相場展望4月28日号 米国株: 相互関税の緩和発言で上昇も転換点、トランプ氏の豹変に注目 日本株: 順調に回復途上にあるが、海外短期投機筋の動向に注意

2025年4月28日 11:30

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/24、NYダウ+486ドル高、40,093ドル
 2)4/25、NYダウ+20高、40,113ドル

【前回は】相場展望4月24日号 米国株: トランプ関税の被害国1位は、なんと「米国」、中国は2位 中国や世界各国は、二転三転するトランプ氏の足元を見て対抗 日本株: 日経平均は米国株供に上昇しているが、足元の悪化は変わらず トランプ氏の日本への口撃スタンスは強まりこそあれ、弱まらず

●2.米国株:相互関税の緩和発言で上昇も、トランプ氏の豹変に注目

 1)米国株、関税発表での下落・緩和進展期待で上昇が続く
  ・NYダウの推移
    12/04  45,014(ドル史上最高値)トランプ氏大統領選後の最高値
    01/30  44,882  トランプ氏の大統領就任後の最高値
    04/08  37,645  トランプ相互関税発表で下落
    04/09  40,608  相互関税の90日一時停止を好感し反発
    04/21  38,170  FRB議長「解任」発言で米国株売り
    04/25  40,113  トランプ関税の緩和発言が相次ぎ好感

 2)下落率は、依然として「調整局面入り」とされる「▲10%減」基準を下回る
  ・下落の状況推移       1/30比下落幅  下落率
    01/30⇒04/08       ▲7,237ドル安・▲16.87%下落
    4/9反発したが1/30比    ▲4,274ドル安・▲ 9.52%下落
    01/30⇒04/21       ▲6,712ドル安・▲14.95%下落
    4/25まで4連騰だが1/30比 ▲4,769ドル安・▲10.62%下落
  ・NYダウは依然として「調整局面」から「脱却できず」

 3)NYダウ4/25、反騰か反落かの転換点を迎える
  ・4/25は、一時▲370ドル超下落後、盛り返したものの終値で+20ドル小幅上昇にとどまった。相場の気迷いがみられる。

  ・トランプ米国大統領とベッセント米国財務長官の「トランプ関税の緩和発言」が相次ぎNYダウは上昇した。
    ・NYダウは4日続伸して+1,943ドル高で終えた。
      4/21 38,170ドル
      4/25 40,113

  ・ただ、米国ブルームバーグ通信が、中国も「米国からの一部輸入品に対する125%関税の一時停止を検討している」と4/25に報じたが、米国株式市場が好反応するところには届かなかった。

 4)今後の課題は、「トランプ発言の市場の信認」を得られるかどうか次第
  ・トランプ大統領は、「習近平・国家主席とも何度も話した」と語った。さらに、トランプ大統領は4/24に両国の政府関係者が会合を持ったと述べた。だが、中国は米国政権からの圧力に反発し、4/24に政府高官が米国・中国の交渉が始まっていないと明らかにした。中国報道官も「米国・中国貿易協議は未実施」と主張し米国発言を否定した。

  ・トランプ氏は、日本との関税交渉は「合意にとても近づいている」と述べた。しかし、日本側の報道では、赤沢大臣の2回目の渡米関連を報じるだけで、とても合意が近づいているとは思えない。

  ・トランプ発言は、どこまで本当で事実なのか? 不透明である。トランプ氏の「口先介入」なのかもしれない。特に、トランプ氏はあっさりと自分の発言を撤回することがよくある。トランプ氏の「口先介入」は、トランプ風の「取引(ディール)」の一部とみた方が良いかもしれない。よって、トランプ発言に一喜一憂しないことが賢明のようだ。

  ・トランプ氏は、「発言した言葉の重み」の大切さを理解してもらいたい。市場のトランプ氏の信認度が今後の相場にかかわる。トランプ発言が、市場の信認を失った場合、市場からのしっぺ返しが怖い。トランプ氏の「FRB議長の解任発言」で米国株売りを勃発させ、トランプ氏は保有する米国債の急落で個人資産が大打撃を受け、ベッセント財務長官の助言もあって、わずか14時間で方針を撤回、「相互関税の90日間一時停止」へと追いこまれた。市場の信認を得られなくなった大統領の立場の危うさを身をもって気づいた瞬間だったはずである。

