相場展望10月7日 米国のスタグフレーション懸念は、債務上限問題先送りと原油高騰一服でいったん落ち着くか? 中国経済は、中長期的に減速へ

2021年10月7日 08:58

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/04、NYダウ▲323ドル安、34,002ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方、米長期金利が上昇する場面があり、PER(株価収益率)が高く、金利上昇時に売られやすい主力ハイテク株が下落を主導した。ハイテク株は9月から下げているが、持ち高を一段と縮小する動きが広がり、アップル、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾンなどが総崩れだった。
  ・米原油先物相場が 7年ぶりの高値を付けたことも投資家心理を冷やした。エネルギー価格の上昇が、企業収益を圧迫するとの懸念が広がった。
  ・中国不動産大手の中国恒大集団の債務問題への警戒感は根強く、また米連邦政府の債務上限問題もくすぶり、運用リスクを回避するための売りが出た。
  ・一方、製薬のメルクが引き続き上昇して、相場を支えている。メルクの新型コロナの飲み薬に対する期待感から前週に続き買いが入っている。治療薬が普及すれば経済活動の正常化につながると見られている。
  ・NYダウは原油先物価格上昇を受け、一時▲500ドル超値下がり。(NHK)

【前回は】相場展望10月4日 衆議院選挙は株高イベント、『株高確率は9割』 米懸念材料の米債務上限問題は、そのうち解決へ

 2)10/05、NYダウ+311ドル高、34,314ドル(日経新聞より抜粋
  ・前日の下げを受け、自律反発狙いの買いが主力ハイテク株に入った。
  ・ISM非製造業景況感指数が61.9と、前月から上昇し、市場予想60.0も好調なことから、米景気の底堅さを意識した買いが強まった。
  ・サプライチェーン(供給網)の混乱や人員不足が深刻化する中でも、サービス業の経済活動は高い水準を維持している。
  ・将来の売上高となる新規受注が改善するなど、需要が引き続き堅調なことも判った。
  ・原油高を好感して石油のシェブロンが買われた。
  ・米連邦債務の上限問題は相場の重荷になった。イエレン米財務長官が「10/18までに議会が債務上限を引上げないなら、米経済がリセッション(景気後退)の陥る可能性がある」と警告した。

 3)10/06、NYダウ+102ドル高、34,416ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウが上昇した要因
   (1)野党・共和党上院が、連邦政府の債務上限の一時停止を提案したと伝わり、投資家心理が改善した。
   (2)市場の懸念材料だった原油高が一服し、インフレ加速への警戒感が薄れたことも株式市場を支えた。
  ・NYダウは下落して始まり、下げ幅が一時▲450ドルを超えた。
  ・その後、急速に下げ渋り、上げに転じた。共和党上院が、債務上限を一時的に停止し、12月までの支出をカバーできる範囲内で債務拡大を認めることを提案したと、午後に伝わった。米国債の債務不履行(デフォルト)が回避されるとの見方につながり、株式の買いを誘った。
  ・米原油先物は一時79ドル台後半まで上昇したが、米国の原油在庫の増加が明らかになると76ドル台まで下げ、株式市場でも過度なインフレ懸念が和らいだ。
  ・9月ADP全米雇用リポートで非農業部門の雇用者数(政府部門除く)は前月比56.8万人増と市場予想を上回った。ただ、市場ではインフレや供給網の混乱など、「多くの景気リスクが残っている」との見方が多く、同指標を買い材料視する動きは限られた。

●2.米国株『スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)』リスクで動揺か?

