第一三共と徳川家康

2020年1月15日 16:36

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 製薬大手の第一三共は、日本橋本町3丁目に本社ビルを構えている。何故「日本橋本町3丁目か」の理由は、400年以上前の江戸幕府草創期に遡る。

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 徳川家康が「江戸に拠点を」と、江戸に足を踏み入れたのは1590年(天正18年)。家康は現在の「日本橋」周辺を江戸の中心地にしようと考え、早々に大規模な土木工事を始めた。

 と同時に、市街地の造成「町割(町を作るための区画整理)」を進めた。そして区画整理が成される中で「業種別に集まるように」とお触れを出し、「薬種商」にはいまの日本橋本町3丁目エリアに拠点を構えさせた。爾来、日本橋本町は「薬の町」となったと(ちなみに武田薬品の本社も本町3丁目)。

 周知の通り、第一三共は2005年に旧三共(設立1899年)と旧第一製薬(同1915年)という、歴史ある2社の合併で誕生した。

 事業は「医療用医薬品」「一般医薬品」「ワクチン」「後発医薬品」の4分野で構成されている。そしてその商圏は、世界80カ国余に及んでいる。

 一般医薬品では、馴染み深い名前が並んでいる。「ルルゴールド(風邪薬)」「ロキソニン(消炎鎮痛剤)」「ガスター10(胃痛・胸やけ薬)」「トランシーノ(しみの一種“肝斑”用唯一の市販薬)」等々。また医療用医薬品では以下のような製品などが高い評価を得ている。

★リクシアナ(一般名エドキサバン): 体内の血液が固まってしまう作用を阻害し、脳梗塞・心筋梗塞等を予防する。

★メマリー(メマンチン): 中高度のアルツハイマー型認知症の進行を抑制する。

★タリージェ(ミロカバリンベシル): 末梢性神経障害性疼痛。

★エフィエント(プラスグレル): 経口抗血小板薬。動脈の狭窄や閉塞を防ぐ。

 記しだしたらきりがない。

 製品群はホームページ等で確認してもらうとして、製品化が待たれている医療用医薬品も少なくない。「ミネブロ(エサキセレノン)」などその代表例。糖尿病性腎症治療薬。国内の第3相臨床試験まで進んでいる。

 収益は好調。今3月期も「1.1%増収、19.5%営業増益」計画でスタートしたが、4-9月期開示と同時に「2.7%の増収(9550億円)、49.3%の営業増益(1250億円)」に上方修正。その理由として「エドキサバンなど主力製品の好調」がまず指摘されている。

 エドキサバンにズームしてみると「17年3月期売上高:373億円、18年3月期:771億円、19年3月期1177億円」といった推移を見せている。また医薬品業界のアナリストの間からは、こんな声も聞かれる。

 「インテージヘルスケア(医薬品分野の調査・マーケティングで定評)の調査で7年連続『医師からのMR(医薬情報担当者)評価NO1』、3年連続『医療用医薬品売上収益NO1』となっている。いまの第一三共の存在感は、その当たりにも象徴されているといえる」。

 第一三共は制癌剤領域でも評価を集めている。そのことを改めて知らされたのは、昨年12月23日(月)の株価動向だった。12月13日に上場来高値7562円を付けた後、当然の調整の売りに20日には7042円(終値7044円)まで水準を下げていた。

 だが週明けの23日にこんなニュースが飛び出した。「トラスツズマブがFDA(米国食品医薬品局)から、手術不能または転移性乳がん対応薬として販売承認を得た」。23日の終値は7244円。2.3%余上昇した。

 思う。徳川家康は「街づくり」にも長けていた、と。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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