相場展望12月13日 岸田首相に望む『外国人投資家が日本に戻る、 魅力ある本当の成長戦略の提言・実行』を 今年最後の米FOMCに注目

2021年12月13日 08:14

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/09、NYダウ±0ドル、35,754ドル(日経新聞より抜粋
  ・上げ相場を牽引してきた景気敏感株やハイテク株の一角が利益確定売りに押され、反面、ディフェンシブ株が上昇して指数を下支え、NYダウは前日と変わらず。
  ・11月米消費者物価指数(CPI)発表を12/10に控え、買い手控えられた面もある。CPIの伸びがさらに加速するとみられ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ前倒し観測につながる可能性が警戒された。
  ・航空機のボーイング・化学のダウなど景気敏感株と電気自動車のテスラ、エヌビディアが売られ、外食のマクドナルド、医療保険のユナイテッドヘルスが買われた。

【前回は】相場展望12月9日 金融正常化問題忘れ、新型変異株の懸念後退だけで株価全値戻し(米SP500)(日本株は半値戻し)

 2)12/10、NYダウ+216ドル高、35,970ドル(a href="https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN00001_R11C21A2000000/" target="_blank">日経新聞より抜粋)
  ・11月消費者物価指数(CPI)の+6.8%の大幅上昇はほぼ想定内と受け止められた。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ前倒し観測を一段と強めるものではないとみなされ、インフレ加速を警戒した売りが強まらず、買いが優勢となった。
  ・長期金利が低下し、相対的に割高感が和らいだハイテク株への買いが目立った。
  ・SP500は4,712と、11/18以来となる過去最高値を更新した。
  ・ソフトウェアのマイクロソフト、オラクル、スマートフォンのアップル、日用品のP&G、飲料のコカ・コーラ、ウォルマート、機械のハネウェルが買われた。

●2.今年最後のFOMCに注目

 1)米連邦公開市場委員会(FOMC)は、12/14~15に開催される。その会合では、インフレ抑制で(1)テーパリング(金融緩和の縮小)の加速 (2)利上げ について議論すると見られている。

 2)株式・債券・為替市場にとって影響がある可能性が高いため、注目したい。

 3)パウエルFRB議長は、市場に対してかなり気を使うので、サプライズな内容であっても市場には優しい伝え方をすると思われる。
  (1)テーパリングの加速決定でも、供給資金量を細めるだけであり、過剰マネーに変化はない。
  (2)利上げは、金利先物市場では来年2~3回予想されており、相当部分が織り込み済みと受け止められる可能性がある。
  (3)注目したいのはFOMCを受けて、長短金利差の縮小・拡大の動向である。

●3.2022年の世界経済に『停滞』リスク、野村が指摘(ブルームバーグ

 1)2022年後半までに世界経済が直面するリスクは、スタグフレーションではなく、『停滞』(スタグネーション)の可能性があると、野村HDが指摘した。

 2)コストの上昇に起因して起こる「インフレ」が、まだ弱い内需に打撃を与える。加えて、財政・金融政策の引き締めが、逆風になると分析した。

 3)ただ、米国経済だけは、「十分に強い需要」を回復し、コスト主導のインフレを吸収するクッションが大きい。

●4.米・11月消費者物価指数(CPI)、前年同月比+6.8%、1982年以来で最大(フィスコ)

 1)10月の+6.2%から予想通り拡大したが、市場では「織り込み済み」。

 2)変動の激しい燃料や食料を除いたコアCPIは+4.9%、1991年以降で最大となった。

●5.米新規失業保険申請件数18.4万件、予想22万件を下回り、52年ぶり低水準(ロイター)

 1)深刻な労働力不足の中、労働市場は引き続き逼迫している。

●6.米上院、債務上限引上げ関連法案を可決、デフォルト回避に一歩前進(ロイター)

●7.バイデン大統領、インフレは「今がピーク」、今後急速に鈍化へ(ブルームバーグより抜粋

 1)11月消費者物価指数が前年同月比+6.8%と約40年ぶり大きな伸びに対しての発言。
 
 2)「ピーク」の説明理由 
  (1)物価上昇の半分は、自動車やエネルギーのコストであり、下がり始めた。
  (2)サプライチェーンの問題も、今後数週間に更なる進展を見込んでいる。

