相場展望12月15日号 米株市場は「ハト派」解釈も、FRBは「タカ派」姿勢堅持

2022年12月15日 12:51

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/12、NYダウ+528ドル高、34,005ドル(日経新聞より抜粋
  ・前週末比▲953ドル下げており、12/13の米11月消費者物価指数(CPI)や、12/14の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表という重要日程を控えて、景気敏感株に持ち高調整目的の買いが入り、引けにかけ上げ幅を広げ、この日の高値で終えた。
  ・CPIはインフレ圧力の鈍化を示すかどうかが注目される。FOMCでは利上げ幅が従来の0.75%から0.50%に縮小される見込みだが、来年の政策金利見通しがどこまで引上げられるかが焦点となる。会合後のパウエルFRB議長の記者会見と併せ、内容を確認したい投資家が多い。
  ・「重要イベントが想定内の結果になれば、年末にかけて相場が上昇するとの期待が根強い」との声があった。
  ・景気敏感株のボーイング・キャタピラー、消費関連のビザ、アップルが上昇した。

【前回】相場展望12月12日号 「悪材料」⇒「良い兆候」と受け止めが「悪い兆候」に転換注意、黄色信号が点滅、特に年明け後に注目

 2)12/13、NYダウ+103ドル高、34,108ドル(日経新聞より抜粋
  ・米11月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ長期化への警戒が和らぎ、一時+700ドル余り上げた後、急速に伸び悩んで下げに転じて▲110ドル安になる場面もあり、不安定な相場展開だった。
  ・11月のCPIは前年同月比+7.1%上昇と、上昇率は10月の+7.7%から大幅に縮小し市場予想+7.3%も下回った。2カ月連続で市場予想を下回り、FRBが金融引締めを長く続けて景気を冷やすとの懸念がやや後退した。
  ・市場では「12/14発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を見極めたいと様子見姿勢が次第に広がった」との見方もあり、持ち高調整や利益確定の売りが出た。もっとも、前日にCPIがインフレ鈍化を示すとの観測から、先回りした買いが入り+528ドル高となっていた。
  ・CPIを受けて米長期金利が前日の3.61%から一時3.4%台に低下し、セールスフォースやマイクロソフトなど高PERのハイテク株の買いを誘った。原油高でシェブロンが高く、インフレ懸念後退で消費関連や景気敏感株も買われた。一方、医療保険のユナイテッドヘルスや製薬のアムジェンなどが売られた。

 3)12/14、NYダウ▲142ドル安、33,966ドル(フィスコ)
  ・米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ減速決定するとの期待で買われ、午前のNYダウは上昇した。11月のインフレ指標の改善を受け、タカ派色が弱まるとの期待も手伝い、堅調に推移した。
  ・午後に入り、FRBがFOMCで想定通り利上げ減速を発表したが、パウエル議長はインフレを封じ込めるための利上げの道のりは長いと繰返したため、来年の利下げ観測が後退した。
  ・FRBスタッフ予測も想定以上にタカ派的な内容となり、一気に下落に転じた。
  ・議長が同時に、今後、一段と利上げペースを減速する可能性に言及すると下げ幅を縮小して    
市場は終了した。
  ・パウエル議長はFOMC後の質疑応答で、今後の利上げペースは経済指標次第と述べた。
  ・セクター別では、家庭・パーソナル用品が上昇した一方、自動車・自動車部品が下落した。航空会社のデルタが利益2倍増で買われ、テスラはアナリストの目標株価引下げで下落。

●2.米国株: 株式市場はFOMC結果を「ハト派」解釈したかったが、FRBは「タカ派」姿勢堅持。そのため米主要株価指数は下落。

 1)株式市場の「ハト派」的楽観解釈
  ・「CPI鈍化で利上げ停止が視野に」
  ・「米経済軟着陸の確率上昇」との見方も
  ・「米利上げ長期化への警戒感が後退」
  ・2023年後半に「▲0.5%の金利引下げ期待」
  ・FOMCとパウエル議長会見に、「ハト派期待」

 2)FOMCとパウエルFRB議長の記者会見の要旨
  ・米金利引上げ幅は今回+0.5%とする。
  ・前回の+0.75%引上げからは減速する。
  ・今後の政策金利は5%まで引上げる見通しだが、引上げペースは経済データによって+0.25%になることもあり得る。
  ・想定以上に「タカ派」の内容だった。

