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相場展望5月6日 米FRB利上げ「+0.75%」⇒「+0.5%」で楽観となり株は急騰したが⇒本質は『金融引締め』の実施決定である
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)5/2、NYダウ+84ドル高、33,061ドル(株探より抜粋)
・一時▲500ドル超下落したが、終盤にかけてハイテク株を中心に買い戻しの展開となり、終値は+84ドル高と反発した。
2)5/3、NYダウ、+67ドル高、33,128ドル(日経新聞より抜粋)
・前週末に急落した後とあって、短期的に売られ過ぎとみた買いが優勢だった。
・ただ、5/4の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控えて様子見ムードが強く取引時間中は下げに転じる場面もあり、方向感のない展開となり、勢いは弱かった。
・金融などが買われたが、上値は重かった。
3)5/4、NYダウ+932ドル高、34,061ドル(日経新聞より抜粋)
・上昇幅・上方率ともに今年最大、景気敏感やハイテクなど幅広い銘柄が買い直された。
・5/4の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、米連邦制度理事会(FRB)のパウエル議長が+0.75%の大幅利上げに消極的な姿勢を示し、急激な金融引締め観測が後退した。FOMCでは、通常の2倍となる+0.5%の利上げと、保有資産の圧縮を6月開始と決めたが、内容は市場の予想通りだった。
・金利先物市場では+0.75%が織込まれていただけに、急激な利上げ観測が和らいだ。米債券市場で国債利回りが大きく低下したことも株買いを後押しした。
・市場では「FRBのタカ派姿勢を警戒して、先物を売っていた投機筋が買い戻し、相場の急上昇につながった」という声が聞かれた。
・主力株のアップル、キャタピラー、ハネウェル、メタ、AMD、エヌビディアが上昇。
4)5/5、NYダウ▲1,063ドル安、32,997ドル(日経新聞より抜粋)
・下落幅は2020年6月以来、ほぼ2年ぶりの大きさとなった。
・米国のインフレ懸念が高まり、米連邦制度理事会(FRB)が積極的な金融引締めを続けるとの見方が再燃し、米長期金利が3年半ぶりの水準に上昇し、ハイテク株を中心に売りが膨らんだ。
・5/5はインフレ懸念を強める材料が相次いだ。米原油先物相場は111ドル台に上昇、1~3月期の米労働生産性が前期比▲7.5%低下しインフレ懸念が加速、英中央銀行は10~12月期物価上昇率10%の見通しを示した。
・長期金利上昇で高株価のハイテク、インフレが消費意欲を冷やすと消費関連が下落。
●2.米国株:「利上げ+0.75%」を警戒していた市場は「+0.5%」の決定で楽観論が急浮上
⇒ 5/4は金利低下もあり、米国株はナスダック総合も含めて大幅急反発
⇒ 本質は『金利引上げ・量的縮小(QT)』の決定であり、緊張感を持ちたい
1) 加えて、米GDPは3月までの3カ月間で成長率がマイナスに転じており、金融引締め(利上げ・量的縮小)の加速が景気を冷やし過ぎると警戒する見方がある。
2)パウエル議長の発言を受け、「+0.75%利上げ」という急激な金融引締め観測が後退し、 「+0.5%」を好感した米株式は5/4に大幅上昇した。
NYダウ +932ドル高(+2.81%上昇)
ナスダック総合 +401高 (+3.19%上昇)
SP500 +124高 (+2.99%上昇)
PHL半導体 +118高 (+3.90%上昇)
3)5/4の米株式の大幅上昇に警戒したい点
・今年に入ってから4/29までは大幅下落しており、5/4の高騰は「その反動高」ともみることもできる。
2021年末 2022年4月末 下落率
NYダウ 36,338ドル 32,977ドル ▲ 9.25%下落
ナスダック総合 15,644 12,334 ▲21.16
SP500 4,766 4,131 ▲13.32
PHL半導体 3,952 3,124 ▲20.95
日経平均 28,791円 26,847円 ▲ 6.75
TOPIX 1,992 1,899 ▲ 4.67
4) ナスダック総合や半導体株指数が5/4に急騰した要因として、「金利低下」が挙げられるが、長期金利の基準である10年物国債利回りは当日、一時3%台に上昇したものの終値は2.923%に僅かに下がったに過ぎない。
2021年末 今年5/3 5/4
米10年債利回り 1.512% 2.979% 2.923%
米02年債利回り 0.734 2.784 2.632
したがって、「金利低下」を要因としたナスダック総合・半導体株指数が上昇した解釈は適切とは思えない。金利は昨年末と比べて上昇基調にあり、基本的には金利上昇は株価にとって良いとはいえないので、注視していきたい。なお、5/5に10年債利回りは一時3.1%に上昇し、2018年11月来の水準に達した。