●8.米司法省、ヘッジファンドの空売りに対する捜査開始(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/09、上海総合+42高、3,637(亜州リサーチ)
  ・中国経済対策への期待感が持続する流れとなった。
  ・中国人民銀行は預金準備率を0.5%引き下げ、銀行貸し出し指標となる最優遇貸出金利も引き下げられるとの見方が広がった。
  ・中国不動産大手の恒大集団のデフォルト(債務不履行)問題が不安視された。
  ・業種別では、ITハイテクの上げが目立ち、反面、不動産の一角が冴えなかった。

 2)12/10、上海総合▲6安、3,666(亜州リサーチ)
  ・中国景気の鈍化懸念が改めた意識される流れとなったが、売り込まれてなかった。
  ・11月金融統計では、人民元建て新規融資と通貨供給量M2が、予想を下回った。
  ・中国不動産業を巡る懸念も重石となった。格付大手のフィッチは12/9、中国恒大と佳兆業の格付を部分的デフォルトに認定したと発表(「部分的デフォルト」とは、清算型倒産手続きが開始されず、事業停止にもなっていない状態を指す)
  ・業種別では、不動産が売られ、再生可能エネルギー関連が物色された。

●2.中国11月生産者物価指数(PPI)は前年同月比+12.9%上昇(新華社)

●3.格付会社フィッチは12/9、中国恒大と2子会社「部分的デフォルト」に格下げ(ロイター)

●4.中国11月新車販売台数が前年同月比7カ月連続マイナス、半導体不足などが影響(NHK)

 1)11月新車販売台数は252.2万台で、昨年の同じ月を▲9.1%下回った。

 2)トヨタ▲3.1%、ホンダ▲20.2%、日産▲27%、マツダ▲21.2%

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/09、日経平均▲135円安、28,725円(日経新聞より抜粋
  ・前日までの3日間で日経平均は+900円超上昇し、(1)短期的な過熱感から利益確定売り、(2)心理的節目29,000円接近で戻り待ちの売り、(3)米先物の軟調で売られた。
  ・ソフトバンクG、空運、レーザーテクが買われ、一方、海運、東エレクが下げた。

 2)12/10、日経平均▲287円安、28,437円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテク株安の流れを受け、東京市場でもハイテクを中心に売り先行。
  ・米11月消費者物価指数(CPI)発表を見極めたいと、投資家が売りを膨らました。
  ・岸田首相が意欲を持つ金融所得課税を税制改正大綱に明記と伝わり、水を差した。
  ・東京エレク・アドテストなど半導体関連は下落、ダイキン・安川電は買われた。

●2.最近の日本株は、超短期筋の売り・買い仕掛けで振らされる展開が目に付く

 1)外資系は「オミクロン株」をイベント化して売り仕掛けして日経平均の下落を演じた。
   日経平均  11/16 29,808円 ⇒ 12/02 27,753円 ▲2,055円安・▲6.9%

 2)今度は、先物清算(SQ)(12/10)を睨んで、外資が抱える損失回避を狙い買い仕掛け。
   日経平均  12/02 27,753円 ⇒ 12/08 28,860円 +1,107円高・+4.0%

 3)SQ乗り切りが見えたら、ドテンの売り転換。
   日経平均  12/08 28,860円 ⇒ 12/10 28,437円 ▲ 423円安・▲1.5%

●3.岸田首相に望む、『海外投資家が日本に戻る、魅力ある本当の成長戦略の提言と実行』を

 1)安倍首相登場時には「アベノミクス」という経済成長シナリオがあった。
  ・海外投資家は、「アベノミクス」に日本の成長を信じて15兆円超もの資金を短期間で世界から集めて日本株投資に賭けた。
       2012年12月25日   2018年10月2日
    日経平均   10,080円   ⇒   24,270円  241%上昇
    NYダウ   13,114ドル  ⇒   26,773ドル  204%上昇

  ・アベノミクスは(1)大胆な金融緩和(2)機動的な財政出動(3)規制緩和による構造改革の「3本の矢」だった。安倍時代の実績は(1)であり、(2)(3)は看板倒れとなり、海外投資家は「期待外れ」ということで買った日本株を売却し、日本に投じた資金のほぼ全額引上げてしまった。