 5)トランプ氏は「世界という仲間に囲まれた盟主」に米国を引き戻すべき
  ・トランプ氏のこれまで「米国を世界各国と対立」へと導いてきた。今や、我がままで皆から嫌がられる米国の孤立化の途を歩もうとしている。トランプ氏の「米国が一番」の行先は「米国が仲間外れ」となる世界だ。

  ・米国は世界ヵ国から尊敬されるリーダーであった。
   その米国主導の、
    (1)民主主義
    (2)法の支配
    (3)人権
   という価値観の下で世界協調体制を築いてきた。

  ・そして、世界の基軸通貨「ドル」を中心に世界経済が回ってきた。そのため、世界の資金が米国に集まるなかで、米国は(1)財政赤字(2)貿易赤字にもかかわらず、謳歌できたのである。

  ・そして、米国は世界の頭脳を集め、世界の盟主としての地位を確立した。IT、人工知能(AI)、バイオなどで世界的技術を牽引し、世界貢献してきた。

  ・今や、寛容な米国の強みを放棄し、トランプ支持者だけの米国に変えようとしているように映る。トランプ出現は、世界、特に民主主義諸国の米国依存からの脱却の火種に点火したのだ。
   (1)ドルが基軸通貨でなくなったら、米国から資金は逃避する。
   (2)世界の頭脳が集まった米国から、欧州を軸に流出の危機にある。
   (3)米国の富裕層のマネーも米国からスイスに逃避始めている。
   (4)世界から米国の魅力を求めて訪ねていた観光客・留学生が渡米しなくなってきている。
   (5)米国の銀行に預けている金塊も、没収リスクから逃避するため各国の中央銀行の金庫に移動する動きがでている。各国政府が金塊を移動させる動きは、米国の信認が揺らいできた証拠である。

  ・この状況が続けば、米国は世界の盟主という地位を失うリスクが付きまとうことになろう。そうなれば、基軸通貨ドルの信認が失われ、米国の巨額債務の返済リスクが台頭することになる。ドル安という通貨の大幅切り下げで、米国は高インフレが蔓延する。米国は債務返済のため、緊縮財政を余儀なくされ、国民は増税に苦しみ、今まで謳歌してきた消費生活ができなくなる。最近勃発したギリシャ危機の米国版が起きる可能性を示唆している。

  ・トランプ氏は「FRB議長の解任発言が起こした米国売り」から自身の資産減価を経験した。今なら、後戻りできる。この貴重な経験を忘れる、無視するならば、再び「米国売り」が再加速することになる。今なら、米国という世界の仲間の盟主に戻ることができる。米国の信認回復に時間と努力がかかるだろうが、復帰できる。

●3.トランプ氏、「パナマ運河とスエズ運河の米国船舶の無料航行」を求める(日テレ)

●4.自動車船から米国は入港料徴収計画、ノルウェー企業はコスト増最大100億円(ブルームバーグ)

 1)米国の港湾に入港する中国船舶の課税案をさらに推し進め、建造した国を問わず外国の自動車運搬船も入港料賦課の対象とする計画を打ち出した。
 2)ノルウェー企業によれば、米国に寄港する船舶1隻あたり最大100ドルのコストが見込まれるという。

●5.トランプ氏、大学に一段の圧力、奨学金巡り認定厳格化など大統領令署名(ロイター)

●6.米国ニューヨーク州など12州、トランプ関税の停止求め提訴(NHK)

 1)理由は、国内物価上昇で国民の負担が増し、米国を不況に陥らせる。

●7.米国カリフォルニア州の経済規模はドル換算で日本を抜く(NHK)

 1)2024年のカリフォルニア州の総生産は4兆1,000億ドル、日本は4兆0,200億ドル。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/24、上海総合+0.93高、3,297(亜州リサーチ)
 2)4/25、上海総合▲2安、3,295(亜州リサーチ)

●2.中国、米国との貿易交渉を改めて否定、トランプ氏は「習主席から電話」と主張(AFPBB)

●3.中国への融資終了に具体的措置を、米国財務長官がアジア開銀に要請(ロイター)

