相場展望3月22日号 米FRBの『金利上昇を招く決定』でダウ下落、日銀『ETFショック』、日経平均2重苦で大幅下落

2021年3月22日 08:05

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/18、NYダウ▲153ドル安、32,862ドル(日経新聞)
  ・追加経済対策と米連邦準備制度理事会(FRB)のゼロ金利政策の継続で米景気回復が加速するとの見方が強まり、金融株など景気敏感株が買われNYダウは一時上昇。
  ・一方、長期金利上昇が重荷となり、割高感が意識されるハイテク株が大きく売られた。
  ・その後、新型コロナ感染拡大で欧州経済が減速するとの警戒感から原油先物が急落、石油株が▲8.19%の大幅安となり、NYダウもマイナスに転じた。

【前回は】場展望3月18日号 3/18、パウエルFRB議長、FOMC後の発言に注目 バイデン政権の次の目玉政策は『インフラ投資』

 2)3/19、NYダウ▲234ドル安、32,627ドル(ロイター)
  ・フランスは感染第3波を受け、パリと近郊に対し都市封鎖を発表、原油価格も下落。
  ・FRBの銀行への優遇措置終了決定に伴い、米10年債利回りは1.75%を上回り、14カ月ぶりの高水準をつけた。NYダウは下落、ナスダックは前日の急落の反動高で持ち直した。

●2.パウエルFRB議長の『矛盾に満ちた発言と決定』で金利急上昇し、市場に混乱をもたらした

 1)矛盾したFRBの決定『コロナで金融市場混乱回避の優遇措置を3月末で終了決定』
  (1)米連邦準備制度理事会(FRB)は3/19に、パンデミック対策の一環として昨年4月に講じた、米大手銀行に対する自己資本規制の特例的な優遇措置を3月末終了と発表。

  (2)この優遇措置は、新型コロナの感染拡大で金融市場が混乱したことを受け、対策として大手銀行に米国債購入を促進するために、購入分を銀行の自己資本規制から除外するというもの。

  (3)優遇措置の終了決定の結果、銀行は自己資本規制から逃れるため、コロナ禍で保有を増やした約21兆ドルもの大量の米国債売却を強いられることになる。それを見越して、国債価格は下落し、10年国債利回りは1.75%まで上昇した。(フィスコより抜粋

  (4)FRBの優遇措置3月末終了の決定は、結果的に『金利上昇を招く』ものであり、低金利政策継続とは矛盾しており真逆の決定をしたことになる。3/17の、パウエルFRB議長発言「コロナ対策として雇用増と失業率改善のため、数年にわたり政策金利をゼロ付近に維持する」方針を出したばかりである。このように政策の一貫性に欠けた方針展開では、金融市場の混乱は増すばかりだ。

  (5)FRB決定の結果、3/19の市場では金利上昇し、NYダウ▲234ドルの下落を招いた。

●3.株式市場は夢見る『楽観論』vs債券市場は冷静な『悲観論』と対立、軍配は「債券」?

 1)3/18、米10年国債利回りは1.712%と前日比+4.31%高、一時1.75%まで急伸した。株価は、前日比、NYダウ▲0.46%、ナスダック総合▲3.02%、SP500▲1.48%下落した。SOX半導体株指数にいたっては▲4.24%と急落した。

 2)SP500の配当率は1.5%程度であり、10年長期金利がそれを超えて1.7%台と上昇したことから、債券市場から株式市場に流入していた資金が、再び債券市場に還流する恐れがでてきた。従前から、資金還流の分岐点は『長期金利1.75%』と言われてきた。3/18に一時とは言え、その1.75%にタッチした

 3)そうなると、株式相場は
  (1)債券シフトで株式は売られ、加えて
  (2)債券損失の補填のため含み益がある株式がさらに売られるという、
  2重苦に陥りやすくなる。
  3/18の米10年国債利回りが一時1.75%まで上昇後に、翌日1.689%まで一時的に低下したのは、債券買い(金利低下)を反映した可能性が高く、株式、特にハイテク株から債券に資金シフトが始まったサインかもしれない。

 4)金利急伸のきっかけは、
  (1)パウエルFRB議長発言『雇用重視で経済成長を図り、低金利は継続』(3/17)と、
  (2)3/19のFRBの『米大手銀行に対する自己資本優遇措置終了決定』にあると思われる。

  パウエル発言効果として3/17は「経済成長加速と低金利継続」を好感したがNYダウ+189ドルと思いのほか僅かな上昇にとどまった。このことは、市場が『金利は上昇する』と見抜いたからだと受け止めざるを得ない。FRBは米経済成長率予想を4.2%⇒6.5%に大幅上方修正をしながら、金利上昇が低金利政策の許容範囲に納まるというパウエル発言自体が論理矛盾した独りよがりの内容だ。そのように市場から評価された結果が、米10年国債利回りの上昇だったと考えられる。

