相場展望10月9日号 米国株: 政府一部閉鎖で米国景気に不透明感、金が4,000ドル突破 日本株: 高市トレードで「円安」進行、152円台乗せ、円高転換に備えを

2025年10月9日 14:35

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/6、NYダウ▲63ドル安、46,694ドル
 2)10/7、NYダウ▲91ドル安、46,602ドル
 3)10/8、NYダウ▲1ドル安、46,601ドル

【前回は】相場展望10月6日号 米国株: 「貯蓄の取り崩し」で消費支出増・小売売上高増に懸念 日本株: 非世襲議員・女性の自民党総裁・首相の誕生は画期的 驚きで日経平均は円安もあり、大幅急伸

●2.米国株:米国政府一部閉鎖で米国景気に不透明感、金が4,000ドル突破

 1)金価格、10/7に4,000ドル台に乗せ最高値更新、年初比で+52.38%高
  ・金価格の推移
          1/2   ⇒ 10/8   年初比
    金価格  2,671ドル 4,070  +1,299ドル高・+52.38%高

  ・金の高騰は理由
   (1)インフレからの回避
   (2)トランプ政策によるドル安への対応
   (3)トランプ不信から各国中央銀行は準備金をドル保有⇒金の保有を増大

 2)AIバブル警戒感が高まり、過熱感が重荷となり10/7に下落
  ・10/7、ハイテク株に利益確定の売りが出た。
  ・しかし10/8、人工知能(AI)の需要が強いとして、警戒感が後退し、買い優勢となった。

 3)米国政府閉鎖で不透明感
  ・トランプ大統領は、政府機関の一部閉鎖は政敵の民主党に責任があるとして口撃した。「つなぎ予算」に民主党が賛成しないのは、トランプ氏が「低所得者向け保険の停止」を決めたのに対し、復活・継続を要求しているためである。民主党は低所得者の救済を求め、トランプ氏は富裕層優遇で貧富の格差拡大をはかる政策であり、埋めがたい差がある。
  ・加えて、トランプ政権は、一時帰休の政府職員に対する給与支払いを保証しないと述べ、民主党に圧力を強めている。

 4)米国景気を巡り懸念
  ・政府閉鎖により、米国消費支出が減り、米国景気が後退する恐れがあるとして、不透明感が増している。米国株式相場の重荷となっている。

 5)米国株は、人工知能(AI)関連の需要が強く、過熱気味であるが強さが続く
  ・人工知能(AI)関連の成長・拡大が継続している。そのため、AIバブルが懸念されるぐらい株価は盛況だが、まだまだ新しい材料が出てきて株式相場を牽引していく可能性がある。

  ・だが、トランプ政策は長期的に、
    (1)米国の威信低下
    (2)ドル安
    (3)東南アジア諸国、BRICSなどの経済成長で、米国は相対的に世界的地位は低下
    (4)米国の強みである頭脳の米国外への脱出が、米国の成長を阻害していくとみられる。
 ・いずれ、トランプ氏が築いた負の政策が、米国株式市場に襲いかかる可能性がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/6~8、祝日「国慶節・中秋節」で休場

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/6、日経平均+2,175円高、47,944円
 2)10/7、日経平均+6円高、47,950円
 3)10/8、日経平均▲215円安、47,734円

●2.日本株:高市トレードで「円安」が進行、10/8に152円台に乗せる、円高転換に備えを

 1)10/6~8の日経平均は、先物と少数の銘柄が主導
  (1)10/6日経平均+2,175円高のうち上位5銘柄で+1,199円と55%を占める
   ・日経平均寄与度上位5銘柄
     アドバンテスト   +593円高
     東京エレクトロン  +210
     ファーストリテイリ +182
     ソフトバンクG    +166
     ソニー       +48
       合計      +1,199円高
   ・上げ幅は今年2番目、過去で4番目。

  (2)10/7日経平均+6円高、値がさ銘柄で買い支えたが、売り優勢で買い負けた
   ・日経平均の寄与上位5銘柄
     ソフトバンクG     +46円高
     アドバンテスト    +31
     フジクラ       +27
     KDDI         +14
     日東電工       +13
      合計        +131円高

  (3)10/8、日経平均▲215円安、寄与上位5銘柄で▲238円安と5銘柄で説明できる
   ・日経平均の寄与上位5銘柄
     ソフトバンクG     ▲85円安
     東京エレクトロン   ▲84
     ファーストリテイ   ▲32
     信越化学       ▲19
     KDDI         ▲18
      合計        ▲238円安

 2)10/7の日経平均は、自民党の連立への懸念が増し、+580円高⇒+6円高へ
  ・日経平均は朝方に前日比+580円ほど高い48,500円台まで上昇した後は、時間が経過するにしたがって下落し、小幅マイナスになった。取引終了直前に+6円高と、かろうじて最高値を更新した。

  ・要因は、
    ・公明党
    ・国民民主党
   が連立の条件として「信頼関係」の醸成を求めてきたことによる。
   公明党は、自民党の①政治とカネ(1)靖国参拝の歴史認識(3)外国人排斥(4)維新との連立(5)高市自民党の人事、について強い懸念を持った。
   国民民主党は、昨年12/11の3党合意((1)ガソリンの暫定税率廃止(1)年収の壁178万円への引上げ)を、石破自民党が破棄したことで不信感を持った。
   そのため、高市政権の連立工作に疑念が生じたことで、日経平均は本日の朝高の+580円の上昇分を、後場から下げ始め終値時点で帳消となった。

  ・高市トレードは10/6の1日だけで継続しなかった。高市トレードの勢いは、息切れ。海外短期投機筋の強引な株価先物を使った日経平均の上昇も、後続が続かず足踏み状態になっている。

