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相場展望6月13日 米国:欧州金利上昇の余波・インフレ再燃で株下落 黒田日銀総裁で大丈夫か? 日本株支えは自社株買
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/09、NYダウ▲638ドル安、32,272ドル(日経新聞より抜粋)
・欧州中央銀行(ECB)が6/9、7月に量的緩和を終了すると決め、+0.25%の利上げに踏み切る方針を示し、9月にも追加利上げの可能性を示唆し、金融政策の正常化による欧州景気の減速が世界景気を下押しするとの警戒が強まった。インフレ次第では、9月の利上げ幅は通常の2倍の+0.5%にする可能性を示唆した。
・ECBの発表を受け、欧州の主要国債利回りは軒並み上昇(債券価格は下落)し、ドイツDAX株価指数など主要国の株価指数は総じて下落した。
・6/10に5月米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、インフレ加速への懸念も根強く、取引終了にかけて売りの勢いが強まった。
・米長期金利も一時3.07%(6/8終値3.02%)と1カ月ぶりの高水準を付けた。金利上昇で相対的に割高感が意識されやすいハイテクが売られ、アップルが▲4%・マイクロソフト▲2%下落、世界景気も先行き不透明感からボーイング、ディズニーやビザといった消費関連も安い。
【前回は】相場展望6月9日 米国株は過度な悲観論が後退し、株価反発 遅れて、金利再上昇・景気後退など懸念材料膨らむ
2)6/10、NYダウ▲880ドル安、31,392ドル(日経新聞より抜粋)
・米5月消費者物価指数(CPI)の伸び率が市場予想を上回ったため、インフレ加速を背景に米連邦制度理事会(FRB)が秋以降も積極的な利上げを進めるとの見方が強まり景気が冷え込むとの警戒感から幅広い銘柄に売りが膨らんだ。
・NYダウは2週連続で下落し、週間の下げ幅は▲1,506ドル(▲4.6%)安となった。下落幅、下落率ともに1/17~21(▲1,646ドル安、▲4.6%)以来の大きさだった。
・CPIは前年比+8.6%上昇と、4月の+8.3%から伸びが加速して市場予想を上回った。物価の基調を測るうえで重視される前月比でも+1.0%上昇と、4月の+0.3%から加速し市場予想+0.7%を上回った。
インフレがピークアウトしたとの見方を打ち消す結果と受止められた。
・市場では、6・7月の利上げは+0.5%の引上げの見方が多く、9月も+0.5%との見方。一部金融機関では6月は+0.75%の利上げを予想、金融引締め加速の懸念が強まった。
・インフレが消費を冷やし景気減速につながるとして、主力株が軒並み下げた。
●2.米国株:欧州中銀の金利引上げの波及、インフレ懸念再燃で、リスク回避が鮮明に
1)米長短金利差が縮小⇒米景気後退の可能性の高まりを示唆
金利差 10年債 2年債
1/03 0.860% 1.628% 0.768%
6/10 0.098% 3.165% 3.067%
米国債券5年利回りが30年債利回りを上回るという、景気後退を示唆する現象出現。
6/10 5年債利回り 3.264%、30年債利回り 3.203%
2)米国5月物価上昇(CPI)でインフレ(物価上昇)加速(前年同月比)
・全体のインフレ(物価上昇)率は+8.6%だが、内訳はガソリン+48.7%、航空運賃+37.8%、中古自動車+16.1%、肉・魚・卵が+14.2%、食料品全体で+10.2%。
3)4月はやや鈍化傾向にあったが、5月CPIの加速確認で根強いインフレ圧力を封じ込めるため、米連邦制度理事会(FRB)は急速な利上げを進める方向だ。6/13・14開催の米連邦市場公開委員会(FOMC)で金融引締めを決定する見通し。金利は+0.5%引上げ、QT(量的緩和縮小)で月額475億ドル実施される見通し。5月CPIの加速で、金利上昇幅は+0.75%説も浮上し始めた。
4) 米株価は、インフレピーク説と金融緩和説に連動して売られすぎの買い戻しで反発していたが、