5)5/5、やはり前日の上昇を帳消しにした下落幅・下落率。
NYダウ▲3.12%、ナスダック総合▲4.99%、SP500▲3.56%、PHL▲5.0%
●3.米FRB、(1)+0.5%の大幅利上げ、(2)保有資産縮小は6月開始、の引締策を決定(NHKより抜粋)
1)米中央銀行の連邦制度理事会(FRB)は5/3・4開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合での決定で、2つの引締め策((1)利上げ (2)資産縮小)によって記録的なインフレの抑え込みを急ぐ構えを示した。
(1)+0.5%の大幅利上げは、2000年5月以来の22年ぶり。
(2)FRBは保有する国債などの金融資産を6月から段階的に圧縮していく「量的引締め(QT)」も始めることを決めた。6月から月額475億ドル(約6兆1,000億円)を上限に圧縮を始め、3カ月後には縮小幅の上限を950億ドルに拡大する。
2)パウエルFRB議長の記者会見での発言
・「インフレは余りにも高過ぎて、強い雇用環境を維持するためには、インフレを低下させることが不可欠」だと述べ、物価の記録的な上昇を抑える狙いを強調した。
・「6月と7月のFOMCでも+0.5%の大幅利上げ」を続ける可能性を示した。
・また、「+0.75%の利上げは積極的に検討していることはない」と述べ、慎重な考えを示した。
●4.米ADP民間雇用者数+24.7万人増加、予想38.4万人を下回る(ブルームバーグ)
1)コロナ禍での回復局面で最も低い伸びにとどまった。
2)労働市場が逼迫する中、小規模企業が賃金上昇で苦戦し、人員を増やすことが引続き困難なことが、浮き彫りになった。
●5.米4月製造業PMIは59.2、予想59.7を下回る(フィスコ)
●6.米3月個人消費支出(PCE)物価指数は前年比+6.6%上昇、40年ぶりの高騰(時事通信)
1)エネルギーは+33.9%上昇と、2月+25.7%から伸び拡大。価格変動の大きいエネルギーと食品を除いたコア指数は+5.2%上昇で、前月+5.3%上昇からは小幅減速。
2)ただ、依然として高水準にあり、幅広い分野での価格上昇圧力が示された。
●7.米3月JOLT求人件数1,154.9万件、予想1,120万件・2月1,126.6万件を上回る(フィスコ)
1)求人件数は過去最高で、パウエル議長が言及する「不健全なほど労働市場が逼迫」している証拠の1つとなった。
2) FRBの2000年来最大ペースの利上げ軌道を正当化した。
●8.米4月ISM製造業総合景況指数57.1、予想58.5を下回る(ブルームバーグ)
●9.米3月貿易赤字が約▲14兆2,700億円と単月で過去最大、インフレで輸入増(時事通信)
1)輸入+10.3%増、輸出+5.6%増、原油価格高騰と個人消費の回復で押し上げられた。
●10.マスク氏、テスラ株1.1兆円売却、ツイッター買収資金工面か(時事通信)
●11.リフト株、業績予想が期待外れで一時▲29%急落、ウーバーにも飛び火(ブルームバーグ)
●12.米FRBはもっと早く利上げすべきだった、ダイモンJPモルガンチェースCEO(ブルームバーグ)
●13.クオールズ元FRB理事、米経済のリセッション入りが濃厚と指摘(ブルームバーグより抜粋)
1)インフレの強さを考慮すれば、ソフトランディングの可能性は低い。
2)FRB人事を巡る大統領の決断の不透明性で、インフレ対応が遅れた。
●14.OECD加盟38カ国の3月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+8.8%(日経新聞より抜粋)
1)エネルギー価格の上昇が主な理由で、ロシアのウクライナ侵攻でインフレ傾向がさらに強まっている。
2)金融引締めに消極的なトルコが+61.1%と最も高く、米国+8.5%、ドイツ+7.3%、日本+1.2%だった。(注:トルコの4月CPIは前年同月比+69.97%とさらに急騰)
3)小麦の主要生産国であるロシアとウクライナが戦争状態にあり、インフレ傾向が続く恐れが強まっている。欧州連合(EU)は、ロシア産石油の輸入を年内に停止する制裁案を5/4に発表しており、高価格の調達先に切り替えることになれば、価格への転嫁は避けられない。
●15.OPECプラス、6月供給量+43.2万バレルの小幅増で合意(ブルームバーグ)
●16.ロシアvsウクライナ関連
1)英BP、ロシア事業から撤退、3兆3,000億円損失計上(読売新聞)
・ロシア国営石油会社ロスネチフ株(保有19.75%)の売却や共同事業の損失処理。
2) ロシア、非友好国への原材料の輸出停止に大統領令、日米欧への報復強化か(時事通信)
3)米国、3月ロシア向け輸出▲78.8%減の約130億円、経済制裁で圧力強める(日経新聞)
4)露ルーブル約2年ぶり対ドルで高値68ルーブル、資本規制が支援、持続可能性に疑問(ロイター)