 5)長期金利(米10年国債利回り)は当面2%を見据えて上昇するものと見ている。また、FRBはゼロ金利の継続を示すも、市場はインフレ加速に伴い市場金利が上昇すると見て、『FRBの金融引き締めが早まる』と観測していることが窺える。したがって、資金が株式市場から債券市場への戻りが始まった初期段階にあると思われる。

●4.パウエルFRB議長の3/17発言とその後の株式市場の反応

 1)3/17の市場の反応は『好感』
  (1)パウエルFRB議長の発言要旨
   ・市場では2023年度中に1回の利上げ予想を示すとの見方があったが、FRBはゼロ金利が続くとの予想を変えなかった。
   ・2021年の経済成長見通しを+6.5%と、昨年12月の予想+4.2%から大幅に上方修正し力強く景気回復すると述べた。
 
  (2)株式市場3/17は、パウエル発言を好感し3指数ともに上昇した。
   ・金融緩和と追加経済対策の両輪で景気回復が加速するとの見方から景気敏感株が買われた。
   ・ゼロ金利政策の長期化を好感し、ハイテクなど高PER銘柄にも買いが入った。

 2)3/18~19の市場の反応は『金利上昇で株式相場に懸念が生じた』として、下落。
  (1)3/18はNYダウ▲153ドル安、ナスダック総合▲409安
  (2)3/19のNYダウ▲234ドル安、ナスダック総合+99前日の反動高

●5.米FRB、ゼロ金利政策と量的緩和の維持を決めた(共同通信)

●6.米国債利回り上昇、次々と節目を突破、インフレ観測が急速に高まる(ブルームバーグ)

●7.米FRBは債券市場を一時鎮静化させたが、利回り急上昇のリスク残る(ロイターより抜粋

 1)この先、米経済が回復し、インフレ率が上昇すると見られるなかで、長期金利がいつまで抑制されるかという疑問が残る。

●8.債券トレーダーは、インフレ加速の観測を強める(ブルームバーグより抜粋

 1)米連邦公開市場委員会(FOMC)が3/17に、2023年末まで低金利を続けるとの決定を受け、債券トレーダーは「経済成長とインフレの加速を見込んだ取引」を強化した。

 2)パウエルFRB議長は「現行の金融政策は適切であり、国債利回りの上昇は一時的であり追い返す理由はない」と最近の金利上昇を抑制する考えがないことを示した。

 3)インフレ期待の指標は2013年以来の高水準に現在はなっている。

●9.ドル下落、FOMCを受け早期利上げ観測後退で(ロイター)

●10.投資家の最大リスクに『インフレ』が再浮上、コロナ危機は後退(Forbesより抜粋

 1)米銀バンク・オブ・アメリカが、世界のファンドマネジャー200人を対象とした最新調査の結果、最も懸念するリスクの上位は下記の通り。
  1位 インフレの加速
  2位 長期金利の急騰

 2)ウォール街での見方は、
  (1)数兆ドル規模の新型コロナ経済対策に後押しされて、経済が回復に向かう。
  (2)一方、巨額の財政出動による債務の膨張や急激なインフレを巡る懸念に拍車が掛かっている。

 3)米オアンダは3/15のリポートで、
  (1)パウエルは、「インフレが加速する可能性のある夏場までは、懸念を抑えることが出来るとの見方を示した」と述べた。

●11.米先週分新規失業保険申請件数は77万件と、予想70万件・前回71万件から悪化(フィスコ)

●12.企業動向

 1)アップル  新型iPad発表へ、巣ごもり需要で売上好調(ブルームバーグ)

●13.企業業績

 1)フェデックス 12~2月決算純利益は前年比+2.5倍。通販向けと料金値上げ(ロイター) 

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)3/18、上海総合指数+17高、3,463
  ・中国景気の先行き楽観が改めて意識された。(亜州リサーチ)
  ・ただ、米アラスカでの米中会談に関する警戒感が高まり、全体として上値は重い。

 2)3/19、上海総合指数▲58安、3,404
  ・米中関係の悪化が警戒される流れ。(亜州リサーチ)
   米中会談は冒頭から非難の応酬が1時間以上続いたという。
  ・中国国内に相場を動かす新規材料が見当たらないだけに協議の行方が注視された。
  ・銀行・保険が全面安、消費関連株も下げが目立つ。

●2.中国軍が、テスラ車の中国軍施設や中国軍が暮らす住宅への乗り入れ禁止(ブルームバーグ)

 1)テスラ車に車載した多方向の視界を確保できるカメラと、超音波センサーは位置情報を明るみに出し、機密情報が収集されているとの懸念が理由。

■III.日本株式市

●1.日経平均の推移

 1)3/18、日経平均+302円高、30,216円
  ・米FOMCで2023年末までゼロ金利政策を維持するとの緩和の長期化を好感し、米長期金利が上げ止まった。
  ・NYダウの上昇を受け、日経平均も主力銘柄が幅広く買われた。
  ・一方、日銀が一定の金利上昇を容認するとの報道が、株価の重荷になった。