 1)原油価格高騰がきっかけで懸念材料が噴出
  (1)インフレ懸念:原油価格急騰
   (物価上昇) コロナ感染拡大で東南アジア等から部品・製品の供給が滞ることでコスト上昇と製品価格の値上げ経済正常化による需要増に応えられない供給
  (2)企業収益悪化:コスト・エネルギー・人件費・輸送費・金利の増大と利益率低下
  (3)長期金利上昇:FOMC後から債券売り・金利上昇
  (4)中国経済鈍化:不動産業界の苦境、電力危機で生産活動抑制
  (5)米景気減速 :消費支出の低下、供給不足、住宅高騰で需要減

 2)米連邦政府の債務上限引上げ問題は、与野党の駆け引き材料で使われ、騒動にならず。野党・共和党は、民主党提案のインフラ投資含む巨額支出案の大幅縮小を狙った交渉過程で債務上限引上げ問題を取り上げただけで、本気ではない。したがって、この債務上限問題は先送りまたは解消に向かうと思われる。

 3)インフレ懸念材料の原油価格高騰は、在庫積み増し情報で10/6は一服したが、OPECプラスの大増産は期待できないため、再燃すると見ている。

 4)しばらくは、過剰マネー状況は継続しているため、適度の株価調整を織り込みながら堅調に推移すると思われる。

 5)いずれにしても、米国経済のスタグフレーション懸念は膨らむと見ている。当然、金利上昇と併せて、米株式市場の動揺を誘う局面もありそうだ。

●3.米30年国債利回りは6月以来の高水準、原油価格上昇でインフレ懸念(ブルームバーグ)

●4.米9月ADP雇用統計は前月比+56.8万人、8月+34万人から拡大(フィスコ)

 1)予想は+43.0万人

●5.米9月ISM非製造業景況指数61.9、予想59.9・8月61.7を上回る(フィスコ)

 1)予想外の上昇を受けて、米10年国債利回りは1.525%まで上昇した。

●6.イエレン財務長官「議会が債務上限に対応しなければ、米国経済はリセッションに陥る」と再度警告                        (フィスコ)

●7.セントルイス連銀のブラード総裁が10/4、インフレの高止まり可能性を警告(フィスコ)

●8.米国国債相場、10年債利回り1.75%の予測も(ブルームバーグ)

 1)2013年にバーナンキ元FRB議長が資産購入縮小に言及して、国債利回りが急上昇した経緯がある。

●9.OPECプラスは10/4、大幅増産を見送り、原油価格は7年ぶり高値(時事通信より抜粋

 1)米WTI先物市場は急騰し、78ドル/バレル台に上昇、2014年11月以来の高値を付けた。

 2)世界的な景気回復と、エネルギーの供給不足を背景に、石油の需要が逼迫しており、産油国に対して一段の増産を求める声が強まっていた。ただ、OPECプラスは将来的な供給過剰を懸念して事実上のゼロ回答で応じ、従来通りの小幅増産の維持を決めた。

 3)原油高は、ガソリン価格や企業の原材料費のコスト増など消費者物価高につながるため世界の消費者にも影響を与え、企業収益をも圧迫する。

●10.WTO(世界貿易機関)、2021年世界貿易は景気回復で+10.8%増と上方修正(時事通信)

 1)ワクチン接種の進展により、3月時点+8.0%増から上方修正した。

 2)2022年の予測も+4.7%増と、+0.7%引上げた。

 3)2020年の貿易量は▲5.3%減だった。

●11.アウディ会長は10/4、半導体不足は最悪の状況だが、VWグループで危機克服(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/04、祝日「国慶節」で休場。
 2)10/05、同上
 3)10/06、同上

●2.中国経済は今後、中長期的に景気減速へ

 1)習近平国家主席の方針展開で、結局は景気減速を招く
  (1)「共同富裕」:富の分配を通じて格差を是正し、下位層の不満を和らげるのが目標
  (2)二酸化炭素排出の抑制:目標は2030年までにピークアウトさせ、2060年までに実質ゼロが目標
  (3)不動産価格低下:個人の格差拡大を生む不動産価格の是正