5) 英シェル、ロシアの「サハリン2」撤退損失5,500億円(時事通信)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1) 5/2~4 祝日「メーデー」で休場
2)5/5、 上海総合+20高、3,067(亜州リサーチより抜粋)
・中国経済対策への期待感が引続き相場を支える流れとなった。
・中国共産党は先週、習近平・総書記(国家主席)の主宰で中央政治局会議を開催、足元の経済情勢と政策活動を検討し、成長促進のため景気刺激を強化すると言明した。
・人民元の一服もプラス材料、ドル買いの勢いが収まったことも支援材料となった。
・パウエルFRB議長が大幅利上げに消極的な姿勢を示したことで、米金利が急低下。
・業種別では、消費関連の上げが目立ち、医薬品・海上輸送が高く、銀行・証券が安い。
●2.格付け会社フィッチ、2022年の中国経済成長率予想を+4.3%に下げ、コロナで(ロイター)
1)新型コロナ流行による混乱が1~6月期の中国経済に影響を及ぼし、経済成長率予想を+4.8⇒+4.3%に下方修正した。
●3.中国・上海市、市中感染が根強く、5週間にわたる都市封鎖の解除が遅れる(ブルームバーグ)
●4.中国政府発表の1~3月期中国経済成長率は「+4.8%」、野村は大幅引下げ(現代ビジネスより抜粋)
1)野村は4~6月期中国成長率を従来予想の+3.4%⇒+1.8%、2022年間+4.3⇒+3.9%に下方修正し、中国政府目標+5.5%とは大きく下回る。
2)WSJは、(1)ゼロコロナ政策で消費の低下と工業生産を抑圧、(2)不動産崩壊、を指摘。
3)中国政府発表の住宅販売は前年比▲25.6%減だが、「作られた数字」の可能性が高い。中国不動産上位100社売上は、前年同月比で1月▲41%減、2月▲47%減、3月▲53%減で、平均すれば▲47%減と、全く期待できない。にもかかわらず、中国政府は1~3月期の不動産開発投資は+0.7%増と発表。
4)中国個人消費動向を示すスマホ出荷台数は、1~3月期前年同期比▲14.1%減、4四半期連続の減少となり、中国の個人消費は年々弱ってきている。
5)外資による中国への投資が手控えられれば、外資系企業の中国における輸出の役割の大きさからして、中国経済を牽引する輸出が先細りすることになる。独裁国家のリスクの大きさを、ロシアのウクライナ侵攻を経験して、同じ独裁国家のリスクを認識した西側国企業は中国への投資を手控えるようになった。国際金融協会(IIF)は、3月中国投資流出した資金は175億ドル(約2.2兆円)と公表。「前例のない水準」となった。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)5/2、日経平均▲29円安、26,818円(日経新聞より抜粋)
・米株式市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)や世界景気の先行き警戒感から4/28・29にNYダウが▲1%近く下落し、東京市場でも投資家心理の重荷になった。
・「東京市場は大型連休の谷間に当たるうえ、FOMCを控えて投資家は手を出しづらい」との声も多かった。アドバンテ、東京エレク、ダイキン、ファナック、東ガスが下落。
・中国のコロナ対策の都市封鎖による景気減速に加え、ウクライナ情勢の長期化も重荷。
・堅調な業績見通しや自社株買い、円安が続くとの見方から輸出関連株が買われ下値は限定的だった。村田製、日立、富士通、商船三井、郵船、京成、ANA、エプソンが上昇。
2)5/3、祝日「憲法記念日」休場
3)5/4、祝日「みどりの日」休場
4)5/5、祝日「こどもの日」休場
●2.日本株 : 決算発表イベント終了後に注意
1)好決算銘柄に対する個別株への買いに支えられた相場になっている。決算発表シーズンは5/13まで、以降は好材料が乏しくなる時期を迎える。
2)日本株は、米国株連動の相関が強いので、来週までは比較的堅調な動きと思われる。
3)先物手口からみると、外資系は売り基調で、買いは国内勢で特に野村が目立つ。外資系が大きく買い上がるとは思いにくい。
4)決算発表イベントは5/13頃で終了、その後は好材料が乏しくなるので、今が資金化のチャンス。
●3.1~3月期GDPは年換算▲1.6%減、新型コロナ変異株と個人消費落込み(時事通信)
●4.企業動向
1)不二製油 マーガリンなど6月から、1Kg当たり40~70円以上値上げ(食品新聞)
2)東芝 中国でデータセンター向けHDD生産能力を2倍に(日経新聞)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4452 花王 業績堅調。
・3141 ウエルシア 業績堅調。
・3401 帝人 業績堅調。
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