相場展望2月7日号 米『3月+0.5%利上げ』はサプライズに 日本株、『節分天井』になるか?分岐点に

2022年2月7日 09:22

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/03、NYダウ▲518ドル安、35,111ドル(日経新聞より抜粋
  ・決算と併せて発表した業績見直しが、市場予想を下回った銘柄が売られ、相場を押し下げた。特に、交流サイトのメタプラットフォームズ(旧フェイスブック)が急落し、ハイテク株に売りが広がり、セールスフォース▲5%安、マイクロソフト▲4%安。
  ・メタは2022年1~3月期の売上高見通しが市場予想を下回り、株価は▲26%安で時価総額は2/03だけで▲2,370億ドル(約▲27.2兆円)減少した。
  ・ハイテク株は先週から上昇し、金利上昇もあり、利益確定売りが出やすかった。
  ・決算発表前のアマゾンは、警戒した売りで▲8%安で終えた。

【こちらも】相場展望2月3日号 米国株は好決算で反発も、次はインフレ懸念が強まり金融引き締めが再浮上

 2)2/04、NYダウ▲21ドル安、35,063ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方発表の1月7米雇用統計を受けて、米金融政策の早期正常化観測が高まって、金融引き締めが景気を冷やすとの警戒感から、景気敏感株の一角に売りが膨らんだ。
  ・反面、2/3夕に四半期決算を発表したネット通販のアマゾンの急騰を受け、ハイテク株に買い直しの動きが広がった。
  ・雇用統計で景気動向を映す非農業部門の雇用者数は前月比+46.7万人増え、市場予想の+15.0万人増を上回り、昨年11・12月をも上回った。
  ・米労働市場の逼迫を示したとして、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に金利引き締めを進めるとの見方が強まり、引けにかけて下落に転じ上げ幅を消した。

●2.米国株式市場は大荒れを示唆、過剰マネー相場からの出口を探る展開に入ったかも

(1)3月+0.50%利上げ (2)6月+0.25%利上げ (3)6月保有資産の縮小開始、はサプライズに

 1)好決算には高騰で、懸念銘柄には特に厳しく、ボラティリティが非常に高まっている。
  ・メタプラットフォームズは2/3の1日だけで株価は▲26.33%下落し、時価総額を2,370億ドル(27.2兆円)を失った。この喪失した時価総額だけで、ディズニーの時価総額に匹敵する。創業者のザッカーバーグCEOも▲300億ドル(3.4兆円)の損失を被ったという。
  ・テスラへの投資でく高運用益を出し脚光を浴びたARKKのETF価格が急落している。急落要因は、ARKKの問題点と言うよりは、投資家が「頂点と見限って」現金化したと思われる。
  ・アマゾンは10~12月期純利益が過去最高の決算を発表し、株価は2/4に買いが膨らみ+13.54%急騰し、1日だけで時価総額を+1,910億ドル(約22兆円)増と史上最高を記録した。
  ・NYダウは、2/3のメタの悪材料が波及し▲518ドル安。2/4はアマゾンの好材料が主導し、金利高にもかかわらずナスダック総合は+219ポイント上昇と逆行高、NYダウも朝方の大幅安から▲21ドル安まで挽回した。
  ・1銘柄だけで、株式市場をかき回す程、市場は強気と不安心理が交錯する状況にあるといえる。不透明感が深まってきている。 この現象は、『誰もがリスクを避け始め、消極的になり始めているかもしれない』。

 2)世界の中央銀行は、インフレ抑制のため『利上げ』『資産縮小』に迫られている。
  ・このことは、過剰マネーで溢れる市場から、主要中央銀行が資金を回収し、過剰マネーが縮小することを意味している。
  ・過剰マネー縮小は、株式市場にとっては逆風となる。