 3)相場概況
  ・NYダウは午前に+200ドル超上昇して始まったが、午後のFOMC結果を受けて一時▲370ドル近辺まで急落した。
  ・その後、記者会見の質疑応答で大きく振れる展開となり、一時プラス圏に反転も取引終了前に再びマイナスに転じた。

 4)まとめ: 米金融引締めは長期化し、景気後退・失業率5%程度までの覚悟をしないとインフレ退治はできない。
  ・パウエルFRB議長が、景気後退・雇用悪化を恐れて、インフレ抑制前に「金利引下げ」を実行する可能性がある。「早過ぎる金利引下げ」に転じた場合、インフレは再び上昇し、ボルカー元議長の誤りを繰返すことになろう。その場合、景気後退の谷はより深いものになると考えられる。民主党が労働組合に立脚した政党で、左派勢力が強いだけに、インフレ抑制姿勢に圧力が加わりやすい点に注目したい。

●3.米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明の要旨(フィスコ)

 1)政策金利を+0.5%引上げ。上げ幅は縮小、3月の利上げ開始以来で縮小は初。前回の利上げやタイムラグの影響を考慮する。

 2)利上げ継続が適切となる可能性が高い。

 3)FRB金利見通し:17人の高官の2023年見通しは「5%」を上回る。
   2023年末 5.1%、 2024年 4.1%を予想。

 4)経済成長は緩やか、インフレは一段と上昇
   2022年成長見通し +0.2%⇒+0.5%へ引上げ

 5)失業率は低く、雇用の伸びは力強い

 6)B/S縮小規模は月950億ドルを継続

 7)パウエルFRB議長、「当面、引締め維持」と言及。「更なる利上げ」も示唆。
  ・リスクバランスのため、利上げ減速で金利目標の水準を達成へ。
  ・経済指標次第で、さらに利上げペースの減速の可能性も示唆
  ・「なお道のり残る」と発言。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/12、上海総合▲27安、3,179(亜州リサーチより抜粋
  ・外部環境の不透明感が嫌気される流れとなった。
  ・米11月生産者物価指数(PPI)が上振れしたことを受け、インフレがピークアウトしたとの見方が後退し、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを長期に継続するとの懸念が再び強まり、米金利高が新興国経済の逆風と警戒されたが、下げ幅は限定的。
  ・中国リオープン(経済再開)の進展や、経済対策の期待感が支えた。
  ・業種では、不動産の下げが目立ち、金融も冴えない。自宅隔離の認定で医薬品は高い

 2)12/13、上海総合▲2安、3,176(亜州リサーチより抜粋
  ・国内の新型コロナ感染動向が不安視される流れとなった。
  ・北京市で新型コロナ感染が急速に拡大している・・などと報じられた。北京市衛生健康委員会の発表によると、12/11の発熱外来の受診者は延べ22,000人で1週間前の16倍に急増し、当局は抗原検査キット2,500万個を緊急配布したという。中国政府がコロナ対策を緩和した後、感染者の多数が自宅療養を選択。病院で診察を受けた感染者と、PCR検査の受検者は減少傾向にある。一方、発熱外来の受診者とインフルエンザのような症状の患者は明らかに増加した。
  ・もっとも、大きく売り込む動きはみられない。中国経済対策の期待感が相場を下支えしている。
  ・翌年の経済政策方針を決める重要会議「中央経済工作会議」は12/15に開催見通し。積極的な財政・金融政策が打ち出される・・との観測が流れている。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、医薬品も冴えない。不動産は上げた。

 3)12/14、上海総合指数+0高、3,176(亜州リサーチより抜粋
  ・米インフレ鈍化を好感した買いが先行する流れとなった。
  ・11月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で+7.1%上昇し、伸びは前月+7.3%も下回った。
  ・また、北京市などで新型コロナ感染が急増しているにもかかわらず、当局はコロナ防疫措置の緩和スタンスを続けている点もプラス材料だ。ただ、上値は重い。
  ・明日、公表される11月中国経済指標が気懸かり材料として意識された。
  ・業種別では、消費関連の上げが目立ち、証券もしっかり。医薬品・不動産は安い。

●2.中国における感染リスクが高い地区で指定解除が行なわれている模様(フィスコ)

 1)報道によると、中国が新型コロナ関連規制の緩和を発表したことから、感染のリスクが高い地区で指定解除が行なわれている模様。12/12は、鄭州市の鴻海精密工業のiPhone工場がある地区も封鎖解除されたようだ。

 2)中国政府の公式データによると、12/7時点で高リスク地区は3万カ所以上あったとみられているが、12/12時点で4,500カ所程度まで減少している。

●3.中国、重要経済会議「中央経済工作会議」を延期か=コロナ感染拡大を受け(時事通信)