(1) 欧州の金融引締め(7月金利上げ、量的緩和の終了)を受けた金利上昇と、
(2) 米CPIの上昇加速
を受け、6/8から再び下落に転じた。
7月も金利引上げが濃厚であり、9月利上げも大幅になりそうとの観測もあり、また9月からQTが倍額の月950億ドルになることも意識されるので警戒したい。
●3.米5月消費者物価指数(CPI)上昇率+8.6%(予想+8.3%)、40年ぶりの大きさ(共同通信)
1)米物価上昇率、前年比+8.6%上昇は、第2次石油危機後のインフレが長期化していた 1981年以来、40年5カ月ぶりの大きさ。
2)前月比では+1.0%の上昇で、伸び率は加速している。
●4.米バイデン政権、インフレ対策に手詰まり感=FRB頼み、にじむ焦り(時事通信より抜粋)
1)米国のインフレ率は前年比+8%超と約40年ぶりの高水準に達している。米国民の不満の強いガソリン高は、米国単独での対応はお手上げ状態。車社会の米国ではガソリン高は、消費者の不満に直結し、7割超が「不満」と回答。イエレン財務長官は議会公聴会で「政権だけでは限界がある」と認め、「インフレ抑制は『FRBに最も重要な債務がある』」とインフレ対応を事実上丸投げした。
2)11月の中間選挙を前にバイデン氏の支持率が低迷する中、物価対策は連邦制度理事会(FRB)の金融引締め頼みで、バイデン政権の焦りがにじむ。支持率反転のきっかけはつかめていない。
●5.米政策金利、2023年に中央値で3.1%と当局者予想=エコノミスト調査(ブルームバーグ)
●6.米インテルCFO、半導体需要の軟化発言、半導体株が下落(ロイター)
●7.米インテル、PC用半導体部門の採用凍結、少なくとも2週間(ロイター)
1)半導体部門の、出張キャンセル・業界会議への参加制限・オンラインでミーティングを開く指示など、他のコスト削減策も示した。
●8.米株式相場は▲30%の下落余地、エバコアが弱気シナリオ(ブルームバーグより抜粋)
1)エバコアISIはリポートで、「米株式相場について、エネルギー価格の高騰が経済収縮を引き起こした場合、足元の水準から▲30%下落する可能性がある」と見方を示した。
2)SP500の年末予想を従来の4,800⇒4,300に下方修正したが、さらに弱気シナリオも提起し2,900まで下落する可能性もあるとした。(6/10終値は3,900)
3)原油価格の上昇は「歴史的にリセッション(景気後退)の確率を高めてきた」と指摘。過去100年の平均的な「リセッション弱気相場での下落率は約41%」だとした。
●9.OECDの経済見通し、2022年成長率大幅下方修正、インフレ予想ほぼ2倍(ブルームバーグより抜粋)
1)世界経済は、ウクライナ戦争によって(1)成長鈍化 (2)インフレ高進 (3)長期にわたるおそれのあるサプライチェーンのダメージという「高いコスト」を支払うことになるだろうと、経済強力開発機構(OECD)が指摘した。
2)2022年の世界成長率を+3%と予想、昨年12月時点の+4.5%から下方修正した。2023年は+2.8%への成長鈍化を見込んだ。
3)加盟38カ国のインフレ率予想は+9.0%付近とほぼ倍増させた。
4)世界 3.0%(12月比▲1.5%) ドイツ 1.9(▲2.2)
OECD 2.7 ▲1.2 フランス2.4(▲1.8)
米国 2.5 ▲1.3 日本 1.7 (▲1.7)
ユーロ圏2.6 ▲1.7 英国 3.6 (▲1.1)
中国 4.4 ▲0.7 インド 6.9 (▲1.2)
●10.欧州中銀、7月に(1)+0.25%利上げ (2)量的緩和も終了(産経新聞)
●11.ロシアvs ウクライナ関連
1)DGM森精機 ロシアから撤退、270人解雇、日系メーカーで初(朝日新聞)
2)ロシア経済成長率、欧米の制裁で2022年は▲15%減少、国際金融協会(ロイター)
・国際金融協会(IIF)リポートで、2023年も▲3%のマイナス成長を予想した。
・欧米の経済制裁と企業の撤退、優秀なロシア人の「頭脳流出」、輸出激減を招く。2022年は、輸入▲28%、輸出▲25%縮小すると見込む。
3)ロシアの侵攻で各国企業は▲7兆円超の損失、1,000社が撤退と事業縮小(共同通信)