 3)米国の個別銘柄も直近の高値から下落率が大きいのが目立つようになってきている。
  ・その後、好業績の決算発表もあって株価は戻しているが、相場が荒れ始めたのに注目したい。
  ・チャート面でも、『三尊』形成となる可能性を示唆しており、これから下落に向かうと「三尊」形成完成となるので、その動向に警戒が必要と思われる。
 
 4)懸念材料
  ・金融政策の引き締めは、
   ・3月+0.50%利上げ
   ・6月以降の+0.25%の追加利上げが4回
   ・膨れ上がったバランスシート縮小
  に関する決定が予想される。
  ・「小型株が売られ、大型株の中の僅かな銘柄に資金が集中して買われる相場は、やがて暴落する」というITバブル崩壊の経験則があるだけに、警戒したい。なお、2000年のITバブル崩壊時のFRB利上げ回数は1年間で6回であり、今回も同様に0.25%換算では6回となりそうだ。

●3.米利上げ、『3月に+0.50%引上げ』の見方強まる、力強い雇用統計を受け(ブルームバーグより抜粋

 1)1回の利上げ幅が+0.50%になれば、2000年以来では初めてのことになる。経済に過熱リスクがあるとの観測が高まっている。
 
 2)米FOMCは1月雇用統計の強さを受け、3月利上げの理由に利用する、との分析もある。さらに、『6月までに、+0.25%の追加利上げ』が見込まれるほか、『FRBの保有資産の縮小開始』に関する決意も予想される。

●4.米1月非農業部門雇用者数46.7万人、予想12.5万人を上回る(フィスコ)

 1)米1月失業率4.0%、予想3.9%・12月3.9%よりは少し悪化   

 2)平均時給は前年比+5.7%、予想+5.2%・12月+4.9%より上昇

●5.米10年国債利回り+1.9%台と、予想以上の伸び(フィスコ)

 1)米10年債の利回りは一時+1.95%まで上昇し、2016年1/29以来の高水準となった。

●6.為替市場では、ドル高・円安に 2/3 114.53円⇒2/4 115.20円(フィスコ)

●7.米下院は半導体産業に520億ドル(約6兆円)投じ、供給網安定化法案を可決(朝日新聞より抜粋

 1)半導体分野に520億ドルを投じ、米国内の製造能力を高めたり、研究開発を促す。

 2)米インテルや台湾TMSCなど世界の大手が米国内での大型投資を発表しており、法案が成立すれば、こうした動きを資金面で後押しすることになる。

 3)米国企業による国外投資や製造拠点を審査する規定も設け、米連邦政府による統制を強める。

 4)米国でかつて主流だった市場競争を重視する流れが後退し、政府主導の産業政策を正面から掲げていく点が特徴だ。

 5)さらに、公衆衛生や情報通信、エネルギーなどの分野で、米商務省が指定する戦略的な重要政策について、国内での供給網づくりなどに450億ドル(約5.2兆円)を充てる。

 6)なお、同様な法案は上院でも可決済だが、上下両院での相違点の調整が今後必要となるため法案としての最終決定には至っていない。

●8.ビットコイン、3カ月振りに4万ドルを突破、リスク志向に戻る(ブルームバーグ)

●9.英イングランド銀行(中央銀行)、インフレ抑制のため利上げ0.25%⇒0.50%(毎日新聞)

 1)金融政策を転換し、利上げと量的緩和の縮小も併せて進める。

 2)12月の消費者物価指数(CPI)は前年同期比+5.4%と、目標+2%を大きく上回った。上昇率は1992年以来、30年ぶりの高水準。

 3)CPIは4月までに7.25%まで上昇する可能性があると予測した。

●10.主要中央銀行、今後1年で2.2兆ドル(約253兆円)引き締め、史上最大縮小(ロイターより抜粋

 1)米金融大手モルガンSは2/4、世界の主要中央銀行が「史上最大の量的引き締め(QT)」に乗り出すとみており、今後12カ月間に2兆2,000億ドル相当の金融支援が消えるとの推計を発表した。

