相場展望2月14日号 米国長短金利差が2/10に0.4%に縮小、危機域へ 米金利3%(予想)に高騰、ITバブル崩壊時に相似?

2022年2月14日 08:55

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/10、NYダウ▲526ドル安、35,241ドル(日経新聞より抜粋
  ・米1月消費者物価指数(CPI)が市場予想以上に上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)高官のタカ派発言も伝わり、FRBが金融引き締めを急ぐとの見方から売りが膨らんだ。
  ・金利上昇局面で売られやすい高PER(株価収益率)のハイテク株が下げた。ソフトウェアのマイクロソフト▲3%安、スマホのアップルや顧客情報管理のセールスフォース▲2%安で終えた。
  ・積極的な利上げが米経済を冷やす見方から景気敏感株も売られ、機械のハネウェルや工業製品・事務用品のスリーエムが下げた。
  ・幅広い品目で物価が上がっており、インフレの長期化観測が強まった。
  ・インフレ加速を受け、米セントルイス連銀のブラード総裁は2/10、「7月前半までに合計1.00%の利上げを支持する」と述べた。米3月連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利上げを念頭に置いていると見られ、1度に0.50%利上げすれば2000年5月以来、22年ぶりとなる。
  ・市場では「インフレのピークアウトを確認するまでは、株には積極的な買いが入りにくい」との声があった。

【前回は】相場展望2月10日号 米国株は好決算銘柄が牽引も、CPIと金融引締めも意識 日本株は上昇局面で売り、押し目を拾う

 2)2/11、NYダウ▲503ドル安、34,738ドル(日経新聞より抜粋
  ・インフレ加速を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引き締めを急ぐとの警戒がくすぶっており、株式相場の重荷になった。
  ・ゴールドマンサックスが2/10、FRBが年内に0.25%の利上げを7回実施すると予想し、従来の5回から引上げた。
  ・ロシアのウクライナ侵攻の警戒が強まり、リスク回避の売りが幅広い銘柄に広がる。
  ・ホワイトハウスのサリバン報道官(国家安全保障担当)は2/11記者会見を開き、「ウクライナ国境のロシア軍は増えており、ロシアのプーチン大統領の命令があればいつでも侵攻する可能性がある」と指摘した。
  ・米国と英国は、ウクライナ在住の自国民に対して退避を促した。
  ・地政学リスクの高まりで、原油先物が上昇し、石油・軍需株が買われた。
  ・ウクライナ情勢の高まりを受けて、相対的に安全資産とされる米国債が買われ、10年物国債利回りは一時1.91%と前日終値から▲0.12%低下した。

●2.米国では長短金利差が0.4%台に縮小し、危険水域へ

 米金利上昇を3%台へと予想され、ITバブル崩壊時に相似を危惧する
  1)高インフレ上昇(物価上昇)の3犯人
   (1)バイデン大統領の政策:民主党左派の労働者中心主義政策の実行
    ・2021年3月1人当たり1,400ドル現金支給
    ・失業保険の上乗せ支給月300ドル
    ・雇用確保だけを狙った景気対策の大盤振る舞い
   (2)パウエルFRB議長の月1,200億ドル(約14.3兆円)の過剰マネー供給
    ・過剰マネーが株式市場だけでなく、商品先物市場流入による農産物・木材・非鉄などの価格高騰がインフレにつながった。
   (3)イエレン財務長官の雇用人数中心に偏った財務政策(物価上昇の無視)
    ・米国民の物価高による生活苦を見落とした。

