相場展望2月22日号 (1)日銀ETF購入方針の変更 (2)長期金利の急上昇 がもたらす株価乱高下のリスクが浮上?

2021年2月22日 08:56

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/18、NYダウ▲119ドル安、31,493ドル
  ・米10年国債利回りの上昇で割高感が出た大手ハイテク株が売られ、新規失業保険申請件数が予想に反して増加し、雇用回復の不安定さが浮き彫りになって下落。
  ・NYダウ・ナスダック総合・SP500の3指数ともに下落。(ロイター)

【前回は】相場展望2月18日号 日経平均は外国人の買い攻勢で、「押せ・押せ」 の勢いだったが、目先の変化に注目

 2)2/19、NYダウ+1高、31,494ドル
  ・米製薬会社ファイザーは2回の接種で95%の有効性があるとしていたが、1回接種でも85%の感染防止効果があるとの研究結果を公表した。加えて、ワクチンの保管温度をマイナス75度としてきたが、マイナス20度程度
でも良いとされ、ワクチン接種が幅広く実施できるようになる。この公表が、ワクチン普及を加速させ、景気回復をさせるとの観測を誘った。

  ・景気敏感株が買われ、長期金利上昇で銀行株も買われ一時150ドル超となったが、やはり長期金利の上昇が市場心理の重荷となり、利益確定売りも出て終値は前日比で+1ドル高と伸び悩んだ。

  ・今後、長期金利上昇は高PER(株価収益率)銘柄を中心に割高感を招いて売られる恐れがある。(日経新聞)

●2.米国の大規模追加経済対策に対する市場別の最近の反応

 1)米国株式市場:景気回復への期待を示し、株高へ。
 2)米債券市場 :金利大幅上昇し、債券価格下落。
  と、対応の違いが出ているのが現状の姿である。

●3.米長期金利のさらなる急上昇が、株価の割高感を招き、売られる展開もあり得る状況に近づく

 1)米長期金利の指標である10年国債利回りが2/19に一時1.36%と1年ぶりの高水準。

 2)米国株は長期金利が上昇すると高PER(株価収益率)の銘柄、特にハイテク株を中心に割高感が意識され、売り込まれる恐れがある。

●4.ビットコイン、5百万ドル・時価総額1兆ドルを突破、過熱警戒でも最高値更新(ロイターより抜粋

 1)アナリストらの警戒にもかかわらず、急伸を続けている。

 2)2009年に誕生し、世界の人気仮想通貨へと成長し、大手企業による出資や参入が相次いだことで勢いを得て、最高値の更新を繰り返していた。(AFP=時事通信)

 3)テスラのビットコイン15億ドルの爆買いは「金融バブル」の象徴(日経ビジネス)で、バブル進行の端的な証拠。

●5.米・先週分の新規失業保険申請件数は前週比+1.3万件増の86.1万件と悪化(フィスコ)

 1)2週連続の増加で、新型コロナ感染者数は落ち着きつつある兆しがあるものの、労働市場は新たな打撃を受けていることが示唆された。(ブルームバーグ)

●6.米・1月輸入物価指数は前月比+1.4%と予想+1.0%を上回った(フィスコ)

 1)押し上げ要因は、エネルギー製品の価格上昇とドル安。

●7.米・1月住宅建設着工件数は前月比▲6%減の158万戸と予想168万戸を下回った(フィスコ)

●8.JPモルガンは、「米国債金利上昇で、米国債売りには警戒すべき。新興国資産の好調を頓挫させるリスクにもなり得る」とリポートで指摘  (ブルームバーグ)

●9.企業業績

 1)ウォルマート 11~1月期純損失▲20.08億ドル(約▲2,200億円)と予想を下回った。感染対策費用11億ドルと日本・英国の事業売却費用で。(日経新聞)

 2)マリオット  通期純損失▲2.67億ドル(約▲280億円)と10年ぶり赤字。(ロイター)

●10.世界の債務残高は約3京円で、リーマン直後を上回る(毎日新聞)

 1)世界主要金融機関でつくる国際金融協会(IIF)は2/17、発表。
  ・世界債務残高  2020年末 281.5兆ドル(2京9,800億円)
  ・2019年末比で+9.4%増。
  ・世界国内総生産(GDP) 2019年末 320% ⇒ 2020年末 355% に急上昇。