 2)世界的なインフレ上昇に伴って、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日本銀行、英イングランド銀行(英中央銀行)の新型コロナのパンデミック(世界的流行)で導入した金融支援策の縮小を迫られている。

 3)FRBは2022年に政策金利を5回引上げる見通しで、これは2005~2006年以降で最速ペースとなる。英中銀は、3カ月ぶりとなる2回目の利上げを今週決めたた。ECBも、10年ぶりの利上げに踏み切るとの観測が強まっている。

 4)モルガンスタンレーは、「主要4カ国(G4)の中央銀行のバランスシートは、5月にピークを迎える」と予想している。

 5)予想している2兆2,000億ドル相当の金融支援削減は、2018年に支援削減した5,000億ドルの4.5倍に当たるとした。

 6)ECBのバランスシートは、2022年5月⇒2023年5月にかけて、実際にはFRBよりも早く縮小すると予測している。

 7)ECBがユーロ圏の銀行向けに実施している超低金利で無制限の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)による流動性が減るからだ、との見解を示した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/03、04、春節のため休場

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/03、日経平均▲292円安、27,241円(日経新聞より抜粋
  ・前日までの4営業日で日経平均は+1,300円を超える上昇の後とあって、幅広い銘柄に戻り待ちの売りが出た。
  ・前日に大きく上げたグロース(成長)株の一部が売られ、日経平均を押し下げた。値嵩株の半導体関連銘柄の下げも目立った。
  ・決算発表後に売られる銘柄もあり、エムスリー▲9%強安、ソニー▲6%強下げた。川崎汽船▲13.6%安、三菱商事・伊藤忠も下落したが、下値は限定的だった。
  ・米金融政策やインフレ動向をにらみ、変動が大きくなるとの警戒感は根強い。
  ・相対的に変動率が低い銘柄やディフェンシブ銘柄の一部に買いが入った。

 2)2/04、日経平均+198円高、27,439円(日経新聞より抜粋
  ・午前は、欧州中央銀行(ECB)など主要中央銀行が金融引き締めに向かうとの観測から売り優勢となる場面があるなど、一進一退で方向感を欠いた。
  ・午後にはアマゾンが取引時間外で急伸したのを受け、半導体関連の値嵩株やグロース(成長)株が強含んで相場全体を押し上げた。
  ・決算発表が相次ぎ、決算を材料に個別銘柄の売買が盛んになった。好決算を発表した銘柄や割安感のある銘柄への押し目買いが相場を下支えした。
  ・買戻しも入って後場、上げ幅を広げた。
  ・政府が早ければ来週にも新型コロナの水際対策の緩和措置に関する方針を示すと伝わり、空運株や鉄道株に買いが入った。

●2.日本株は「節分天井」になるか? 

 1)2/4の日経平均は、朝方のマイナスから引けにかけて+198円高になったのは、米アマゾンが好決算で米国での時間外取引で上昇し、米株先物が上がったことに日経平均が連れ高で反応したためで、日本サイドの材料で買われたわけではない。

 2)外資系先物手口からは、外資系が日本株を買い仕掛けるとは思えない展開
  ・外資系先物の買残高推移(単位:枚数)
     9/08  12/03  1/13  2/03  2/04
    170,718 88,163 120,948 88,775 92,619
  ・外資系先物手口は、1/28以降に売りに転じ、買いポジション残高は昨年12/3に記録した最低の88,163枚に、2/3並んだ。外資系合計では、本格的な買い現象は起きていない。むしろ、国内系が主体となった相場展開だったといえそうだ。だとすると、外資系の本格参入が期待できない相場はリスクが膨らみそうだ。
  ・野村の手口が、反比例して日経平均の上昇・下落を主導
   懸念:野村は売り越し残枚数で筆頭。
   しかし、売り残が減少(買戻し)傾向にあり、相反して日経平均は下落している。従って、野村の先物買戻しが続く方向にある限り、日経平均は下げ止まらないと思われる。
  ・外資系先物手口からは、外資系の日本株買い仕掛けは期待できない。例えば、Cスイスは、日本株投資資金を他のアジア諸国に資金シフトするとの報道があった。Cスイスは先物買残が、Cスイスとしては大きいため、買いポジション解消に注視したい。