・エクソンは「サハリン1」撤退で▲34億ドル、マクドナルドは▲12~▲14億ドル。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/09、上海総合▲24安、3,238(亜州リサーチより抜粋)
・前日まで急ピッチに上昇し、足元で約2カ月ぶりの高水準に切り上げていたが、5月貿易統計で輸出の伸びが大幅に上振れたが、売り圧力が意識され反応は限定的。
・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、消費関連・医薬品・インフラも安い。反面、金融・不動産・エネルギーが買われた。
2)6/10、上海総合+45高、3,441(亜州リサーチより抜粋)
・銀行や経済協力開発機構(OECD)など、有力シンクタンクが経済見通しを相次ぎ引下げる中、中国政府は景気腰折れを回避するための対策を強めるとの見方が広がっている。
・中国物価統計が公表され、懸念するほどインフレが進行していなかった点も買い安心感につながった。消費者物価指数(CPI)が+2.1%となり、上昇率は市場予想をやや下回っている。一方、生産者物価指数(PPI)は+6.4%と予想通りだった。
・欧米の金融引締めを嫌気した売りが先行したが、下値は堅く、指数は上げ幅を広げた。
・業種別では、消費関連・ITハイテク・医薬品・金融・素材・などが買われた。
●2.中国・習主席「ゼロコロナ政策」堅持を四川省視察で改めて強調(テレ朝)
●3.中国で「密告奨励」の新制度開始、重大な情報に報奨金も(テレ朝より抜粋)
1)中国メディアによると、国家安全省は6/10、国家の安全に危害を加える行為を防ぐためなどの通報を奨励する制度を発表した。
2)通報は匿名も可能で、提供された情報の「貢献度」を4段階に分け「特別重大な効果」に200万円以上の報奨金を支払うとしている。
3)密告奨励ともいえる今回の制度は、重要人事が決まる秋の第20回共産党大会に向けて国内の取締りを強化する狙いがあるとみられている。
■III.日本株市場
●1.日経平均の推移
1)6/09、日経平均+12円高、28,246円(日経新聞より抜粋)
・134円まで円安・ドル高となり、輸出採算の改善期待から関連銘柄に買いが入った。
・中国経済の活動再開による企業収益の回復期待が根強く、自動車・機械が買われ、原油高を手がかりに資源関連も高かった。
・もっとも、足元で相場の上昇が続いており、短期的な過熱感も意識された。利益確定目的の売りも出やすく、日経平均の上値は重かった。
・「ロシアのウクライナ侵攻による影響が、欧米企業よりも相対的に小さいとの見方も日本株の押し上げにつながっている」との声があった。
・値嵩のファストリやソフトバンクGが高く、海運が大幅安、東エレクが下げた。
2)6/10、日経平均▲422円安、27,824円(日経新聞より抜粋)
・前日の欧米株式相場が下落した流れを受け、東京市場でも幅広い銘柄に売りが出た。日経平均が前日までの5営業日で+800円超上昇した後で、週末を控えて持ち高調整の売りも出やすく、機械・鉄鋼・非鉄といった景気敏感銘柄の下げが目立った。
・6/9に欧州中央銀行(ECB)が7月に量的緩和を終了し、利上げ方針を示した。インフレ見通しによっては9月にも大幅な利上げに踏み切る可能性も示唆した。欧州経済の減速が世界経済にも影響することの懸念が強まり、欧米の株式市場では総じて下落した。
・米国の5月消費者物価指数(CPI)が6/10に発表される。足元の原油などの資源価格の上昇で、米国のインフレが再加速する警戒もある。インフレが進み、米長期金利が上がると割高感が意識されやすい高PERのグロース(成長)にも売りが出た。
・反面、百貨店・不動産など内需関連の一角には買いが入リ、観光目的のビザ発給が再開されるなど、日本の景況感の改善が続いているとの見方が支えとなった。
●2.日本株:
(1) 黒田・日銀総裁に日本の金融政策を任せて大丈夫か?
(2) 日本株堅調は自社株買いが要因も、株主総会前に止まるので警戒したい
1)黒田・日銀総裁に日本の金融政策を任せて大丈夫か?