 2)景気停滞が続くとさらなる債務膨張につながるリスクがあると警鐘を鳴らした。

●11.欧州関連

 1)実質利回り上昇が、株式市場に打撃を与える恐れがあると、ECB会合で理事が警告
  ・欧州中央銀行(ECB)の1月政策委員会で、「持続的な実質金利上昇は、株式の相対的な魅力を急速に低下させるリスクがある」と指摘した。(ブルームバーグ)

 2)仏ルノー   昨年の決算、過去最悪の約▲1兆円の最終赤字(NHK)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/18、上海総合指数+20高、3,675
  ・春節(旧正月)明けの株式市場は連休中の海外株高、原油や非鉄などの商品高が材料視され上昇した。
  ・ただ、中国人民銀行(中央銀行)が市中から資金を吸収し、短期金利が急上昇したことで、上値が重かった。(亜州リサーチ)

 2)2/19、上海総合指数+20高、3,696
  ・短期金利の低下が買い安心感を誘い、景気動向に敏感な素材株の上げが目立った。(亜州リサーチ)

●2.中国・東北部で、出生率低下に歯止めかからず、産児制限の全廃を検討(ブルームバーグ)

 1)中国・国家衛生健康委員会は2/18、東北部で原則2人までとしてきた産児制限全廃を実行可能だと提言した。東北部は、遼寧・吉林・黒竜江の3省。中国では、一部地域で新政策を試し、うまく行けば全国に展開する手法を採用している。

 2)中国では1979年から続いた「1人っ子政策」で人口の伸びを抑制してきたが、2015年末に2名までの出産を認めた。

 3)しかし、2020年は新生児数が前年比▲14.8%減少の1,004万人となっており、少子化に歯止めがかかるかどうかは不透明。少子化の背景には、不動産や教育費の高騰、子育て環境の遅れなど構造的な要因がある。中国の人口は2029年の14.4億人をピークにして減るとの予測がある。(読売新聞)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/18、日経平均▲56円安、30,236円
  ・NY高を受け、+230円超の高値で始まったが、

 2)2/19、日経平均▲218円安、30,017円
  ・急上昇していたため、短期的な過熱感から、利益確定売りが出て一時▲400円に迫った。
  ・しかし、先高観もあり、下値で買いも入り、引けにかけて下げ渋った。

●2.海外投資家の週間売買推移

 1)海外投資家の現物+先物合計
  2月1週 +8,563億円
   2月2週 +4,721

 2)2月2週の海外投資家は2週連続の買い越し、個人は▲3,772億円の2週連続の売り越し、信託銀行は▲17億円の売り越しだった。

●3.日銀ETF買いスタンス変更と長期金利上昇が外資系短期筋の買い攻勢に変化をもたらすか?

 1)日銀は今までTOPIXの前場終了時間の下落率を見てETF買いを実施してきた。これまで前場でTOPIXが▲0.5%以上を下落すれば、相場下支えのため上場投資信託(ETF)を購入してきた。(日経新聞)

 2)ところが、2/17は▲0.41%、2/18は▲5.4%、2/19は▲0.77%にもかかわらず、日銀のETF購入は見送りとなった。▲0.5%以上下落してもETF購入しなかったのは2016年3月以来の5年ぶりとなった。なお、日銀は 2/1以降は大口のETF購入は実行していない。

 3)ETF購入金額の縮小と買付頻度の減少傾向の現状
  年       2020年              2021年
  月       1月 2月 3月  4月 ・・12月  1月 2月19日まで
  買付回数     6   8  10  10     3    4  0 (単位:回数)
  1回当たり金額 702  703 1,002 1,202   701  501  0 (単位:億円)
 但し、(1)設備投資・人材投資を積極的に取り組んでいる企業を支援するETF、(2)不動産投資J‐REIT、は除く。

 4)そのため、市場では日銀のETF買いの見直しに向けて検討するとの見方が浮上している。方針は、現状の日常的なETF買付 ⇒ 株価急落時のETF買付に変更される可能性。