 2)影響
  (1)共同富裕拠出 :拠出する企業業績にはマイナスで、企業活性化には負の作用
  (2)電力供給不足 :工場稼働の制限が継続し、実体経済への影響を懸念。9月中国製造業PMIは49.6と、改善・悪化の節目50を割った。年内は50割れが続くと予想
  (3)温暖化対策強化:経済成長よりも環境重視へ
  (4)不動産価格の低下始まる

 3)方針展開の過程で、生産活動や経済全体には大きな下押し圧力がかかる可能性
  (1)中国国内総生産(GDP)の成長率下方修正の可能性高まる

●3.中国エネルギー安全保障に弱点、需給逼迫で際立つ、習主席の優先課題(ブルームバーグより抜粋

 1)中国のエネルギー危機は、習近平国家主席の最優先課題の1つであるエネルギー安全保証に弱点があること浮き彫りにした。この問題は、数年にわたって電力システムに予期せぬ影響を及ぼす恐れがある。

 2)中国はこうした混乱が再び起こる事態を避けるため、
  (1)送電網の接続 :全国にまたがる長距離の接続。
  (2)電力市場刷新 :電力料金引上げと、製造業者の痛手解消策。
  (3)燃料備蓄の構築:発電所の石炭在庫は冬季到来前にしては相当な低水準にあった。
  (4)柔軟な再生エネルギー資源拡大:急速な化石燃料からの脱却の落とし穴にはまった。
  に向け、大きな一歩を歩み出すことを余儀なくされるだろう、と指摘した。

●4.格付会社フィッチは、中国の不動産開発「シニック」をCCC格⇒Cに格下げ(ロイターより抜粋

 1)中国の不動産開発会社「新力控股集団」(シニック)の格付を引き下げた。
 2)理由は、10/18に満期を向かる2.46億ドルの社債の返済を巡り不透明感。

●5.中国不動産開発会社の「花様年控股集団」は10/4、社債の償還が出来ずと発表(時事通信)

 1)社債の償還期限を10/4に迎えた2億600万ドル(約230億円)の元金を支払えず。

●6.中国恒大集団株は、10/6引き続き売買停止(読売新聞より抜粋

 1)市場では、恒大など中国不動産大手の債務返済能力に対する懸念が一段と強まる。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/04、日経平均▲326円安、28,444円(日経新聞より抜粋
  ・6日の続落は昨年7/22~31以来、およそ1年2カ月ぶり。
  ・朝方は米株高を手掛かりに買いが先行したが、中国恒大集団の資金繰り懸念や米債務上限問題を警戒した売りが優勢となり、日経平均は一時▲400円を超えた。
  ・香港取引所は10/4、中国恒大集団の株式売買を停止すると発表したが、理由は明らかにされず、市場に疑心暗鬼が広がり、香港ハンセン指数は急落した。東京市場にも、中国経済の先行き不安が高まり株売りが波及した。
  ・米国の債務上限の解決めども立たず、短期的に市場を揺さぶる材料になる。
  ・岸田新内閣が発足するが、構造改革への期待が後退する顔ぶれで、好材料視する市場関係者は少ない。
  ・ただ、経済活動の正常化期待が根強く、経済再開銘柄への物色が目立った。

 2)10/05、日経平均▲622円安、27,822円(日経新聞より抜粋
  ・心理的な節目の28,000円を下回り、8/30以来の1カ月ぶりの安値となった。
  ・米長期金利上昇への警戒感から半導体関連銘柄や成長(グロース)株を中心に幅広い銘柄に売りが出た。
  ・先物の売りに加え、持ち高調整などを目的とした現物株への売りも膨らみ、一時▲980円の下落となった。
  ・中国の不動産大手の資金繰り問題を巡る不透明感や、米連邦政府の債務上限問題に加え、原油高によるインフレ懸念の高まりもあって、運用リスクの回避を強めた。
  ・岸田新首相の政策は総選挙後となり、政策期待で買っていた投資家は肩透かしとなった。首相が金融所得課税の見直しを検討する方針を示したことも重荷となった。

