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相場展望6月5日号 米国株: (1) 楽観すぎる米国株市場 (2) 中国は「レアアース規制」でトランプ米国に牙、米国は守勢 日本株: 円相場が短期転換のため慎重に、日経平均は重い展開を予想
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/2、NYダウ+35ドル高、42,305ドル
2)6/3、NYダウ+214ドル高、42,519ドル
3)6/4、NYダウ▲91ドル安、42,427ドル
【前回は】相場展望6月2日号 米国株: NYダウは4/8大底から上昇も、5/19に天井を打った可能性 日本株: トランプ関税前の高値越え達成、38,000円の壁は厚く高い
●2.米国株:(1)楽観すぎる米国株市場、(2)中国は「レアアース規制」でトランプ氏に牙、米国守勢
1)トランプ関税による悪影響で、5月から雇用減・インフレ上昇効果が出始める
・5月ADP雇用者数は非農業部門で前月比+3.7万人増と鈍化し、予想+11万人を大きく下回った。
・5月ISMサービス業景況感指数は49.9と、予想52.1を下回った。景気の境目となる50を割り込んだ。
・4月求人件数では、レストラン部門で▲13.5万件減と、景気の先行き懸念で解雇が増加している。
・米国企業の75%が、関税のコスト増を5月初旬には価格転嫁(インフレ)していることが判明。
2)楽観すぎる米国株相場、貿易相手国との交渉が進むことが何故「楽観」できる?
・最近の米国株式市場で特徴なのは「関税交渉の進捗⇒『楽観』⇒米国株高」である。
・米国が貿易相手国との交渉が進むと「関税の価格転嫁が進み⇒インフレに直結」する。関税交渉結果で関税が高ければ高いほど、価格転嫁率が高くなる。インフレは物価上昇を招くため、消費支出の抑制効果が出るため米国景気にはマイナス効果となる。景気後退の中で「最悪」となるスタグフレーションとなる。
・にもかかわらず、「関税交渉の進捗⇒『楽観』⇒米国株高」となっているのが、不可解である。
・関税は、貿易相手国にダメージを与えるだけでは済まない。高関税を課したことで、輸入が完全停止されれば、米国のインフレには響かない。また、高関税前の価格で他国からの輸入で代替できれば高関税の悪影響はない。
・ところが、高関税となる中国からは生活必需品である食品・家電・衣類や玩具など多品種を輸入している。そして、中国からの輸入品は安価で、他の輸入国に代替できない。高関税を支払っても中国から輸入し続けるしかない状況にある。
・そうなると、高関税は商品価格に転嫁され、米国民が最終的に被ることになる。まさにブーメラン効果である。
・トランプ氏が声高に「高関税」を叫んでいるが、その時、彼が被っている帽子は「米国第一主義」と記されているが「中国製」である。中国いじめの高関税政策であるにもかかわらず「中国製の帽子」を被りながら中国批判をするトランプ氏の姿は滑稽である。
・ただ、トランプ氏の整合性を欠いたトランプ政策とは一致する。
3)中国がレアアース輸出規制で牙、トランプ関税に反撃開始、米国は守勢
・レアアースは中国が供給の9割を占めている。
・トランプ氏は「中国が関税協議の合意を破った」と中国批判を再開した。その要因は、「レアアースの速やかな輸出再開」合意が実行されないことにある。果たして、その合意は「米国側に言い分」であり、中国側の公式コメントはない。
・レアースは、半導体・自動車・戦闘機・家電など広範囲に使われている。米国の自動車業界ではレアアースの在庫が数週間分しかなく、速やかな輸入ができないと生産停止に追い込まれると懸念されている。
・どうやら、米国の中国に対する関税145%⇒30%に引き下げた、要因はレアアースの供給再開が大きかったようだ。レアアース抜きでは米国の主要産業が停滞に追い込まれるための妥協だったようだ。
・「レアアースの輸出規制」が中国の、トランプ米国を反撃する刃だった。トランプ氏は中国関税攻勢をかける前に、レアアースなどの懸念を解決することなく攻撃を仕掛けた。イギリス・メディア発「TACO」(トランプ氏は先制攻撃しても、すぐに後退する)と評価を下げている。まさに、「TACO」の再々現となるか?