 5)外資系短期筋の買い仕掛けは、日銀による買い支えを前提にしていた。このことから、外資系短期筋の買い手口が変化して株価が乱高下する可能性が出てきた。外資系短期筋が安心して買い仕掛け攻勢が出来たのは、日銀が買い支えてくれるという側面が強かったからだと見ている。それだけに日銀の買い支えがなくなった場合、外資系短期筋は戦略の見直しを迫られるのではないか。

 6)日銀によるETF購入は、金融バブルを牽引し・支える「力業」の1つと思われる。日銀は株式市場に対して独立性を果たしてきたとは思えない。むしろ、高株価を誘導し・支える機能としての存在感が強い。日銀によるETF購入が、日本経済が取り立てて良くなっているとは思えない。かつて日銀は「ETF購入は臨時の措置」と言っていたが、今では日銀が市場の催促に応えて購入しているように見える。(日経ビジネス)買い方に味方し、中立性を放棄して株価買い支えをしてきた日銀のETF購入の行動は、危険な兆候を膨らましてきたと言える。

 7)日銀のETF購入の目的に、『インフレ率2%』を掲げてきたと理解しているが、実際は株式市場からETFを通じて浮動株を吸い上げてきたため、『株価が上昇しやすくなるマーケット構成を育んできたし、それを牽引してきた』と言われても仕方がない。『インフレ率』は日銀目標から遠い存在であり、日銀はインフレ目標という言葉さえ言わなくなって久しい。

 8)ただ、日銀のETF購入方針を『株価急落時のETF買い』に変更した場合、株式市場は高い水準にあるだけに下方圧力が増すことへの懸念が強まる。特に外資系短期筋の売買の仕掛けに影響を与えると予想する。

 9)長期金利(10年物国債利回り)は、米国の金利上昇を受けて2/19には節目の0.1%にまで急ピッチで上昇した。これは債券価格が下落することであり、債券で損失が膨らんだ場合、損失補填のために抱き合わせで、含み益を持った株式が売られる展開となりやすい。

 10)これにより、日本株式市場は2つの懸念材料を新たに抱えたことになる。
  (1)長期金利の急上昇による株価の不安定化の恐れ
  (2)日銀ETF購入方針変更による株価乱高下の懸念

●4.日経平均の2月1週の動向

 1)日本株は、個別株で見ると高値を1月半ばや2月1週に付けて、その後、調整している銘柄が目立つ。

 2)日経平均は、日経平均株価上昇に寄与する僅かな値嵩株の高値更新が牽引役を務めている
   例:ファーストリテイリング、ソフトバンクG、東京エレクトロンなど。

 3)日経平均が下落したが、日銀ETF買い見送り。

●5.長期金利は上昇が急ピッチ

 1)米10年国債利回りは2/19に1.340%に上昇
 2)日本10年国債利回りも、2/19に節目の0.100%に上昇

●6.景気判断について、個人消費がさらに冷え込み、10カ月ぶりに下方修正 (毎日新聞)

 1)政府が2/19に公表した2月の月例経済報告で、国内景気の基調判断を引き下げた。1月の緊急事態宣言が延長され、個人消費が一段と冷え込んでいることを踏まえた。

 2)2月は、不要不急の外出自粛や、出勤者の7割削減を政府が呼びかけるなか、飲食などのサービス消費が落ち込んだ。

●7.長期金利は、米国長期金利高が日本に波及し、2年3カ月ぶりの高水準(日経新聞)

 1)国内債券市場で長期金利が上昇(債券価格は下落)し、2/19に節目となる0.1%を超えた。2018年11月以来の高水準となった。

 2)日銀は足下の長期金利上昇を静観しているが、どこまで金利上昇を認めるのか、市場は注視している。

●8.企業業績

 1)昭和電工 2021年12月期見通しの純損失▲140億円、事業改革の特損200億円計上(日経新聞)

●9.企業動向

 1)キオクシア  書き込み性能が2.4倍の第6世代NANDフラッシュメモリー発表。第5世代(112層)⇒162層で、ビット数は70%増・コスト削減される。また、高速化への対応が可能となった。(マイナビニュース)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6289 技研製作所 海外展開で業績好調。
 ・5471 大特鋼   業績好調。
 ・6902 デンソー  業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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