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相場展望4月14日号 米国株: トランプ氏、強引な高関税で「パンドラの箱を開け」⇒「米国売り」を誘引⇒90日間停止に政策変更 日本株: 「相互関税90日間停止」に惑わされない!「円高」は進行中
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)4/10、NYダウ▲1,014ドル安、39,593ドル
2)4/11、NYダウ+619ドル高、40,212ドル
【前回は】相場展望4月10日号 米国株: トランプ氏、相互関税上乗せ分90日間停止、株価大幅上昇 報復措置を取った中国には計145%に引上げ 日本株: トランプ氏の見せかけの譲歩に乗ると危険
●2.米国株:トランプ氏、強引な高関税で「パンドラの箱を開け」⇒「米国売り」を誘引⇒90日停止
1)米国の相互関税を受けて(1)株安(2)国債安(3)ドル安と、「トリプル安」で金融が動揺
(1)国債売り(金利上昇)
・米国債10年金利の推移
4/04 3.994%
4/09 4.332
4/10 4.425
4/11 4.494
・安全資産の代表格・米国債が投げ売り(金利は急伸)された。特に、相互関税発動を「90日間一時停止」を発表したにもかかわらず、4/11も長期金利が上昇し続けていることに、ことの深刻さがうかがえる。
・債券市場が、この米国政権は「信用できない」と言い始めたことを示唆しているかもしれない。
・そうなれば、巨額に膨れた財政赤字の米国は、「資金が回らなくなる」。米国の財政が急激に悪化し、財政破綻に近付く。
・さらに、金利の急上昇は、(1)企業の資金調達や(2)銀行の資金繰りと金融収支に大きな悪影響を及ぼす。
・中国の対米国対抗措置として、中国が保有する米国債を売っているとの疑念も出ている。
(2)株売り
・NYダウの推移
4/02 42,225ドル
4/08 37,645
下落幅は▲4,580ドル、下落率は▲10.84%と急落し、世界に波及した。
・トランプ大統領が4/2、相互関税の詳細を発表して以降、3日間で世界の株式の時価総額が▲10兆ドル(約▲1,478兆円)消失した。
(3)ドル売りで、ドル安
・ドル相場が「ドル安」へと急速に進行した。
・ドル・円相場の推移
4/01 149.96円/ドル
4/09 144.96
4/10 146.98
4/11 143.57(米国時間)
・米国は米国債売り・米国株売り・ドル売りと「トリプル安」に直面した。これは、トランプ氏の強引な「関税措置」がもたらした成果である。
2)トランプ関税で「トリプル安」と「米国売り」という『パンドラの箱』を開けた
3)トランプ政権、「米国債の下落」で対応に迫られた
・トランプ氏、わずか14時間で「90日間停止」に翻意、米国株は好感し急反発。
4)トランプ氏は「はしゃぎすぎ」を諫められ、相互関税「90日間停止」など
・米国・中国貿易摩擦激化で世界経済減速の懸念が増す。
・前日、関税90日間一時停止を表明したが、それでも基本10%増税は変えず。⇒中国を除く70カ国の関税率を10%に引下げただけにしか過ぎない。
・むしろ、報復関税の中国には、制裁関税率を上乗せし計145%とした。
・対中国関税145%で、米国で値上げが大きく、政権への反発が拡大しやすくなるスマホ、ノートパソコンなどは、関税をゼロに引下げた。
・いかにトランプ氏の意思決定が、思慮なく無鉄砲であることを証明した。
・米国の金融筋は、トランプ氏に「トリプル安」という「米国売り」で反旗を翻したのである。
5)米国・中国を含む世界経済の悪化予測で、原油価格は下落
・WTI原油価格の推移
4/01 71.2ドル/バレル
4/02 71.71
4/08 59.58
4/10 60.07
4/11 61.50
6)まだ残された追加関税問題は、「銅・医薬品・半導体・木材」
・スマホの中国からの輸入は「半導体」課題の中で、取り上げられるとの報道。
・トランプ氏の「乱」は、まだまだ続く。
7)著名投資家バフェット氏の昨年来の米国株投資圧縮策が評価される
・バフェット氏が率いる保険・投資会社バークシャー・ハサウェイはアップル株を軸に運用してきた。昨年、そのアップル株の保有3分の2を売却して、現金比率を高めていた。
・バークシャー社の現金ポジションの推移
2022年09月末 1,100億ドル(約16兆円)
2024年12月末 3,210億ドル(約47兆円)
現金がほぼ3倍に膨らませている。
・アップルの生産基地は、中国・ベトナム・インドで、トランプ高関税を課した国にある。
・アップルはまともにトランプ関税から大きな傷を受けた。