  ・安倍首相の政策は、日銀頼みだけとなり、政権が実行したのは農協改革などに過ぎず大上段から構えた「規制緩和⇒成長力の高進」につなぐことが出来なかった。景気後退を招いた大きな要因は、消費税率を5⇒8⇒10%と2度も引上げたことだ。アベノミックスは失敗ではなく、効果が期待値よりも小さかっただけである。つまり、アベノミクスというアクセルを踏みながら、消費税というブレーキを同時に踏んだことで、日本の景気低迷へと舵を切ってしまったということだ。

  ・安倍首相は「外交攻勢」をかけ「TPP成立、クアッド提唱・推進」で成果を上げた。
    TPP:環太平洋パートナーショップ協定、 クアッド:Quad、日米豪印戦略対話

  ・しかし、海外投資家は「構造改革できず、日本の長期成長力に期待が出来ないため、企業業績の向上が期待値比べて成果が出ないと、見限って、日本株を売って⇒他の成長する国へと投資資金を移動させた。その結果が、日経平均の上昇率は世界主要94株価指数の中で低位に甘んじることになった理由である。
        2018年10月2日  2020年1月20日
  日経平均    24,270円     24,083     ▲187円安

 2)岸田首相「聞く力」⇒「聞いていただけ」かも、必要なのは『聞く力⇒構想力⇒実行力』
  A.岸田首相動向と日経平均の推移
             8/26      9/29    10/04   12/10
   ・動向     総裁選出馬表明 自民党総裁選 首相選任  直近時点
    日経平均    27,742円    29,544    28,444   28,437
    外資先物買残  141,246枚    118,909   100,058   107,367
   ・出馬表明から総裁選までは、日経平均は+1,802円高と期待感で盛り上がりを見せたが、それ以降は▲1,100円下落し、横這い、市場の期待感は強くない感じ。
   ・外国人投資家先物手口では、自民党総裁選挙出馬表明から売り、最近は様子見。
   ・海外投資家は、現時点では、岸田政権を『買い』とは見ていないようだ。

   B.岸田首相の自民党総裁選期間中の発言内容を軸に考察 
   ・岸田首相は昨年9月に菅・前首相と自民党総裁のイスを巡って闘い、敗れた。結果、政権・自民党主要ポストから離れ、1年間「聞く力」を養ったという。その期間、聞いた声を「ノートに記載した」そうである。
   ・問題は「聞いた声」をどのように咀嚼し「次の日本の成長のための構想と実行戦略    を練って」、満を持して総裁選に立候補しかたか、とういうことではないか。
   ・総裁の座を射止めるための提言は、(1)所得倍増(2)新資本主義(3)金融所得課税強化。 
   ・首相が属する宏池会の先輩・池田隼人・元首相は「所得倍増を唱えたが、それを可能にしたのは日本経済の高度成長が基盤にあった」からだ。「高成長で企業業績が急上昇するから、分配能力が高まり、所得倍増を可能にした」のである。
   ・だが、首相は「法人税の優遇措置⇒税の軽減で給料増⇒消費活発化⇒経済成長」という論理である。この論理では、日本成長戦略とは言えないし、外国人投資家は日本株を買えない。

  C.日本の中小企業の多くは赤字で、法人税は支払っていない。
   ・赤字企業は法人税軽減措置は受けられないため、赤字企業で働く人はこの優遇措置の恩恵を享受できないため、大企業と比較的して低い給料は据え置きとなる。利益を計上できる大手企業の社員にとっては給与増の恩恵を受けられるため、企業規模別の所得格差がますます拡大し、不公平感が増すことになる。
   ・赤字企業に勤めたのが「不運だと思え」というのだろうか。
   ・この施策は、富裕層と貧困層の格差の拡大を招く可能性が高い。それとも、岸田首相は、赤字企業で働く従業員に対して、税金から別途支給をするのであろうか? 言及はない。
   ・賃金増を得られない国民に対して、どのような救済策を取るのか、現時点では不明。
   ・加えて、この「法人税の優遇措置」は、単年度? 継続するのか?も判然としない。.
・企業にとっては、給与増だけの負担では済まない。給与増に加えて、賞与・退職金・会社負担の社会保険料などの増加にもつながる。会社側は負担軽減策として、これら2次負担の回避策として「第2基本給や別手当」といった給与体系の変更を講じてくる可能性もある。
   ・単純に『法人税の優遇措置だけでは、給料増となり得ない』問題がある。これでは、企業側も簡単に給与増に舵を切り難い。

