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相場展望3月6日号 米国: 株式は「楽観」・債券は「慎重」と「まちまち」 日本: 次期日銀総裁の金融政策の「転換」に注目
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)3/2、NYダウ+341ドル高、33,003ドル(日経新聞より抜粋)
・3/1夕に発表した決算と業績見通しが市場予想を上回った顧客情報管理のセールスフォースが+12%と大幅高となり、1銘柄でNYダウを+120ドルあまり押し上げた。
・今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅が警戒されたほど大きくならないとの観測も買いを誘い、NYダウは一時+400ドルを超える場面があった。
・決算発表を受けアナリストの目標株価引上げが相次いだことも買いを後押しした。
・ソフトウェア企業の業績懸念が和らいだマイクロソフトも連れ高した。
・タカ派とされるアトランタ連銀ボスティック総裁が3/2、今月3/21~22に米連邦準備制度理事会(FRB)が開くFOMCで「0.25%利上げに断固賛成する」と伝わった。市場では利上げ幅が0.50%に拡大するとの観測が浮上していただけに、株買いの安心感が広がった。
・市場では「経済データ次第で変わる金融政策の予測は難しく、FRB高官の発言に市場は揺れやすい」との声が聞かれた。
・週間の米新規失業保険申請件数は19万件と、前週から減少し市場予想19.5万件も下回った。
・FRBの利上げが長引くとの観測が広がり、長期金利は一時4.09%となり、昨年11月 以来の高水準を付け、株式相場の重荷になった。午後も長期金利は高止まりしたが、株式相場は上げ幅を広げた。債券と株式市場の値動きは、ちぐはぐとなった。
・個別では、独空運大手のルフトハンザ航空からの受注が伝わった航空機のボーイングが高い。業績が景気に左右されにくいディフェンシブ株が堅調で外食のマクドナルドや日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が上げた。検索サイトのアルファベットや画像処理半導体のエヌビディアが高い。3/1夕に開いた投資家向け説明会の内容が失望された電気自動車のテスラは▲6%下げた。
【前回は】相場展望3月2日号 米長期金利4%に到達、まだまだ上昇する金利 黒田日銀の総括
2)3/3、NYダウ+387ドル高、33,390ドル(日経新聞より抜粋)
・前日に一時4.09%と昨年11月以来の高水準を付けた長期金利が3.9%台に低下。相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に買いが広がった。
・前日にアトランタ連銀ボスティック総裁が、3/21~22の米連邦公開市場委員会(FOMC)で「+0.25%の利上げに断固賛成する」と述べた。+0.5%の大幅利上げへの警戒感が後退し、前日に続いて株買いを促した。NYダウは2日間で+729ドル上昇した。
・3/3発表の2月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数が55.1と市場予想54.3を上回った。米景気堅調が確認された一方で「米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ長期化観測を強めるほどの内容ではなく、株式投資家にとって良い案配だった」との声が聞かれた。
・スマホのアップルが+4%高となり相場上昇を牽引した。映画娯楽のディズニーやクレジットカードのアメリカン・エキスプレスなど消費関連株も高い。検索サイトのアルファベットや半導体のエヌビディアが上昇した。仮想現実(VR)ゴーグルの値下げを発表した交流サイトのメタも+6%高で終えた。半面、飲料のコカコーラなどディフェンシブ株の一角は売られた。
●2.米国株:米株式市場は「楽観」・債券市場は「景気後退を直視」で、まちまち
1)パウエルFRB議長の上院・銀行委員会での証言発言に注目
・パウエル議長は前回のFOMC後の記者会見で、ディスインフレ(インフレ沈静化)が始まった兆候に言及し、米国株は上昇した。ところが、最近の労働市場の強さやインフレ率低下の鈍化が想定以上に遅いペースになったのを受け、議長のインフレを巡る判断が特に注目される。
2)米国株式相場は、FRB高官のハト派発言と企業決算発表好調を受け、株価上昇
・FRB高官の相次ぐハト派的な発言が好感し、一部ハイテク株の好決算を背景に、米株式相場は主要3指数ともに上昇している。雇用の逼迫が続いており、強い賃金上昇で「賃金インフレ」警戒が増している。そのため、米金利は上昇している中での、米株価上昇である。
・金利上昇を意識して売られる傾向にあるハイテク株までもが株価上昇している。米株式市場と米債券市場は、見ている方向が違う状態となっている。いずれ、この「まちまち」な動きが収斂すると思われるが、その動向に目を離せられなくなってきた。
3)今週の注目イベント
・3/07 パウエルFRB議長の上院銀行委で証言
1月卸売売上高
・3/08 1月JOLT求人
パウエルFRB議長の下院金融サービス委で証言
・3/10 2月雇用統計
●3.米10年債券利回りは4.04%から4.079%へ上昇。賃金インフレ懸念も浮上(フィスコ)
●4.米10~12月人件費が予想上振れ、新規失業保険申請件数は予想外に減少で賃金インフレ懸念も浮上(フィスコ)
・米10~12月期非農業部門労働生産性は前年比+1.7%増と、速報値+3.0%から予想以上に下方修正された。
・伸びは前回同期の+1.2%から拡大し、2021年10~12月以降で1年ぶり最大。また、月別単位労働コストは、前年比年率+3.2%と、伸びは速報値から+1.1上昇と予想以上に上方修正された。