・アップル株価推移
2024年12/26 259.02ドル
2025年04/08 172.42 : 12/26比で▲86.6ドル安・▲33.4%安
04/10 198.15
・バフェット氏は、トランプ関税による株価下落リスクを回避したのである。
・結果、バークシャー・ハサウェイ社の株価推移を見ても証明された。
4/02 537.72ドル
4/07 490.38 4/2比▲8.80%安
4/10 524.11 4/2比▲2.53%安
●3.米国大統領、相互関税90日停止は金融市場の動揺を抑えるねらいか(NHK)
1)相互関税を停止いている90日間は、各国に課す関税率は10%に引下げられて、上乗せ交渉が進められることになる。日本も90日間は、24%⇒10%の関税率となり、交渉となる。
2)株価急落などの危機のときは通常、安全資産とされる米国債が買われ、金利は低下するのがセオリー。しかし、今週に入って国債は売られ、金利が上昇する異例の事態となった。
●4.基本シナリオは物価上昇と雇用の軟化=セントルイス連銀総裁(ロイター)
●5.トランプ関税によりインフレ率は+3.5~+4.0%に上昇=NY連銀総裁(ロイター)
1)実質国内総生産(GDP)成長率は昨年から大幅鈍化し、+1%を若干下回ると予想。
2)失業率は現在の+4.2%から+4.5~+5.0%に上昇。
●6.トランプ関税で米国の予想インフレ率は+6.7%に上昇、43年ぶりの高水準(読売新聞)
1)米国ミシガン大学が4/11発表した米国の1年先の予想インフレ(物価上昇)は+6.7%となり、3月発表の+5.0%から上昇した。「トランプ関税」が影響し、1981年11月以来、約43年ぶりの高水準となった。
2)5年先の予想インフレ率も+4.4%となり、3月の+4.1%から上昇した。1991年6月以来、約34年ぶりの高さとなった。
●7.トランプ米国政権、相互関税から除外、スマホ、半導体関連、ノートPC(時事通信)
●8.米国4/11、相互関税からスマホを除外、値上がりで消費者の反発回避が狙いか(共同通信)
●9.JPモルガンのダイモンCEO、トランプ関税で「経済は混乱に直面」(ロイター)
●10.関税懸念で米国消費者マインドが大幅に悪化、インフレ期待は急上昇(ブルームバーグ)
●11.米国経済「スタグフレーションに直面せず」=NY連銀総裁(ロイター)
●12.トランプ関税、米国自動車メーカーに+1,080億ドルのコスト増も=調査(ロイター)
●13.米国3月卸売物価指数(PPI)は前年比+2.7%上昇、予想は+3.3上昇(ロイター)
1)2月の3.2%上昇から予想外に低下した。エネルギー製品のコスト低下が影響した。
●14.EU、対米国報復措置の発動を90日間保留、相互関税90日間停止で(時事通信)
1)フォンデアライエン欧州委員長は、米国との関税交渉失敗なら、米国巨大IT企業の広告収入へ課税することが考えられる、と説明した。
2)欧州委によると、2023年の米国とのモノの貿易ではEU側が1,558億ユーロ(25.2兆円)の黒字だが、サービス分野では米国が1,040億ユーロの黒字になっている。
●15.米国造船業の復活への大統領令へトランプ氏が署名、中国を念頭に(ロイター)
1)世界全体で毎年製造される商船に占める中国造船の貨物量ベースで50%を超える。1999年では中国のシェアはわずか5%だった。
2)米国造船業は1970年代にピークを迎え、現在のシェアはわずかにとどまる。
●16.米国と中国の報復関税で2カ国間の貿易量が最大▲8割減、世界のGDPも▲7%減(読売新聞)
1)経済大国である米国・中国間の貿易量は、世界全体の貿易量の約3%を占めている。貿易摩擦が激化すれば世界経済が分断され、新興国など他地域にも悪影響が及ぼす。「世界経済の見通しに深刻な打撃を与えなめない」とWTOは懸念を示した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)4/10、上海総合+36高、3,223
2)4/11、上海総合+14高、3,238
●3.中国、株式に売り越し上限設定、ヘッジファンドや大口個人投資家が対象=関係筋(ロイター)
1)ねらいは、米国との貿易戦争が激化する中、国内株式相場を支えるため。
2)売り越し上限額を5,000万元(683万ドル)に設定した。
3)違反すれば、証券取引所が取引口座を停止する可能性がある。
4)市場が再び下落すれば、売り越し額の上限を引下げる可能性がある。
●4.中国政府は4/11、対米国関税を84%⇒125%に拡大(日本テレビ)
1)報復関税は今後、米国を「相手にせず」と報復関税打ち止め宣言(朝日新聞)