(1) 黒田・日銀の運営「超金融緩和策の継続」が波及するもの
・政府は安心して赤字国債の発行を気兼ねなくできる。それは、日銀が引き受けてくれるから、規律なき放漫財政が許される。
・本来、日銀は政府等からの独立を保証されている。現状、日銀は「政府の子会社」と元首相に言わしめている。
・ゼロ金利で、銀行、特に地方銀行に厳しい経営負担を強いている。
・株式市場に対して安全弁を供与(ETF買うだけで、売りがない)している。
(2) 黒田は総裁就任後、バズーカ砲といわれる異次元の金融政策をとることで、閉塞した日本経済と低迷した日本株式市場に活を入れようとした。世界主要各国の中央銀行が禁じ手とする、株式市場への直接介入をしてまで株価上昇に狂奔した。異常なことだ。
(3) その結果、日銀のバランスシートは500兆円にも膨らんだ。膨らみすぎて、その後、日銀は身動きができなくなって現在に至っている。
(4) そして、黒田総裁は2期目となり、「悪い円安」を「良い円安」と言ってはばからない。
(5) 物価急伸にも「消費者が値上げを許容している」と、経済調査データをつまみ食いしてまで、自己正当化にいそしんでいる。
(6) 政府・財務省にとって有用な現状の日銀
・安心して放漫財政が許される。
・低金利で低コストの資金調達ができる。
(7) 政府・日銀は6/10、「急激な円安に憂慮」と緊急会合で共同声明。
・必要ある場合には、適切な対応を取る。
(8)「急激な円安」を招いたのは、日米金利差の拡大を放置してきた、黒田・日銀の責任。
・日米10年債利回り差拡大 1/4 1.562%⇒ 6/10 2.915%
金利差 米国 日本
1/04 1.562% 1.647% 0.085%
6/10 2.915 3.165 0.250
・資金は、金利低い⇒金利の高いところに流れるもので、当然、「円安」の流れ。
円・ドルは1年前と比べ▲24.45円も円安(▲22.36%)が進行した。
昨年6/10 109.33円
今年6/10 133.78円
その円安の部分だけでも、輸入物価は上昇し、日本国民の生活に打撃を与えている。
・「急激な円安」のきっかけは、黒田・日銀総裁の6/6発言「超緩和策は継続」にある。為替市場は、安心して円売りを実行した結果が、発言以降▲4円もの円安を、招来した。政府・日銀が共同声明を出すなら、その前に、足元の黒田総裁の考えと発言を糾弾してからにするべきではないか。少なくとも、急激な円安を招いた発言をした黒田総裁の真摯な説明が必要だろう。彼の考えである「円安は日本経済にとって良いことだ」という説明は再三している。円安が日本にとって「良かった」のは1960~1990年代の日本が貿易立国であった時代のことである。今の日本は立派な輸入大国である。日本の製造業が生産拠点を、日本⇒中国や東南アジア諸国に移転させて、その国から輸入しているのが現状である。
まして、食料自給率の低い日本は食料品の輸入に大きく頼っている。円安となれば、日本国民の食料品価格はそれだけで上昇する構造になっている。高度成長時代は、製品輸出が盛んだったため、高い輸入食料でも難なく購入できた。黒田総裁の思考のベースは、日本の1960~1990年代の経済状況を根底においたものとしか思えない。さらに、「超金融緩和策は継続」と不用意な発言を今年だけで2回しており、いずれも大きな円安となるきっかけを作っている。そのため、共同声明は「猫だまし」にしか過ぎないし、「円安阻止」はできない。「お金」は金利の低い国⇒高い国に移動するのは普通のこと。金利の安い日本の投資家は円を売って、金利の高い米国の債券を買うためにドルを買うのは当たり前のこと。売られた日本では、円安となり輸入物価が円安変動分だけ上昇することになる。加えて、ロシアによるウクライナ侵攻で、原油・農産物の再高騰が積み上がり、輸入物価の上昇は顕著である。黒田総裁は、為替「円安」が、国民生活や日本経済に与える影響に鈍感過ぎる。任期は長いのが良いとは限らない。
2)日本株が堅調だった主な要因:企業の自社株買いが昨年の2倍と、潤沢な買い資金出動
・ただし、例年は株主総会前まで、今年は6/24頃に打ち止めか?株主総会直前には株価操縦の疑いを回避するため、おとなしくなる傾向がある。
・そのため、主要な株買い要因がなくなるため、6/27頃から一層の株価軟化を予想。特に、株主総会前後もしくは7月中旬にかけての大幅下落に警戒したい。市場を買い支える材料が、全くなくなってしまうからである。
・企業物価上昇も+8%となり、企業は値上げラッシュをしているが、価格転嫁は44%程度しかできず、7月後半ら始まる4~6月期決算発表では「利益下方修正」が相次ぐ公算が大きくなっている。そうなった場合、株式の売り圧力が一層と増すものと思われる。
●3.原材料費の価格転嫁44.3%にとどまる、帝国データバンク調べ(FNNより抜粋)
1)原材料費の高騰や円安などを受け、仕入コスト上昇分の価格への上乗せ割合は44.3%。仕入れコストが100円上昇した場合に、44.3円しか価格に反映できていない。
2)また、仕入れコストの上昇分を販売価格に「全て転嫁できている」企業は6.4%、15.3%の企業が「全く価格転嫁できていない」と答えた。
●4.日銀発表、5月企業物価は前年比+9.1%上昇、15カ月連続のプラス(TBS)
1)1980年12月の+10.4%以来の高水準。
●5.5月工作機械受注は前年比+23.7%増、19カ月連続プラス=工作機械工業会(ロイター)
1)内需は+49.0%、外需は+14.5%。
●6.企業動向
1)ANA 国内線を2年ぶりの通常運航(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4436 ミンカブ 業績好調
・7309 シマノ 業績堅調
・8439 東京センチュリー 業績堅調
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