  D.岸田首相が(1)所得倍増を唱える中で、
   ・任命した経済閣僚が「所得倍増とは、所得2倍ということではない」と変な日本語で首相方針に否定的な発言をした。首相が閣僚を叱責して、発言訂正させるかと思いきや、放置した。財務大臣も首相発言に反する言及をしたが、お咎めなしである。国民が、岸田首相を見る眼に変化を与えた可能性がある。
   ・岸田政権は、指揮に問題があり一枚岩となれず、早々に足並みが乱れている。

  E.「成長なくして、所得倍増なし」と批判されると、突然、「成長が前提」だと言った。
   ・では、最大となる来年度予算案の中に、どれだけの「成長予算」を織り込んだのか?補正予算案は、一過性の支出案が殆どで、経済の持続的成長に資する案・金額ともに貧弱である。
   ・その典型的なのは、子供給付10万円である。子供政策は長期にわたるべきであるにもかかわらず、1回ぽっきりの策でしかない。他の与党の選挙公約に押し切られ受け入れた政策といってもよく、来年の参議院選挙対策として国民の税金を与党に有利なようにばら撒く、としか見えない。
   ・要するに、日本の長期成長・全国民に目を配った目線で、税金の歳出を願いたい。

  F.(2)「新資本主義」を唱えたが、諮問会議を新設しただけで、『概念の説明も聞こえない』。
   ・「概念の定義」含めて丸投げするというスタンスでは、真意も意欲も伝わらない。    
   ・案の定、諮問会議は3回ばかり開催したが、『概念の提示もない』ためダッチロールして、早くも会議が混乱しているようだ。

  G.(3)金融所得課税も、株式売却益課税率の引上げということだろうが、自民党総裁選の最中に批判されて突っ込まれると、引っ込めてしまった。しかし、自民党の税制改正大綱には織り込んだとの報道がある。
   ・このようにみると、立憲民主党など野党の主張との違いが分からなくなる。『自民党⇒社会民主党的への転向』か? とも思わせる。自民党が思いっきり左ウイングに傾いた姿に映る。

  H.岸田首相は、自民党総裁選での勝利が最終目標で、党内の多数派形成による勝利で燃焼してしまったのか?
   ・首相になってからのことは『深く考えていなかった』のではないかとさえ思える。
   ・立憲民主党の新代表は、党首選で闘った3人を重要ポストで処遇した。岸田首相は、対抗馬に対し、冷や飯人事・ポストでは遇しても意思決定メンバーに加えない・抑え込む人を周辺に配置して仕事をさせない、と報復人事をしたように見える。子供担当の野田大臣、高市・自民党政調会長は、関連事項に関して何か発信したのだろうか、聞こえてこない。

  I.これでは海外投資家は日本株から逃げていくばかりである。 『海外投資家が日本に戻ってくる、「魅力ある本当の戦略的成長を提言・実行」と映る構想力・達成力』を期待したい。

●4.11月企業物価指数は+9.0%上昇、35年11カ月ぶりの高さ、要因は原材料価格高騰(NHK)

 1)国際的な原油価格の上昇を背景に、ガソリン・電気・都市ガスなどが値上がりした。鉄鋼・食料品など指数を構成する744品目の6割に当たる453品目が上昇した。

●5.企業動向

 1)日立    英高速鉄道3,000億円を受注、仏アルストム社と共同で(時事通信)
 2)東洋エンジ 軽油水素化精製装置新設をインド石油会社から受注(NNA)
 3)JR東日本  首都圏在来線を値上げへ、バリアフリー推進のため(読売新聞)
 4)JAL    客室乗務員新規採用再開へ、11月黒字化(産経新聞)
 5)日立    日立物流の売却含め検討、1,750億円規模(ブルームバーグ)
 6)SBI     新生銀行の保有比率47.77%、12/17に連結子会社化(読売新聞)

●6.企業業績

 1)ラクスル  8~10月最終赤字▲1.41億円(前年同期+0.42億円黒字)(日経新聞)

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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