・中国も国内経済の悪化問題と民衆の暴動などを抱えており、トランプ米国との妥協が必要である。このため、妥協に向けた交渉に向けて、中国側が再開したと捉えるべき。
●3.米国5月ISM非製造業総合指数49.9に低下、インフレ懸念が浮き彫り(ロイター)
1)4月の51.6から低下し、2024年6月以来の低水準だった。予想は52.0だった。
2)企業は原材料価格の上昇に直面し、経済が依然として低成長・高インフレの局面を迎えるリスクにさらされていることを浮き彫りにした。
3)ISMサービス業調査委員会のミラー委員長は、5月の水準について「深刻な景気縮小を示すものではなく、むしろ不確実性を示している」と指摘した。
●4.トランプ米国大統領「FRB議長は利下げを」、民間企業雇用の鈍化指摘(ロイター)
●5.米国ADP民間雇用者数、5月+3.5万人増に鈍化、増加幅は2年超ぶりの低水準(ロイター)
●6.米国企業、大半が価格転嫁でトランプ関税に対応=NY連銀調査(ロイター)
1)5月序盤の時点で、製造業の約3分の1、サービス業の約45%が関税によるコスト増加分の全てを価格引上げで完全に転嫁している、と指摘。両業種の企業の約75%が何らかの形で関税関連のコスト増を価格に転嫁しているとした。
2)関税対象品の予想価格上昇率は、製造業が20%と回答し、サービス業は15%だった。
3)賦課される関税率予想は、製造業が35%、サービス業では26%だった。
4)米国外の生産者が関税引上げを相殺するために、価格を引き下げた可能性もあると記した。
●7.テスラの中国製EV販売、5月は前年比▲15%減、価格競争で苦境続く(ロイター)
1)中国で生産したモデル3とモデル7の中国国内販売と欧州などへの輸出を含む5月の出荷台数は前年比▲15%減の61,662台。
2)テスラの最大のライバル・BYDの5月世界販売台数は+14.1%増の376,930台。伸び率は前年比+14.1%増。
●8.米国4月求人件数は+19.1万人増、先行き懸念で解雇が増加(ロイター)
1)求人件数は+19.1万件増の739.1万件だったが、関税の影響で経済見通しが悪化する中、労働市場の減速と一致するかのように解雇が増加した。4月の求人数の増加は、3月の急激な減少に対する調整局面だったと考えられる。
2)業種別では、レストラン・バー部門で▲13.5万件減となったほか、製造業、金融、保険、州・地方自治体の教育部門でも減少した。一方、トランプ米国政権による連邦政府職員の採用凍結措置にもかかわらず、連邦政府では+1.3万人増加した。
●9.トランプ鉄鋼・アルミ関税倍増、米国で鉄鋼・アルミ価格急騰しコスト圧力高まる(ブルームバーグ)
●10.トランプ鉄鋼関税、欧州鉄鋼業界に深刻な打撃=独鉄鋼大手ザルツギッターCEO(ロイター)
●11.米国連邦最高裁、中南米4カ国からの移民53.2万人の保護取り消しを容認 (ロイター)
1)中南米4カ国とは、ベネズエラ、キューバ、ハイチ、ニカラグア。
2)不法移民の強制送還を目指すトランプ政権に追い風となった。
●12.米国法案「報復税」案が、海外投資家の新たな不安材料に(WSJ)
1)米国に投資する海外投資家に対して最大20%の新たな税金を課す権限を与える。
●13.中国レアアース規制で、自動車生産停止も、米国自動車業界団体が警告(ロイター)
1)中国産レアアース(希土類)磁石の不足で、数週間内にも自動車工場が閉鎖に追い込まれる可能性があると警鐘を鳴らしている。
2)オートマチックトランスミッション、スロットルボディ、各種モーター、センサー、スピーカー、ライト、パワーステリアル、カメラなど重要な部品の生産ができなくなる。
●14.米国マイクロソフト、数百人を削減、5月に6,000人削減に続き(moneyworld)
●15.米国ディズニー、世界で数百人を削減、映画・TV部門などで(moneyworld)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/2、祝日「端午節」のため休場
2)6/3、上海総合+14高、3,361
3)6/4、上海総合+14高、3,376
●2.中国株:中国は米国の弱点「レアアース」でトランプ米国に牙を抜く
1)中国は「レアアース輸出規制」で、トランプ高関税に対する反撃が始まる
●3.中国レアアース輸出規制、欧州で自動車部品メーカーが操業停止(ロイター)
1)中国は4月、レアアース磁石など一部の重要鉱物類の輸出停止を決定した。世界各地の自動車や航空宇宙、半導体、防衛といった産業が構築しているサプライチェーン(供給網)の中枢を揺るがしている。
2)自動車部品メーカーは4月初旬以降、数百件の輸出申請を要請したが、これまでのところ25%しか輸出が認められていない。手続きは省によって異なっているが、手続きが迅速化されなければ、今後3~4週間でさらに多くの海外工場が在庫の枯渇に見舞われる可能性が高い。
●4.中国製造業PMI、5月は48.3と8カ月ぶり50割れ、米国関税が打撃=財新(ロイター)
1)前月の50.4から低下し、景況改善・悪化の分岐点となる50を昨年9月以来初めて下回った。
2)米国関税が中国に直接的な打撃を与え始めていることが示唆された。生産は2023年10月以来初めて減少に転じた。人員削減により、雇用の落ち込みは今年に入り最大となった。自動車業界では、価格競争の激化で、再編を巡る観測が高まっている。
●5.香港の不動産大手・新世界発展、利払い延期で株価と社債が急落(ロイター)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/2、日経平均▲494円安、37,470円
2)6/3、日経平均▲23円安、37,446円
3)6/4、日経平均+300円高、37,747円
●2.日本株 : 円相場の上下が短期日で変動のため慎重に、日経平均は重い展開を予想
1)「円相場の変動が大きい」=米国・中国の懸念再び、米雇用指標の悪化リスクで
・円相場の推移
5/28米国 144.84円
6/02日本 143.20
6/03日本 142.95
6/04日本 143.66
6/04米国 142.66
・円相場が、米国側の材料で上下に大きく振れるため、輸出関連株の売買は慎重に対応したい。
・ただ、トランプ氏の出現で「米国売りの」流れであるため、中長期的には円高相場だと思われる。
2)日経平均は前日6/4に+300円上昇したが、上値は重い、下押し懸念含み
・日経平均は38,000円台が大きな壁となっている。この壁を上に抜くには、大きなエネルギーが必要。
・日経平均を押し上げるには海外投資家の買いが必要。だが、最近の海外勢は売り転換した可能性があり、注意したい。
・日経平均の底堅さは、事業会社による自社株買いにある。しかし、買い銘柄は自社株だけであるので、幅広く相場を押し上げる勢力とはならない。事業会社の自社株買いは例年6月2週までで、3月決算会社の株主総会前に落ち着く傾向があるため、利益確定売りや持ち高調整の売りは6月中旬までとなる可能性がある。
●3.日本の2024年出生数は初めて70万人下回る、出生率も過去最低の1.15(NHK)
●4.日本製鉄のUSスチール買収、トランプ大統領の判断期限6/5迫る(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・3003 ヒューリック 業績堅調
・3038 神戸物産 業績好調
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