 3)10/06、日経平均▲293円安、27,528円(日経新聞より抜粋
  ・朝方は前日の米株高を背景に買い優勢となり、一時上げ幅が+300円を超えた。
  ・終値は、1カ月ぶりの安値、8日続落は2009年7月の9日連続安以来となる。
  ・東京市場の取引時間中に米長期金利が一段と上昇し、成長(グロース)株を中心に売り優勢となった。
  ・原油高による日本企業のコスト負担増への懸念も重荷となった。
  ・後場寄り直後から、先物売りが主導する形で、日経平均は下げ幅を拡大し、下げ幅は一時▲500円を超えた。

●2.日本株『外資短期筋による売り仕掛けが止まらない』

 1)下落の要因:『スタグフレーション(景気後退とインフレ)』を意識
  (1)日本の景気減速 :米国・中国の景気鈍化を、世界の景気敏感国・日本が受ける
  (2)長期金利上昇
  (3)油価高騰
  (4)インフレ

 2)米ハイテク株の下落
  アップルなど主要ハイテク株価は下落幅が▲10%超値下がりし、「調整局面入り」したと見られ、この影響を日本ハイテク株に波及

 3)個人投資家に「追証」発生するなど、需給悪化
  菅前首相が退陣表明以前の水準に、菅首相退陣表明後の期待感で上昇した分を吐き出し

 4)中国不動産開発企業の破綻リスク表面化しているが、上海市場は国慶節で休場のため、代替策として外国人投資家は日本株を売ってヘッジ。

 5)米債務上限が迫る中米与野党で決着が見通せず、デフォルト不安が拭えず、リスク回避のため「世界の景気敏感株」である日本株の売り仕掛け。

●3.海外勢は『スタグフレーションで日本売り』を仕掛けている模様(DZHフィナンシャル)

 1)原油価格の上昇を受けて、海外勢はスタグフレーションを念頭に日本株売りを仕掛けている模様。
     

●4.衆議院総選挙は「10/14解散、10/31総選挙」、岸田首相10/4記者会見で表明(日経新聞)

●5.日本株、中国恒大問題が再浮上し、先物中心にリスク回避の動きで、日経平均下落

  1)香港ハンセン市場で、中国恒大集団の株式売買が10/4取引停止され、債務懸念が再浮上した。中国株式市場が国慶節での休場のため不透明感を増し、日本株式市場にも波及し、先物中心にリスク回避の売りが出て、中国関連の強い電機や精密機器の下落が目立った。

●6.日本株は10/4先物売りが牽引し下落、中国恒大の債務懸念が再浮上で(ブルームバーグより抜粋

 1)香港株式市場で、中国恒大集団の売買が停止され、債務懸念が再浮上。

 2)10/4償還期限を迎える債務の行方を不安視するとともに、巨額の隠れ債務があるという情報が取引開始直後に出回っている。

 3)日本株の中で、中国関連銘柄に影響がありそうだ。

●7.経済産業省、脱炭素社会に向け『アンモニア』燃料の発電設備開発へ(NHK)

 1)国の基金から700億円投じ、2030年までに開発を目指す。

●8.企業動向

 1)ホンダ  新車のオンライン販売開始、リース契約で都内から順次拡大(朝日新聞)
 2)トヨタ  9月米国新車販売▲22.4%減、東南アジア感染拡大で半導体供給減の影響。マイナスは2カ月連続(時事通信)
 3)川崎重工 2035年迄に先進国向け二輪車をEV化(TBS)
 4)東芝   英BTと量子暗号通信で実証試験(時事通信)

●9.企業業績

 1)イオン  8月中間決算純利益+45億円黒字(前年同期は▲575億円赤字)(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4612 日本ペイント  業績堅調。
 ・6201 豊田自動織機  業績好調。
 ・8308 りそな     金利上昇で利ザヤ拡大期待。業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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