 1)アジア開発銀行(ADB)は、中国を依然として開発途上国扱いをして融資している。

●4.5分充電で520㎞の衝撃、中国製EVバッテリーがテスラを過去にする日(Forbes)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/24、日経平均+170円高、35,039円
 2)4/25、日経平均+666円高、35,705円

●2.日本株:日経平均は順調に回復途上にあるが、海外短期投機筋の動向に注意

 1)日経平均はトランプ相互関税の緩和発言を受け、順調に買い戻されている
  ・日経平均の推移
    3/26  38,027円    トランプ関税発表前の高値
    4/02  35,725     トランプ関税発表の前日
    4/07  31,136     相互関税発表で下落
    4/25  35,705     トランプ関税の緩和発言を好感

  ・日経平均は、4/2の水準まで回復した。
    ・日経平均は、トランプ相互関税発表で4/2⇒4/7に▲4,589円下落した。しかし、反発し4/7⇒4/25で+4,569円上昇し、相互関税の下げ幅の99.56%と、ほぼ100%の下げ幅を取り戻した。トランプ相互関税の衝撃は織り込んだといえよう。

 2)NYダウは調整局面入りしたが、日経平均は寸前ながら踏みとどまっている
  ・NYダウ  1/30⇒4/25 下落率▲10.62%
   日経平均  1/31⇒4/25 下落率▲ 9.77%

 3)「パウエル解任」発言⇒「米国売り」で▲6.00%下落、日経平均は▲1.46%と軽微
  ・米国売りとは、(1)米国株売り(2)ドル売り(3)米国債売りのトリプル安を指す。
  ・日経平均・NYダウの比較  NYダウ    日経平均
           4/09  40,608ドル  4/08  34,730円
           4/21  38,170    4/22  34,220
           下落幅 ▲2,428ドル  下落幅  ▲510円
           下落率 ▲6.00%   下落率  ▲1.46%
  ・トランプ氏の「パウエルFRB議長の解任発言」は、米国株にとって大激震が走らせた。しかし、日本株は影響があったものの米国株に比べて軽微だった。

 4)海外短期投資家が株価指数先物買いで日経平均上昇を主導
  ・海外短期投機筋は「先物買い」で日経平均の上昇を先導しているだけに、彼らは動きはすばしこいため、注意が必要と思われる。
  ・トランプ相互関税発表前の水準まで日経平均が買い戻されている。

 5)トランプ関税発表前の3/26日経平均高値と比べると回復途上
  ・日経平均の推移
    3/26  38,027円
    4/07  31,136
    4/25  35,705

  ・海外短期投資筋の買い戻し目標を探る展開となろう。

  ・なお、3月期決算発表シーズンに入り、好材料に反応する季節でもある。

●3.アステラス製薬、14期連続「増配」発表、配当利回り5.6%、配当額は14年で3.1倍(ダイヤモンド)

●4.豊田自動織機、株式非公開化を検討、トヨタ創業家などから資金支援(毎日新聞)

●5.日産自、武漢工場の生産を2025年中にも終了、中国事業の立て直し急ぐ(ロイター)

●6.日産自、2025年3月期最大▲7,500億円の最終赤字、海外市場での販売不振続き(NHK)

 1)北米・中南米・欧州・日本での資産の減損▲5,000億円、構造改革費用▲600億円。

●7.キャノン、2025年12月期業績予想引下げ、円高・米国追加関税が下押し(ブルームバーグ)

 1)米国関税10%前提、コスト増・販売数量減・値上げで営業利益▲300億円減。

●8.富士通、今期営業利益+35%増を予想、関税の影響は「良し悪しは微妙」(ロイター)

●9.ニデック、2026年3月期営業利益+8.2%増益見込む、市場予想と同水準(ロイター)

●10.日野自動車、昨年度決算で最終損益は過去最大▲2,177億円赤字(ロイター)

 1)検査データ不正問題に伴う米国当局への制裁金やカナダの訴訟での和解金を計上。

●11.トヨタ、3月世界販売+7.9%増、海外は過去最高、北米で関税前駆け込み(ロイター)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・9142 JR九州     業績拡大期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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