 3)公明党が連立離脱をチラつかせたのは、公明党存立のための立て直しのため
  (1)「政治とカネ」の問題は、岸田政権時に浮上した問題である。
   ・しかし、岸田首相は疑惑の幕引きを急ぎ、本質的な事実解明せずに、自民党内処分をして問題を終了しようとした。
   ・後を継いだ、石破首相も事実解明から逃げの姿勢一辺倒であった。
   ・岸田・石破の両氏に共通するのは、「政治とカネ」の事実の窓を開けようとしなかったことにある。
   ・その時、公明党は強く自民党に「解明と対策」を求めなかった。むしろ、見過ごし、岸田・石破政権に同意したような対応にみえた。
   ・石破政権での衆院選挙において、公明党は裏カネ問題を引き起こした自民党が公認しないのに複数の候補者を「推薦」さえした。結果、国民は公明党に不信感を持ったため、その「推薦人は落選」した。当時の石井・党首も落選した。
   ・政治とカネを、高市・自民党に要求するなら、うやむやにしようとした岸田・石破政権時代になぜ強く要求しなかったのか?裏金議員の「推薦」も、公明党の「独自判断」であった。つまり、推薦は公明党自身が自己反省すべきことではないか?「政治とカネ」問題の解決のため、岸田・石破政権に問題提起をしていない。公明党は自民党との連立を26年間継続してきた。つまり、26年間も「自民党の政治とカネ」を容認してきたとも言える。

  (2)靖国神社参拝問題は、対中国を意識した問題提起である。
   ・公明党は親・中国を党是としているかのようだ。創価学会の池田・元会長の教えを受け継いで、毎年のように中国訪問団を送り続けている。
   ・そして、中国との太いパイプを背景に、自民党を通じて日本の政治・経済に影響を与えてきた。
   ・自民党では二階・元幹事長が、公明党と中国とのパイプ役を担ってきた。二階氏の地盤であった和歌山県白浜のパンダの飼育頭数がずば抜けて多かったのも中国の二階氏への期待の大きさを示している。その二階氏の政界引退後に、白浜のパンダは全頭が中国に帰ってしまった。
   ・公明党は、中国の考えを代弁してきた歴史がある。公明党が「尖閣諸島」に対する中国艦艇の領海侵入やブイの設置について、中国に抗議を発したことがあっただろうか?
   ・その中国が「日本の首相の靖国神社参拝への嫌悪」感を持っている。高市・自民党総裁の靖国神社参拝について、「連立」の条件に入れるのは無理筋ではないか?

   ・国民はそのような公明党をみている。
    結果が、国政選挙での投票数の大幅低下や大阪での全敗で議席ゼロに現われている。立て直しが急務となった。中国からの冷たい仕打ちが目立ち始め、信頼も低下してきた。それも、自民党との「連立」の見直しに迫られて強硬姿勢になったと映る。
   ・公明党自体も、選挙で主力の婦人部の高齢化が目立ち、選挙時の集票能力の低下が著しくなってきた。公明党存続の窮地に陥っている。しかし、公明党の反騰体制の構築について、代表は何も語っていない。「連立離脱」は「窮鼠、猫を噛む」的な意味合いのように感じる。したがって、公明党の「自民党離れ」も覚悟しておくべきと思われる。

  (3)公明党の連立離脱で、立憲・国民などの野党結束で「玉木・首相」案が実現する可能性さえ出てきた。

 4)高市トレードで「円安」が進行、10/8に152円台に乗せる、円高転換に備えを
  ・米国長期金利と日本長期金利の差異は並行しており、両国の長期金利で円相場は動いていない。

  ・日本・米国長期金利の差異と推移
                10/1    10/8
     米国10年債金利   4.098%  4.117
     日本10年債金利   1.652   1.696
       金利差異    2.446   2.421
    ・日本・米国の長期金利の差異は小さいが円高を指向しており、円安ではではない。
    ・長期金利はわずかながら上昇傾向にあり、株式相場にとっては高値意識の方向にある。

  ・円相場の推移
      円(米国時間)   147.07円 152.39
     ・円安の急伸は、日本国内事情を見定めた、海外短期筋の円売りの可能性がある。したがって、円安が長期固定化化するとは思えない。どこかの時点で、円が買われ円高に転換するとみる。

  ・円安・ドル高となった要因
   ・自民党の連立交渉の進展がみられない。
   ・高市氏の財政拡張の主張をベースにした、財政悪化の見通し。
   ・日銀の10月会合での金利引上げの延期観測。

 5)チャート分析でも過熱感
  ・移動平均線の乖離率の推移
            10/1   10/6   10/7
    25日移動平均  1.31%  7.95   6.45
    200日移動平均 13.71  22.04   21.25
  ・移動平均線は急騰しており、過熱感を示唆している。

 6)物価対策は待ったなし
  ・8月名目賃金は前年比+1.5%増と44カ月連続の上昇も、「物価高」が続き実質賃金はマイナス1.4%と8カ月連続のマイナスとなった。
  ・高市政権が一番に手掛けるべきは、「物価対策」である。実質賃金の早急なプラス化が求められる。ガソリンの暫定税率・軽油の暫定税率の撤廃、103万円の壁⇒178万円引上げなどは即効性がある。国民に対し、岸田・石破⇒高市政権への交代の意義を訴えられる。高市政権の正統性を証明できると思われる。


●2.ソフトバンクG、スイス重電大手ABBから産業用ロボット事業を8,200億円で買収(時事通信)

 1)人工知能(AI)を搭載したAIロボットの進化が狙い。   
 2)2026年半ばから後半に買収完了を計画。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6869 シスメックス    業績堅調
 ・7309 シマノ       業績回復期待
 ・8729 ソニー       業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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