金利復活で銀行はなぜ儲かるのか 銀行株上昇の背景とは?

2025年12月14日 20:13

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 日銀が大規模緩和を維持する中、日本の長期金利が上昇し、銀行の収益環境が大きく改善している。短期金利が低位で固定される一方、インフレの上昇や高市政権の積極財政への期待が長期金利を押し上げ、銀行株は三菱UFJや三井住友FGを中心に急伸している。短期で資金を調達し、長期で運用する銀行にとって現在の金利構造は利益を拡大しやすい状況だ。

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 短期金利が低いまま維持されている背景には、日銀が金融緩和の枠組みを当面継続するとの姿勢を示していることがある。市場では、短期の調達コストが上がらないことが銀行の収益安定に寄与すると見られている。

 その一方で、足元ではインフレ率が緩やかに上昇しており、財政出動を掲げる高市政権の政策期待も重なり、長期金利がじわりと上昇している。これにより、短期と長期の金利差が拡大し始めた。

 銀行の基本的なビジネスモデルは、短期で資金を集め、長期で貸し出すことで利ザヤを得るというものだ。調達金利よりも高い金利で貸し出せれば、その差が利益になる。現在の金利環境では、この利ザヤが拡大しやすい。

 これまで日本は長期的に金利が極端に低く、銀行にとって利ザヤを確保しづらい構造が続いていた。しかし長期金利の上昇は収益改善に直結し、市場は銀行の利益体質が変わり始めたと評価している。

 さらに設備投資の増加が、銀行収益に追い風となる可能性も高い。インフレが進むことで現預金の実質価値が低下し、企業が「内部留保として眠らせるより投資に回した方が得だ」と判断しやすい環境になっている。

 これに加えて、企業は設備投資やAI投資を加速させるとの見方が広がっている。特に生成AIや半導体関連の分野は競争環境が急速に変化しており、企業の資金需要を押し上げる可能性が大きい。

 投資が増えれば資金調達が必要となり、銀行の貸し出しは拡大する。融資残高が伸びれば利息収入も増加し、銀行の収益構造は一段と強化される。

 こうした環境変化の中で最も恩恵を受けているのが、メガバンクだ。三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGなどは連日高値を更新する場面も見られ、投資家の期待が集まっている。

 背景には、メガバンクが国内にとどまらず、海外の貸出・投資や資産運用ビジネス、決済・コンサルティングなど総合的な金融サービスへと事業領域を広げている点がある。

 一方、地方銀行はメガバンクとは異なる環境に置かれている。地方銀行の保有資産は国内向け貸出と日本国債に偏りやすい。金利が上昇すると国債価格は下落するため、保有国債の評価損が生じ、収益を圧迫しやすい。

 さらに、地域経済の人口減少や企業数の減少も背景にあり、メガバンクのように海外アセットや多角的ビジネスで収益源を広げることも、容易ではない。この構造的な違いが、銀行株の中でも特にメガバンクが強い理由だ。

 金利がある世界へ移行する中で、銀行の存在感は再び高まりつつある。長期にわたり低金利が常態化した日本で、銀行株が市場の主役に返り咲くことは長らく想定されていなかった。

 しかし、政策環境の変化と企業の投資需要の高まり、そしてメガバンクの収益構造の進化が重なり、銀行の収益機会は着実に拡大している。金利が持つ経済への影響力を改めて認識する局面となりそうだ。(記事:Osaka Okay・記事一覧を見る

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