新しい水産養殖の実現へ リージョナルフィッシュがNTTや電通など6社と連携

2020年10月22日 16:58

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連携の概要。(画像:リージョナルフィッシュ発表資料より)

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 ゲノム編集技術を活かし水産物の「超高速品種改良」などを行っているリージョナルフィッシュは21日、NTT、NTT東日本、NTTドコモ、宇部興産、荏原製作所、電通の6社と連携協定を締結したことを発表した。品種改良からスマート養殖、ブランディングまでのバリューチェーンで各社の強みを活かし、次世代水産養殖システムの事業化を加速させる。まずは京都府と富山県の養殖場で、各社の技術提携の成果を検証する実証プロジェクトを開始、今後は全国展開を目指す。

■6社と連携したリージョナルフィッシュとは
 リージョナルフィッシュは、衰えつつある水産業の再興と、高まるタンパク質需要による世界の食料不足解消をミッションに掲げる、2019年創業のスタートアップ企業。水産物の「欠失型ゲノム編集」による品種改良と「スマート陸上養殖」をメインに取り組み、次世代水産養殖システムの実現を目指している。長年ゲノム編集に取り組んできた京都大学の研究者が、創業者の1人だ。

 欠失型ゲノム編集は、自然界に起こりうる遺伝子の切断を意図的に起こす技術で、遺伝子組み換えとは異なる。遺伝子が切断されると自然の回復力で自然変異が起き、品種改良につながる。欠失型ゲノム編集は起こしたい進化を担うDNAに狙いを定めて遺伝子切断を行うため、従来は30年ほどかかった品種改良を2~3年に縮められるという。イノシシから豚など、水産物以外では以前から食用の品種改良が進められてきたが、遅れている水産物の進化を早める狙いがある。

 スマート陸上養殖は、コストがかさみ維持が困難な陸上養殖を、最新技術を用いて低コストで生産性の高い事業にする技術。AI/IoTを活用して魚の状態や水温などを読み取り、自動または遠隔操作で給餌や清掃を行うシステムや、最適な飼育環境を維持できるろ過技術や水槽設計などの開発を行っている。

■実証プロジェクトの進め方
 事業化はオープンイノベーションの手法で進められ、今回の実証プロジェクトも各社がそれぞれ役割を持って取り組む。

 品種改良はリージョナルフィッシュ。NTTグループの3社と荏原製作所、宇部興産は、スマート陸上養殖を担う。AI、IoTシステムの提供・効果検証などはNTTグループが、流体・熱制御の技術を活かした陸上養殖システムの構築などを荏原製作所が、効率的な養殖水浄化や生育環境制御などの開発を宇部興産が担当する。電通は全般的なブランディングと、自治体や企業などのアライアンスなどを担う。

 かつては漁業生産量で世界1位だった日本だが、2019年度の水産白書によれば、2018年には9位まで後退。一方で世界的な傾向としては、漁船漁業の生産量はほぼ横ばいだが、養殖業の需要は急増している。7社が進める次世代水産養殖システムの実現で、国内水産業の再興、ひいては世界をリードするビジネスとなりうるか。今後の展開をウォッチしていきたい。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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