関連記事
逆イールド解消でも、FRBの利下げが遠い理由

(c) 123rf[写真拡大]
2月13日、米国債市場で10年と2年の金利差が+0.64ポイントとなり、約2年ぶりに逆イールドが解消した。しかしこれをもって、利下げ開始の条件が整ったとみるのは早計だ。
【こちらも】米市場、利下げなき環境下で「体温低下」
米連邦準備制度理事会(FRB)は依然としてインフレ再燃への警戒を崩しておらず、高金利環境は想定以上に長引く可能性がある。順イールド復活は緩和の合図というより、「高金利の継続」を示唆するシグナルと捉えるべき局面にある。
1月28日のFOMCでは、政策金利が3.50~3.75%で据え置かれた。2025年の3会合連続利下げに続く措置で、FRBは利下げサイクルに休止符を打った。
1月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.4%上昇と市場予想の2.5%を下回ったが、平均時給は前年比約4%上昇で推移し、サービス価格の粘着性は残る。FRBが重視する個人消費支出(PCE)価格指数は直近公表分(2025年12月)で前年比2.7~2.8%上昇で推移し、目標の2%を依然上回る。
パウエル議長は1月28日の記者会見で「物価の持続的な2%回帰を確認する」と述べ、拙速な緩和を排除した。
2月13日時点で10年債利回りは4.04%、2年債は3.40%で推移し、スプレッドは+0.64ポイントとプラスに転じた。だがこれは景気楽観というより、景気減速懸念による短期金利の低下と、財政赤字を背景とする長期金利の高止まりが組み合わさった結果とみられる。
歴史的に逆イールド解消は景気後退局面と重なることが多いが、今回の米経済は失業率4.4%と底堅く、単純な循環論では説明しにくい。
市場は急速な景気後退ではなく、「減速と正常化」の緩やかな進行を基調シナリオとして織り込んでいる。もっとも、長期金利が高止まりする環境では、金融環境は実質的に引き締め的であり、企業の資金調達コストや投資判断にも影響を与え続ける。
投資家にとって重要なのは、この金利構造が資産評価に与える影響だ。10年国債利回りが4%前後の高水準にある環境下では、将来キャッシュフローを重視する銘柄の割引率は上昇しやすい。
特に高PERで取引されてきた一部ソフトウェア株やSaaS企業は、成長率の持続性や資本効率がこれまで以上に問われる。AI投資の資本効率への疑問が浮上する中、「遠い将来の収益」より「近い将来のキャッシュ創出能力」が重視される傾向が強まっている。
住宅市場では、30年固定住宅ローン金利が6.5%超で推移し、2021年の3%台前半と比較すると家計負担が大幅に増加していることも、景気の下支え余力を考える上で無視できない。
順イールド復活は景気の正常化を意味するわけではない。FRBがインフレ再燃を警戒する限り、割引率の高止まりを前提とした銘柄選別が続く公算が大きい。
市場が次に注目するのは、2月末公表予定の1月PCEデフレーターと、平均時給の鈍化ペースだ。
サービス価格の約7割は人件費で構成されるため、賃金上昇が明確に鈍化しなければ、インフレ圧力は残る。市場の焦点は「いつ利下げが始まるか」から、「高金利下で持続的に利益を生み出せる企業はどこか」へと移りつつある。
スポンサードリンク
