相場展望11月27日号 米国株: 米消費動向を占う年末商戦が11/24から始まる、長期金利の動向にも注目 日本株: 日本株は「朝高の後場安」の展開続く、米年末商戦次第か?

2023年11月27日 10:54

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/23、祝日「感謝祭」のため休場

【前回は】相場展望11月23日号 米国株: 米金利は高水準が長期化、金利低下は時期尚早と予想 日本株: 円高は短期的、やがて円安基調に復帰し、株価の追い風に

 2)11/24、NYダウ+117ドル高、35,390ドル(日経新聞より抜粋
  ・8月上旬以来の高値となった。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ局面が終了したとの見方が引続き相場を支えた。ただ、感謝祭の祝日の翌日は午後1時までの短縮取引となるため、積極的な売買は手控えられ上げ幅は限られた。
  ・株式市場は物価上昇の一服を背景に、FRBが利上げ局面を終えたとの受け止めが広がっている。米経済の底堅さも株式市場の追い風となった。11/24は米国での年末商戦が本格的に始まる「ブッラクマンデー」にあたる。消費関連株の一部に買いが入り、投資家心理を支える面があった。市場では「市場参加者が少ないなかでも相場が持ちこたえているのは前向きだ」との見方があった。
  ・11/24の米債券市場では長期金利が前営業日の終値4.40%より高い4.4%後半で推移した。相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株には売りが出た。
  ・個別株では、小売のウォルマートやホームセンターのホームデポ、クレジットカードのアメリカンエキスプレスなどが上昇した。石油のシェブロンや建機のキャタピラーも高かった。一方、スポーツ用品のナイキとソフトウェアのマイクロソフトは下落した。

●2.米国株:米消費動向を占う年末商戦が11/24から本格化、長期金利の動向にも注目

 1)米国の消費動向を占う年末商戦が11/24から 本格化し、注目
  ・長引くインフレや高い金利水準が懸念材料となっているが、米景気に大きな影響を与える年末商戦の消費に関心が集まっている。
  ・年末商戦の消費の前年比伸び率見通しを引下げる動きがある。従来見通し4~5%⇒2~3%伸びに引下げ(証券会社TDコーウェン調査)インフレ率を考慮すれば、前年比で実質マイナスとなる。ただ、小売企業でつくる全米小売業協会の見通しは、前年比+5%の伸び。
  ・スーパーマーケットのクローガーは、高インフレの影響を受け、慎重な消費傾向で売上減に警戒している。(フィスコ)
  ・米国のGDP(国内総生産)の7割を占める「消費支出」のなかで、大きな割合となるクリスマス商戦の動向に注目したい。昨年の年末商戦は盛り上がったが、それは貯蓄を取り崩して購買に回したためであり、その減少した貯蓄額をさらに取り崩して消費するのかが焦点になる
と思われる。
  ・上記のように、各種調査予測では強弱感が示されている。結果によっては、米国の景気後退を示す可能性があり、投資家心理に影響を及ぼすため注目したい。

 2)長期金利は上昇に反転か
  ・短期金利の上昇がリードするなか、長期金利も11/24に上昇に転じた。
   長期金利の推移 11/21  11/22  11/24
   10年長期金利  4.393%  4.395   4.472 :前日比+0.77%上昇
  ・そのため、割高感が意識されやすいハイテク株比率の高いナスダック総合指数は11/24に反落した。
  ・最近の米国株は、長期金利の低下を背景に株価上昇してきた。それだけに、長期金利が再上昇局面入りするのか?注視したい。

 3)注目イベント
  ・11/2810月小売売上高
  ・11/2910月消費者物価指数

●3.米11月PMI(フィスコ)

 1)製造業PMIは予想よりも鈍化し、サービス業は予想外に改善
  ・製造業は49.4と、予想49.9・10月50.0を下振れした。
  ・サービス業は50.8と、予想50.3・10月50.7から改善した。

 2)PMI発表を受け、10年利回りは4.47%に上昇した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/23、上海総合+18高、3,061(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が相場を支える流れとなった。
  ・低迷する不動産業界を救済するため、当局は対策を急いでいる。中国当局がデベロッパーの資金調達支援に向け、「ホワイトリスト」の作成を進めているとの報道について、当局が草案の作成を終えたとの情報が新たに伝わった。
  ・中国景気の鈍化懸念がくすぶるなか、朝方は弱含む場面がみられたものの、指数は程なくプラスに転じた。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、自動車も高い。医薬・ハイテク・運輸・素材・インフラ関連なども買われた。半面、証券は冴えず、メディア・娯楽・銀行が売られた。