 2)3/19、日経平均▲424円安、29,792円
  ・米長期金利の上昇を受けて、ナスダック総合と半導体株指数が急落したため、東京市場では半導体関連株を中心に売られた。
  ・日銀の上場投資信託(ETF)購入は、日経平均連動型ETFは除外し、TOPIX型に限定すると、後場になって伝えられた。結果、日経平均株価の寄与率の高い値嵩株が売られ、日経平均は大きく下落した。逆に、TOPIX銘柄含め幅広く買われた。

●2.日銀のETF購入方針の変更と影響

 1)3/19後場に、日銀の金融政策に関する検討結果が公表され、日銀の上場投資信託(ETF)購入方針の変更が伝えられた。内容は、(1)日経平均連動型ETFの購入を除外し、(2)TOPIX連動型ETFの購入に一本化するというものだった。

 2)結果、日経平均株価の寄与率の高い値嵩株が大きく売られ、日経平均は大幅下落した。日経平均株価は▲424円安したが、値嵩株5銘柄の値下がり寄与額が▲352.7円と値下がり額の83%を占めた。
  値下がり上位5銘柄:ファーストリテイ、ソフトバンクG、東京エレク、ファナック、エムスリー。

 3)一方、TOPIX関連銘柄が買われ、TOPIX指数は+3.70高となった。その結果、東証1部の値上がり銘柄数は1,491、値下がり623と、値上がり銘柄数が優勢となった。

●3.3/19日経平均と今後

 1)現況
  (1)外資系短期筋の先物手口と日経平均の推移
   ・日経平均の買い仕掛けは国内勢で、外資系は先物では売り越し基調に転換している。3/4以降からの外国人の先物売りに対し、国内勢が買い支えする構図になったが、特に3/19は目立つ展開となった。
    ⇒ 経験則では、国内勢主導の株価上昇は長続きしない。
               3/15   3/16   3/17   3/18  3/19
     日経平均     + 49  +154  ▲ 6   +303  ▲424円
     TOPIX       + 17  + 12 + 2   + 24 +  3ポイント
     外資系先物売買  ▲1,998 +3,533 ▲ 461   +118 ▲6,452枚数
      (注:+は買い越し、▲は売り越し)

  (2)3/19の日経平均は大きく下落したが、要因は外国人主導による日経平均寄与度が高い僅かな銘柄数の値嵩株に、集中的な売りが仕掛けられたことにある。
   ・大勢はコロナ緊急事態宣言終了による経済正常化期待で、全体的に買われた結果、TOPIXは+3高の2,012と高値更新した。
    値上がり銘柄数 : 1,491、値下がり623
    年初来高値銘柄数:  255、安値0

   ・以上のように、3/19の相場は、日経平均のみの大幅下落となったのが目立った。

   ・米金利上昇に加え、日銀が上場投資信託(ETF)買入対象を、東証株価指数(TOPIX)に限ると決めたことも、日経平均指数と他の指数との明暗を分ける要因となった。

 2)外資系短期筋の動向
  (1)外資系短期筋は今まで、値嵩株を軸に日経平均を上下させることで、株式相場を思うままに操縦してきた。
  (2)今回の日銀のETF購入変更で、外資系短期筋は従来の相場操縦方法が封印され、運用手法を土台から変更を迫られることになった。
  (3)外資系短期筋は、態勢立て直しのため、今まで買い込んできた値嵩株のポジション調整を進めると思われる。その号砲は、日銀から3/19午後に撃たれた。したがって、そのポジション調整が終わるまで、日経平均はボラティリティが高いと予想する。

 3)日経平均は2重苦を抱えた
  (1)米長期金利の高騰による米株式市場の混迷。
  (2)日銀ETF購入手法の変更に対する、外資系短期筋の運用立て直しからの影響。

 4)3/22以降の日本株動向
   3/22は、日経平均の寄与度が高い値嵩株が売られ、下落から始まると思うが、
   (1)日経平均の寄与度の高い値嵩株の売りにとどまるのか。
   (2)幅広くTOPIX銘柄などに波及するのか。
   (3)米国・日本の国債利回りの上昇。
   も含めて、注目したい。

●4.日銀の動向など、思惑による振れを警戒(DZHフィナンシャル)

 1)黒田日銀総裁の理解しにくい3/19の会見内容への評価が様々な思惑を誘い、混乱につながるリスクには注意したい。

●5.企業業績

 1)日本旅行  2020年12月期通期決算の最終利益▲128億円の赤字(TRAICY)
         店舗半減へ(共同通信)

●6.企業動向

 1)三菱商事  豪州のボーキサイト鉱山の権益30%取得(時事通信)
 2)日本生命  地方銀行株250億円を売却へ、40銀行超(共同通信)
 3)ルネサス  茨城県の工場火災で自動車向け半導体供給に影響がでる恐れ(NHK)
 4)商船三井  液化CO2輸送参入で船舶管理会社「ラルビック」社を買収(LOGISTICS)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4686 ジャストシステム  好業績、株価反発期待。
 ・7747 朝日インテック   コロナ終息で手術増加期待。
 ・7730 マニー       同上。
 ・9519 エフオン      再生可能エネルギーで業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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