 1)中国共産党・政府が例年12月中旬に開く中央経済工作会議が」延期されると報じた。開催地の北京で新型コロナ感染が急拡大しているためという。新たな日程は不明。

●4.米政府、中国企業31社を事実上の禁輸リストに追加へ=関係(ブルームバーグ)

 1)半導体の3次元構造のNAND型フラッシュメモリー生産で中国最大手のYMTC含む。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/12、日経平均▲58円安、27,842円(日経新聞より抜粋
  ・米金融引締めの長期化観測から前週末の米株式相場が下落し、東京市場でも売りが優勢となり、下げ幅は一時▲160円を超えたが、下値では買いが入り、下げ渋った。値嵩の半導体関連株への売りも指数の重荷となった。
  ・12/9発表の米11月卸売物価指数(PPI)は市場予想を上回り、米主要株価指数は揃って下落した。米長期金利の上昇を受け、東京市場では高PER(株価収益率)のグロース(成長)株を中心に売りが出た。
  ・週内に米11月消費者物価指数(CPI)や米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控え市場参加者の様子見姿勢は強く、積極的な売買は見送られた。
  ・日中値幅(高値と安値の差)は131円と、11/17の119円以来、3週間ぶりの小ささ
  ・楽天・大平金・DOWA・三菱商事・丸紅が下げ、川重・東ガス・海運株が上昇。

 2)12/13、日経平均+112円高、27,954円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場が上昇した流れを受け、ファストリやダイキンなど値がさ株の一角に買いが入り、日経平均を押し上げた。円安も自動車株の支えになった。もっとも、心理的節目の28,000円を上回る場面では売りが膨らみ、相場の上値は限られた。
  ・今夜に発表される米11月消費者物価指数(CPI)を控え、様子見姿勢の投資家が多いなか、利益確定売りや戻り待ちの売りに押された。米景気の先行き懸念も根強く、ファナック・日東電工・日本電産など景気敏感株の一角が下げた。その後は、膠着間が強まり、午後の値幅は73円ほどと小動きにとどまった。
  ・富士フィルム・武田・第一三共・ホンダ・ソニーが上げ、太陽誘電・TDKが下落。

 3)12/14、日経平均+201円高、28,156円(日経新聞より抜粋
  ・米11月消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を下回り、米国の利上げが長期化することへの過度な警戒感が和らいだ。
  ・12/14にFOMC後の株高を期待した買いが入る場面もあったが、次第に結果発表を見極めたいと様子見の雰囲気が広がった。
  ・米国のインフレピーク観測が改めて意識され、米金利が低下するなかで金融株が冴えなかった。
  ・円高の進行で、SUBARUなど自動車株の一角が下げた。
  ・東レが大幅高、東エレク・信越化が上げ、Jフロント・サイバーが下げた。

●2.日本株:11月第5週の外国人投資家と信託銀行(年金勘定)が大きく売越し⇒注意

 1) 11月第5週の売買状況
  ・外国人投資家    ▲8,144億円売り
   信託銀行(年金) ▲2,934億円売り
   個人(現金・信用)+5,246億円買い

 2) 12月は経験則でも、年末のお化粧買いもあって、ややプラスとなりやすい。しかし、大きく上昇した後の12月であり、益出しと損切りの抱き合わせ取引が予想される地合なだけに、買いには慎重さが必要と思われる。

●3.11月企業物価指数は前年同月比+9.3%上昇、過去最高を8カ月連続更新(TBS)

●4.米IBM、日本のラピダスと提携発表、2ナノ最先端半導体の製造支援(ロイター)

 1)ラピダス(Rapidus)は2027年から次世代微細化技術を用いたロジック半導体「ビヨンド2ナノ」の量産化を目指している。

 2)日本政府は同社に700億円の研究予算を拠出する。

●5.企業動向

 1)東芝   発光強度6倍の透明蛍光体を開発、2025年実用化目標(時事通信)
        住宅・イベントの照明、印刷物の偽造防止、農薬残留の検知など。
 2)武田薬品 米創薬企業ニンバスから自己免疫疾患の治療薬候補を最大60億ドルで取得
        支払は手元資金で充当、取引は2023年3月までに完了見込み(ロイター)

●6.企業業績

 1)くら寿司  11月通期決算で営業損益▲11億円赤字、助成金で最終利益+7億円(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・4301 アミューズ   リオープン期待。
 ・6457 グローリー   新紙幣期待。

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