・結果を受け、賃金インフレ懸念も浮上し、米国債相場は続落。10年債利回りは4.079%まで上昇した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)3/2、上海総合▲1安、3,310(亜州リサーチより抜粋)
・売り圧力が意識される流れとなった。
・上海総合指数は前日までの続伸で、約7ヵ月半ぶりの高値水準を回復していた。米金利の上昇や中国人民銀行(中央銀行)の資金吸収も重石となった。
・もっとも、下値を叩くような売りは見られない。中国景況感の改善や、産業支援策の期待などを支えに、指数はプラス圏で推移する場面もあった。
・業種別では、不動産の下げが目立ち、消費関連も安く、医薬品も冴えない。半面、ゼネコンは高く、通信ネットワークが連日で動意づいている。
2)3/3、上海総合+17高、3,328(亜州リサーチより抜粋)
・中国景気の持ち直し期待が相場を支える流れとなった。
・中国2月の財新中国サービス業購買担当者指数(PMI)は55.0となり、市場予想54.5と前月52.9から改善した。
・これより先に、3/1に公表された官民の製造業PMIも大幅に上ブレしている。
・中国の経済対策に対する期待も根強い。
・国政助言機関の全国政治協商会議は3/4、全国人民代表会議(全人代)は3/5に開幕する。政策の恩恵を受けやすい銘柄群に買いが先行した。
・業種別では、通信・ネットワーク関連の上げが目立ち、ゼネコンも高く、石油関連もしっかり、不動産・公益・運輸・半導体・銀行が買われた。半面、酒造は冴えない。
●2.中国・全人代、2023年経済成長率目標5%前後(NHK)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)3/2、日経平均▲17円安、27,498円(日経新聞より抜粋)
・前日の米市場は長期金利の上昇を背景に、ハイテク株が下げたのを受け、東京市場でもグロース(成長)株を中心に売りが優勢だった。一方、バリュー(割安)株への物色や配当狙いの買いなどが支えとなり、日経平均は前日終値近辺で方向感を欠いた。
・前日の米市場では、利上げ長期化への警戒感から長期金利が上昇した。そのため割高感が意識されたハイテク株が下落。
・東京市場では、サイバー、東エレクなどの売りが目立った。一方、鉄鋼株や非鉄金属・海運などが上昇した。
・「米国では金融引締めは長期的に経済に悪影響が出て、企業業績も悪化が懸念される。一方、国内企業は円安傾向やコロナ渦からの回復を受け、業績と底堅さがある」と見ている。
・NTTデータ・ニコン・シャープ・シチズン・野村・関西電力が売られた。一方、日本製鉄・住友鉱山・郵船・富士通・ファストリ・三越伊勢丹が上げた。
2)3/3、日経平均+428円高、27,927円(NHKより抜粋)
・東京株式市場は、米FRB高官が前回と同じ利上げ幅に賛成すると発言したことを受け米利上げ加速による景気減速への警戒感が和らいだことなどから、日経平均株価は幅広い銘柄に買い注文が出たため+400円以上値上がりし、今年の最高値を更新した。
・ただ、債券市場では米国の長期金利が高止まりし、為替市場でも円安傾向が続いて米国の金融引締めが長期化するという見方が根強くある。
・市場関係者からは、株式市場が楽観的だという声が聞かれるなど、先行きへの見方が分かれているだけに、今後もFRB高官発言や経済指標の結果に左右される神経質な取引が続きそうだ。
・日経平均寄与度は、ファストリ+107円、第一三共+22円、信越化学+19円押し上げた。
・業種別では、精密(HOYA・オリンパス・テルモ)、商社(丸紅・三井物産・住友商事)、鉱業(INPEX・K&Oエネジ)、医薬品(武田・エーザイ)、化学など30業種が上昇し、保険(T&D・MS&AD)、空運、パルプ紙の3業種が値下がりした。大塚は大幅安。
●2.日本株:植田・次期日銀総裁の金融政策に注目
1)海外勢の株式先物3/3に買越し転換
・3/3に、売越し基調だった海外勢が+3,191枚の買越しに転換した。
・ただし、従前から買越し継続していたアムロが3/3に▲5,649枚の大量売越しをしており、動向に注目したい。
2)日銀のYCCにおける金利上限0.50%に一杯か超える日々が続いている点に注意。
・黒田総裁任期で最後の出席となる3月金融政策決定会合では、「金融政策継続」の見通しの予想である。ただ、過去10年間の黒田総裁は、「サプライズを好む意思決定」をするタイプであるだけに、3月決定会合に注目したい。金利上限枠の変更があれば、サプライズとなり得る。
・植田次期総裁候補の国会での所信聴取では、黒田方針を受入れる基調で受け答えしたが、総裁就任後の言質をとられない内容となっていただけに、就任4/9以降の発言に注意したい。
・米金利は上昇し、日米金利格差も拡大し、為替も円安方向に振れている。円安は、日本のインフレに直結するだけに、日銀の金融政策の転換から目を離せない状況が続く。
3)米国市場の動向が、日本株に大きな波及効果がある。
・直近の米国市場では、債券市場は景気後退を読んで慎重、株式市場は楽観的であり、ちぐはぐな展開を見せている。
・株式市場は依然として「過剰流動性」の中にいると思われる。新型コロナ対策でFRBが市場に供給した約5兆ドルのうち、まだ2割程度した回収していないためである。この過剰流動性が存在するうちは、米国株式市場は「適温」状態が続きそうだ。
・日本では、黒田総裁の10年間は「異次元の超金融緩和」であり、米国以上に株式市場にとってとりわけ優しい日銀であった。それだけに、日銀の金融緩和策「転換」となれば、米国以上に株式相場に与える影響は大きいと思われる。
・日米の金利格差拡大には限界があろう。日本では、金利上限枠の変更やYCCの廃止など懸案事項が満載である。植田日銀の動向に注目したい。
■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)
・5713 住友鉱山 中国経済回復で銅市況上昇。
・6196 ストライク 業績堅調。
・9603 HIS 新型コロナから回復期待。
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