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FRBは利下げを急がない 市場が見極める「賃金」という最終条件

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米金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを急がない姿勢を維持しているとの理解が定着しつつある。市場の関心は、雇用者数の増減ではなく、失業率と賃金動向という限られた労働関連指標が、金融政策判断をどこまで左右するかに移っている。なかでも賃金上昇率は、インフレ抑制が完了したと判断するための最終的な条件として注目されている。
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直近の連邦公開市場委員会(FOMC、1月28~29日開催)では、政策金利が3.50~3.75%に据え置かれた。声明文では、インフレについて「低下してきているが、目標達成にはさらなる確信が必要」との表現が維持され、利下げを急がない姿勢が改めて示された。
FRBが重視するコアPCE(個人消費支出)価格指数は、2024年12月時点で前年比2.8%と、目標の2%をなお上回っている(米商務省経済分析局)。
労働市場をみると、非農業部門雇用者数の増加ペースは前年比で明確に鈍化している。一方、失業率は1月時点で4.0%と、急激な悪化は確認されていない。週次の新規失業保険申請件数も21万件前後と低水準にとどまり、企業が大規模な人員削減に踏み切っている状況ではない(米労働省労働統計局)。
FRB視線でより重要なのが、賃金の動向だ。平均時給の上昇率は1月時点で前年比4.1%と高止まりしており、物価目標と整合的とされる3%台前半への減速には至っていない(米労働省労働統計局)。
賃金は一度上昇すると下方硬直性が強く、景気減速局面でも調整に時間を要する。賃金上昇が続く限り、サービス価格への上昇圧力は残り、インフレ沈静化は不完全なものとなる。FRBにとって、賃金が目標と整合的な水準に戻らない限り、利下げ開始の条件は満たされない。
主要投資銀行のエコノミストの間では、雇用者数の減速や失業率の小幅な上昇よりも、賃金上昇率の減速ペースがインフレ抑制の持続性を左右するとの見方が共有されている。
ゴールドマン・サックスは「賃金成長率が持続可能な4%の水準を下回りつつあり、インフレ目標と整合的な水準への収束が進んでいる」と指摘している(Goldman Sachs Global Investment Research、2025年12月)。
JPモルガンも「賃金成長率が長期平均の3.5%に向けて収束することが見込まれる」との見通しを示している(J.P. Morgan Asset Management、2025年経済見通し)。
FRBにとって重要なのは雇用の弱さそのものではなく、賃金が物価と整合的な軌道に戻るかどうかだ。
市場はすでに、FRBが利下げを急がない局面に入ったことを前提に取引している。今後の焦点は、失業率の許容範囲とともに、賃金上昇率が持続的に鈍化する兆しが確認できるかにある。FRBの「データ次第」という姿勢は、当面続くと受け止められている。
※本稿は2025年2月4日時点での公開情報に基づいている。経済指標は発表後に改定される場合がある。
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