 2)11/24、上海総合▲20安、3,040(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家の慎重なスタンスが強まる流れとなった。
  ・新規の買い材料が乏しいなか、人民元高(対米ドル)の一服や、中国経済の先行き不安が改めて懸念された。
  ・「影に銀行(シャドーバンキング)」の債務問題が浮上。民営のノンバンク系資産運用会社で、資金繰り難に直面する中植企業集団有限公司は11/22、投資家に対して謝罪文を発表し、一部の商品で実質的な契約不履行が発生したことを明らかにした。
  ・業種別では、ハイテク関連の下げが目立ち、自動車も安い。証券も冴えない。素材・インフラ関連・公益・酒造・軍事関連・メディア・娯楽なども売られた。

●2.格付け会社フッチが、中国商業施設大手の大連万達集団系をCに格下げ(中日新聞)

 1)信用リスクが非常に高い「CC」から、債務不履行に近い「C」に引下げ。

 2)対象は、中国で500カ所近い商業施設を運営する大連万達商業管理集団。

●3.習近平が「戦浪外交」の態度を「羊」に改めた背景、中国経済は「国民が豊かになる前に衰退し始めた」(Newsweekより抜粋

 1)高度成長期以降初めて減少に転じた中国経済の世界シェア

 2)英紙「今はポスト中国の世界」

 3)政治におけるレーニン主義が「中国の経済政策を支配」

 4)習氏は、中国が成長力を取り戻せば「狼」に逆戻りするのは自明の理。

●4.中国の資産運用大手・中植企業集団が最大2,600億元(5兆4,000億円)の債務超過

 1)中植集団は不動産業界への投資が多い。(ブルームバーグ)

 2)中国不動産危機打開の取り組み強化。未完成の住宅建設を完工するのに必要な資金の不足は60兆円との試算。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/23、勤労感謝の祝日で休場

 2)11/24、日経平均+173円高、33,625円(日経新聞より抜粋
  ・祝日前の11/22の米株式相場、11/23の欧州相場の上昇が支援材料となった。上げ幅は+300円を超えて7/3につけた年初来高値33,753円を上回る場面があったが、上値では戻り待ちの売りが出た。
  ・日経平均は午前に一時+366円高の33,817円まで上昇した。欧米を中心に金利上昇のピークアウト感が強まっており、東エレクなどグロース(成長)株に買いが入った。外国為替相場でこのところ続いた円高・ドル安の流れが一服し、輸出採算の改善期待からトヨタなど自動車株の上昇も目立った。
  ・ただ、買い一巡後は伸び悩んだ。日経平均は今月に入って祝日前の11/22までに+2,592円上昇していた。短期的な過熱感から利益確定目的の売りが出て、後場には上げ幅を縮めた。米株市場は11/23が感謝祭で休場だったため、市場では「午後にかけて相場を押し上げるほどの新規材料が乏しかった」との見方があった。香港のハンセン指数などアジアの主要株式相場が下落したのも重荷となった。
  ・個別株では、三菱重・レゾナック・サイバーが高い。一方、シャープ・ダイキン・王子は下げた。

●2.日本株:日経平均は「朝高の後場安」の展開で、米国の年末商戦の結果待ちか?

 1)最近の日経平均株価は、「朝方の大幅上昇も、その後は上げ幅を縮める」動きが続いている
  ・朝高の後場安の状況
   TOPIXの推移 11/22  11/24(前日比)
   前場終値   +0.74% +0.62
   後場終値   +0.54% +0.54
  ・NYダウと比較しても、日経平均は割安とはいえない位置にあるのが影響して

 2)ただ、日経平均は「底堅さ」を示しているが、高値警戒感を意識か
  ・新・安値銘柄数の推移 11/22 11/24
   新高値銘柄数     75   107
   新安値銘柄数     5    5
  ・新高値銘柄数が多く、値がさ株が主導する展開となっている。
  ・しかし、値下がり銘柄数が全体の3分の1と多く、警戒感を意識している可能性がうかがえる。
   値下がり銘柄数の推移 11/22  11/24
   値下がり銘柄数    524   541
   日経平均の上昇幅   +97円高 +173円高

 3)日本株は、米国株の動向を意識した動きとなっているため、米国の年末商戦に注視したい

●3.10月消費者物価指数は+2.9%上昇で、26ヵ月連続プラス=総務省(テレ朝)

●4.バークシャー、ソフトバンクGが出資した印ペイティーエム株を全て売却(ブルームバーグより抜粋

 1)米バークシャー・ハサウェイは11/24、ソフトバンクGが出資するインドのフィンテック企業ペイティーエム株式2.5%を全て売却し、出資を手仕舞った。

 2)売却額は140億ルピー(約250億円)で、1株当たり877.20ルピーだった。2021年の上場前にバークシャーが投資した額は217.7億ルピー(約389億円)。ペイティーエムの株価は、IPO価格を大きく下回る水準で取引されている。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2175 エムエムエス 業績堅調。
 ・2412 ベネフィットワン 業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事