 3)日経平均とNYダウとの株価水準の位置は、日経平均の上昇率の高さとその後の下落の低さで「スクエア」に戻り、日経平均の割安感ははぼ解消した。
    上昇幅に対する下落率
          1/27    2/2   上昇幅    2/4  2/2比 
    NYダウ  34,160ドル 35,629 +1,469 +4.3% 35,063 ▲566 ▲38.5%
    日経平均  26,170円  27,753 +1,583 +6.0  27,439 ▲314 ▲19.8%
 
 4)2/7からの週から反落すると予想される懸念材料
  ・騰落レシオ(6日ベース) 2/4で買われ過ぎの216.03を示し、反落を示唆。
  ・ストキャスティクスのFASTが87、SLOWが75と高水準で、売り圧力の高まり。
  ・決算発表で見通しを上方修正ながらも、売り先行したソニーの株価が示唆する相場の流れ。

●3.日本の長期金利が一時0.2%に6年ぶりに上昇(共同通信)

 1)2/4の国債市場で、長期金利の指標である10年債(表面利率0.1%)の利回りが一時0.2%まで上昇した。

 2)取引時間中としては、日銀がマイナス金利政策の導入を決めた2016年1/29以来の約6年ぶりの高水準。

●4.日本の中国への依存度が高い輸入品目数の23%、米独よりもリスク高い(時事通信)

●5.企業動向

 1)日清食品  カップヌードルなどの商品を最大12%値上げ、6/1から(ITmedia)
 2)ソニー   3月期営業利益1兆4,000億円、前期比+25.6%増、過去最高(時事通信)
 3)エーザイ  アルツハイマー新薬を年度内に日本・欧州に承認申請(時事通信)
 4)西武    ホテルなど30施設を1,500億円で売却へ(共同通信)
 5)東芝D&S  石川県の工場に300ミリウエハー対応のパワー半導体生産に
        1,000億円投資、生産能力を2021年度比2.5倍に(電波新聞)

●6.企業業績

 1)豊田通商  3月通期純利益+2,100億円、前期比+56.1%増(日経新聞)
 2)日立    4~12月期純利益+4,507億円、前年同期比+46%増(日経新聞)
        通期見通しは+5,500億円に据え置き、原材料高に不安
 3)丸紅    3月通期純利益+4,000億円、前期比+79%増、予想+3,500(ロイター)
 4)日本製鉄  3月通期純利益+5,200億円、前期▲324億円赤字(ロイター)
 5)任天堂   3月通期純利益+3,500⇒4,000億円上昇修正(日経新聞)
 6)メルカリ  10~12月期営業損益▲26億円赤字(前年同期+10億円黒字)(日経新聞)
 7)花王    12月通期純利益+1,096億円黒字、前期比▲13.1%減(WWD)
 8)豊田自動織機 4~12月期営業利益+1,362億円、前年同期比+72.2%増(レスポンス)
            欧州向けフォークリフト販売が好調
 9)大手3商社      3月通年(予想) 4~12月期 前年同期比 (単位:億円)
           三井物産 8,400 (7,200)  6,332   3.2倍
           伊藤忠  8,200 (7,500)  6,788   1.9
           三菱商事 8,200 (7,400)  6,449   3.8
 10)中国電力  3月通期純損益▲370億円で最大の赤字、原油高騰のため(RCC中国放送)
 11)メルカリ  7~12月期最終赤字▲27.3億円(前年同期+41.1億円黒字)(ITmedia)
           

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2175 エス・エム・エス 業績堅調 
 ・2726 パル       業績好調
 ・2685 アダストリア   業績好調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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