  2)消費者物価指数の急伸
   ・12月7.0% ⇒1月予想7.3 ⇒ 1月実績7.5

  3)バイデン大統領は11月の中間選挙で勝たねばならない。
   ・ところが支持率が41%と低下し、挽回できていない。このままだと中間選挙で、上下院で負けるとネジレ議会となり、政権のレイムダック化が進むことになる。
   ・バイデン政権の不人気の原因
    (1)アフガニスタン撤退時の不首尾
    (2)高すぎる物価上昇
    (3)世界の指導者としての弱さを露呈
     ・サウジの離反(フーシー派(イラン系)からの攻撃に迎撃ミサイルを消耗し、米国に補充を求めたが、バイデン政権は対応せず。原油価格高騰を受け、ガソリン価格急騰を抑えるために、バイデンはサウジに増産依頼したが、サウジは無視で対応した。
     ・ロシアのプーチン大統領に対する軟弱な対応がウクライナ侵攻問題を許す外交の一部として軍事力があるが、バイデンは「ウクライナに米軍派遣の考えはない」と発言し、プーチンの専横を許した。
     ・中国への強硬策は雄弁だが11兆円もの半導体輸出を認可するなど一貫性の無さが中国から舐められることに、後から中国の米国からの農産物等の輸入が少なく約束違反だと主張する可笑しさ(中間選挙対策にすぎない)
     ・北朝鮮の挑発に対する放置。
     ・仏豪で契約済みの潜水艦建造6兆円事業に割り込み、米国原子力潜水艦輸出への置き換え。⇒フランスの怒りの前に、バイデン大統領の謝りと思慮の無さ露呈
     ・『同盟強化』と言いながら、同盟国には要求はしても、やることは『米国ファースト』追求で、民主主義国をまとめられないバイデン大統領

  4)バイデン大統領は中間選挙を意識し、FRBに強力な『インフレ抑制の圧力』
   ・バイデン支持率低下要因「物価上昇の不満」解消のため、「インフレ対策」迫られる。
   ・パウエルFRB議長の再任に当たっての条件が「インフレ抑制」。
   ・超ハト派のFRB理事のFRB副議長昇進の条件も「インフレ抑制」でタカ派に転向を事実上要求した。
   ・物価上昇を不安とする支持率の低下から脱し、バイデン大統領は、パウエルFRB議長に「インフレ抑制の事実上の指示」に追い込まれた。ウエルFRB議長・副議長候補はともに受け入れた。

  5)FRBの目標物価2.0%を大幅に上回った7.5%からの、『遅すぎたインフレ抑制』
   ・鈍牛に見えるFRBのインフレ対策のスピードの遅さ、転換力の無さ。
   ・再任の議会証言で「インフレ抑制を公約」したにもかかわらず、インフレ率が1月に予想以上の7.5%になっても、物価上昇を招いた過剰マネーの増加となる市場への資金供給を3月まで続けるという、自己矛盾に気が付かないパウエルFRB議長とFRB理事たち。
   ・FRBは直ちにFOMC臨時会合を開催して、「明日にでも資金供給停止」すべき。

  6)目に見えるインフレ抑制にために、FRBは『オーバーキルは避けられない』
   ・FRBの鈍重さが招く『インフレ抑制効果が表れても、追い打ちをかけて実施する金利上昇と資産圧縮の継続』が容易に想像できる。

  7)結局は、(1)米景気不況と(2)高金利、(3)物価高、の『三重苦』となり、バイデン民主党政権は1期(4年間)で投了の可能性を予想させる。

  8)更なる懸念:米政策金利は0⇒3%台への高騰もあり得る
   ・バイデン大統領の2兆ドル(約230兆円)規模の財政支出法案を成立させようとしている。民主党上院議員のマンチンら4議員の抵抗にあい、削減検討を始めるとするが、法案成立のためであり減少しても巨額であり、バイデン大統領の「インフレ抑制」への本気度は疑いがある。「インフレ抑制はFRBの仕事」であり、自分はやりたいことを実行するかのようだ。
   ・現在の市場では、2022年の金利引上げが7回×0.25%=1.75%説が増えている。2023年以降も展望すると合計で14回×0.25%=3.5%もあり得る。
   ・このバイデン氏のスタンスでは、インフレ抑制のバーが更に高くなり、『オーバーキルは必至』となる。『バイデン&FRBバブル崩壊』と後世に言われる懸念がある。