2)中国は海外製造委託の米国半導体には報復関税を免除(ロイター)
AMD、エヌビディア、クアルコム
●5.米国、対中国への関税率計145%に中国反発、世界経済打撃に懸念(NHK)
1)中国への関税率は、追加関税の125%に加え、3月までに課した20%の別の追加関税と合わせて145%になると、ホワイトハウスは4/10に説明した。
2)米国に反発を強める中国は、4/10午後1時すぎに米国からの輸入品に84%の追加関税を課す措置を発動し、全面的に争う構えを崩していない。
・中国は、米国から輸入する映画作品の本数減の方針。
・中国は、中国人旅行客に対して米国への渡航を慎重に判断するように注意喚起。米国・中国の対立の影響は、文化面や人的往来にも拡大している。
●6.中国外交部、米国の極限圧力を「決して受け入れず」(新華社通信)
●7.豪政府、米国関税対応で中国との協力は拒否(ロイター)
●8.香港最大の民主派政党に、中国が解散迫る=関係者(ロイター)
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)4/10、日経平均+2,894円高、34,609円
2)4/11、日経平均▲1,023円安、33,585円
●2.日本株:「相互関税90日間停止」に惑わされないように!「円高」は進行中
1)短期投機筋の買い主導で4/8・4/10 の日経平均は急伸
・日経平均の買い主体が海外短期の投機筋と見られる。彼らは日経平均が36,000円近辺から買い出動していた。
・4/9に日経平均は下落に転じたのは、彼らが利益確定の売りを出したため。
・4/9終値のNYダウと比べて日経平均は3,000円程度の割安に位置していた。そして、4/10に米国株の急伸を受け、積極的に買い出動し、日経平均は34,609円と前日比+2,894円上昇を演じた。したがって、4/10の日経平均の上昇幅はNYダウの株価にすり寄った、といえる。
・4/14の日経平均は、4/11のNYダウの上昇を受けて上昇すると思われる。ただ、最近の日経平均は海外短期投機筋の先物売買動向に左右されている。彼らは利益確定売りを狙っていると予想されるため、注意が必要だろう。
2)円高も重し
・トランプ・トリプル安の1つ「ドル安」の影響を受け「円高」に。
・米国景気の減速懸念で「ドル売り」が強まる。
・円相場の推移
4/01(日本時間) 149.96円
4/11(米国時間) 143.57
3)トランプ相互関税発表以降、日経平均は日替わりで大きく乱高下が続き不安定
・日経平均の推移
4/3~7 ▲4,589円下落
4/08 +1,876円上昇
4/09 ▲1,298円下落
4/10 +2,894円上昇
4/11 ▲1,023円下落
4/14 今日は上昇するリズム
4)相互関税90日間停止に、惑われてはいけない、
・90日間24%まるまる停止ではない⇒基本税率の10%関税はアップする。
上乗せの14%部分のみが90日間停止である。
・自動車・同部品に対する25%関税は、引下げられていない。
・自動車関連の米国向け輸出は合計で年7.2兆円超。それも、日本の輸出の約3割を占める。かつ、経済のすそ野が広いため、ダメージの影響は日本経済全体に及ぶ。
・日経平均は4/9に「90日間停止」を受け、大幅反発した。しかし、その反発は「90日間停止」を過大評価した株価上昇であった。
・大幅反発した日経平均だが、市場関係者が冷静になれば、適切な日経平均株価に引き戻される可能性があると見る。
・トランプ相互関税の90日間一時停止で、企業の不透明感が強まる一方。
・米国経済や日本経済に与えるマイナス要因に変わりはない。
●3.ウエルシアとツルハ、今年12月で経営統合で合意(NHK)
●4.イオン、2026年2月期の営業利益+13%増を見込む、市場予想を上振れ(ロイター)
●5.牧野フライス、ニデックのTOBに反対、買収対抗措置も決議(ブルームバーグ)
●6.2月カレーライス物価、一食407円で初の400円突破、5年間で5割高、コメ・野菜の値上がりが家計を直撃(帝国データバンク)
1)カレーライスを家庭で調理する際に必要な原材料や光熱費などを基に算出した。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2607 不二製油 業績回復期待
・2726 パル 業績順調
・3865 北越 業績好調
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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