が高い値嵩株は、日銀のETF購入方針変更で買いが期待できず、日経平均マイナス寄与度上位に入った。

●2.日経平均は、日銀ETFショックの影響大きく、内外短期筋の値嵩株の売り圧力見極めが必要

 1)3/19から4日間の下落額▲1,811円・下落率▲6.0%
 2)米NYダウは3/18から5日間の下落率は▲1.8%、日銀ETFショックの大きさを物語る。

●3.外資系先物合計は、売り越し継続

 1)相場の先行きに敏感とされるCスイスの先物動向
  ・買い越し残高を少なくしていたため、買いポジションに変更はなく3/23までは様子見。
  ・しかし、3/24は▲2,546枚の売り越しで、外国人先物売り越し枚数の56%を占めた。今後の売り牽引役となるか? 要注目。

●4.3月後半~4月相場予想は、原則は強気基調だが、懸念材料あり

 1)強気の要因
  (1)高配当権利狙いの買いニーズ(薬品株など)
  (2)機関投資家の配当再配分投資に伴う買い
  (3)期末株価を意識したお化粧買い(但し、4月初旬に売られる)
  (4)4月は毎年、海外投資家が日本株を買い越すことが多い特異月

 2)懸念材料
  (1)高株価による含み益拡大のためポジション調整売り
  (2)米株価次第
  (3)日経平均を急騰させた景気敏感株の利益確定売り⇒ハイテク株の選別買いへの転換
  (4)3月末の評価損を抱えたくない投資家の買いが期待できず、売り優先となる場合がある

●5.日銀総裁発言、「ETF購入をTOPIX型限定にしたのは、個別銘柄への影響排除」(ロイター)

●6.日銀、3/24日経平均急落を受けETFを701億円に増やし購入も、下げ止まらず(ロイター)

●7.企業業績

 1)AOKI  2021年3月期決算純損失▲123億円と拡大、紳士服が落ち込む(日経新聞)

●8.企業動向

 1)千趣会  婚礼事業を100億円で売却、需要低迷で主力を通販に特化(共同通信)
 2)トヨタ・いすゞ 資本提携し、日野自動車と3社で電動化・水素電池車を加速(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・8252 丸井    体験価値を提供する「売らない店」への転換。
 ・6323 ローツェ  業績好調も株価下落。
 ・3038 神戸物産  業績堅調ながら株価調整中。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

記事の先頭に戻る

関連キーワードトヨタ自動車日経平均NYダウTOPIXドイツアメリカ中国イタリアフランスルネサスエレクトロニクス日本銀行(日銀)連邦取引委員会(FTC)個人消費半導体日野自動車FOMC千趣会新型コロナウイルス

関連記事

広告

財経アクセスランキング