●3.米国株は恐怖指数が急伸

 1)投資家心理を測るVIX(恐怖)指数は2/10比で2/11は+14%高い27.36に上昇し、不安心理が高まるとされる20を大幅に上回った。一時30.9まで上昇した。

 2)米株式の行方を探る意味でも、VIX指数の動向を注視する必要性が高まってきた。

●4.米10年債利回りは2/10、2.03%に上昇し、2年半ぶりの高水準(日経新聞)

 1)米CPIの上昇を受け、金融引き締め強化観測が強まる。

●5.ゴールドマン、1月CPIを受け+0.25%ずつ年内に7回の利上げ(+1.75%)見込む

 1)従来の引上げ回数は、5回(+1.25%)と見込んでいた。(ブルームバーグ)

 2)食品とエネルギーだけでなく、幅広いベースでの物価の上昇が見られている。

●6.米1月CPIが40年ぶり最大の伸び、3月FOMCで+0.50%の利上げ確率上昇(フィスコ)

 1)米1月CPI消費者物価指数は前年比+7.5%

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/10、上海総合+5高、3,485(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が相場を支える流れになった。
  ・国内経済の成長鈍化が危惧されるなか、当局の景気テコ入れに向けて、金融・財政政策を強めるとの見立てがが広がった。
  ・また、「国家隊」と呼ばれる中国政府系資金が相場に介入するとの思惑も根強い。
  ・新型コロナ感染拡大による行動規制が表面化するとの不安などで売られる場面が見られたものの、指数は引けにかけてプラス圏に回復した。
  ・業種別では、不動産・石炭が高く、金融がしっかり。反面、ハイテク関連・医薬品・自動車・飲料が売られた。

 2)2/11、上海総合▲22安、3,462(トレーダーズ・ウェブ)
  ・前日の米国株安が嫌気される反面、中国の政策期待が相場を支え、上海総合指数は一時、心理的節目の3,500に到達する場面もあった。
  ・ただ、前日まで4日続伸した後とあって、週末を前に利益確定売りが広がり、後場は軟調に推移した。
  ・アジアの取引時間帯に、米株先物が下落したことが投資心理を冷やし、大引けにかけて徐々に下げ幅を拡大した。
  ・業種別では、漢方薬・医療器械・ゲームは全面安となった反面、保険が買われた。

●2.中国政府、アリババなど巨大IT企業トップを集め「座談会」、統制強化狙いか(朝日新聞)

●3.中国、ファイザー製のコロナ飲み薬を条件付きで承認、外国製飲み薬で初(読売新聞)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/10、日経平均+116円高、27,696円(日経新聞より抜粋
  ・朝方は、米国のハイテク株高を受けて半導体関連やグロース(成長)に買い先行、また好業績銘柄への物色も引き続き活発となり、日経平均は一時+300円を超えた。
  ・もっとも、相場全体を押し上げる材料に乏しく、買い一巡後は上げ幅を縮小した。
  ・日本時間2/10夜に、米1月消費者物価指数(CPI)の発表が予定され、東京市場が3連休になるとあって持ち高を一方に傾ける動きは限定的で、膠着感を強めた。
  ・資生堂・ホンダ・SUMCO・鹿島・アドテスト・ソニーが買われ、ヤマトが大幅安。

 2)2/11、祝日「建国記念日」につき休場

●2.日本株は、買う理由を見つけにくい

 1)EPS(1株当たり収益率)は、好決算発表企業が多いなかでも急伸せず。

 2)膠着状態から抜け出せない状況が続いている。

 3)米国株は「インフレ」と「ウクライナ緊迫」で勢いが感じられない。

 4)本日2/14は、米国大幅下落とウクライナ危機材料もあって、日本株は全面安を予想。もともと、決算シーズンも終了したなかであり、予測された展開。優良銘柄を買える市場になってきたとも言えよう。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・今回は見送り

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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