相場展望4月17日号 米国株: 直近高値に接近⇒反落リスクに注意信号点滅 日本株: 日経平均は高値圏を回復、「過熱感」示唆

2023年4月17日 09:15

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/13、NYダウ+383ドル高、34,019ドル(日経新聞より抜粋
  ・3月の米卸売物価指数(PPI)がインフレ鈍化を示し、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げの打ち止めが近いとの見方につながり、2月半ば以来の高値で終えた。インフレ懸念と利上げ観測の後退を受け、ハイテク株や消費関連株が買われた。
  ・PPIは前月比で▲0.5%下がり、横ばいとの市場予想を下回った。エネルギー・食品を除くコア指数も市場予想に反して、小幅に下落した。4/12発表の米消費者物価指数(CPI)も市場予想を下回っており、インフレ圧力が緩和しているとの見方が強まった。4/13発表の週間の米新規失業保険申請件数は市場予想を上回り、米景気の一段の減速を示したと受け止められた。
  ・PPIを受けて、米株式市場では「FRBが5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置くとの見方が意識された」との声があった。
  ・利上げ観測後退で相対的な割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテク株が買われスマホのアップルやソフトウェアのマイクロソフトの上昇が目立った。映画娯楽のディズニーやなどの消費関連株も上げた。
  ・一方、米新規失業保険申請件数が予想以上だったことで、米景気懸念が意識され、NYダウは寄り付き直後に小幅に下げる場面があった。
  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合は4営業日ぶりに反発し、傘下のクラウドサービス「AWS」を通じて生成人工知能(AI)を提供すると発表したアマゾンが高い。動画配信のネットフリックスなどの上げも目立った。

【前回は】相場展望4月13日 米国: 3月CPIは鈍化、だが懸念材料が満載 日本: 植田日銀総裁の記者会見・バフェット氏の商社株買増しで「好反応」も、外国人の慎重姿勢に注目

 2) 4/14、NYダウ▲143ドル安、33,886ドル(日経新聞より抜粋
  ・朝方に米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が、一段の利上げに前向きな姿勢を示した。利上げ長期化により景気が冷えるとの警戒から、幅広い銘柄に売りが出た。同日発表の決算が好調だった銀行株の一角には買いが入った。
  ・朝方のウォラー理事が講演で、「一段の利上げが必要だ」と語った。アトランタ連銀のボスティック総裁も、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げをする考えを示したと伝わった。引締めを維持する姿勢を示したことで、利上げ継続による景気悪化の懸念が強まった。
  ・朝発表の3月の小売売上高は前月比▲1.0%減と、ダウジョーンズ通信がまとめた市場予想の▲0.5%減を下回った。消費が下振れし、景気が減速するとの見方も売りにつながった。市場では「インフレの緩和を示しているものの、経済活動が鈍化する可能性への警戒が優勢となった」との声が聞かれた。
  ・NYダウは前日に2ヶ月ぶりの高値まで上昇しており、週末を控え持高調整の売りも出やすかった。
  ・映画娯楽のディズニーや日用品のP&Gが下落した。主力民間機の品質問題が明らかになった航空機のボーイングも大幅安。医療保険のユナイテッドヘルスは2024年の保険制度改定への懸念が重荷となった。ナスダック総合は、電気自動車のテスラや動画配信のネットフリックスなどが売られた。一方、金融のJPモルガンチェースは1~3月決算が売上・1株利益が予想以上と好感した買いが拡がり+7%超上昇、シティの決算も予想を上回り、投資家心理を支えた。

●2.米国株:株価指数の動向から、当面の高値到達の可能性がある⇒反落リスクに注意

 1)米主要株価指数の推移 : 直近高値に接近、高値が切り下がっている点に注目、反落のリスクあり
  ・NYダウの高値   昨年1/4   11/30 今年1/13  4/13   4/14
             36,799ドル 34,589  34,302  34,029  33,886
  ・SP500の高値    今年2/2  4/13  4/14
              4,179  4,146  4,137

 2)NYダウ : 2022年、最大下落幅の72.6%を回復、反騰はここまでの可能性
  ・2022/01/04   36,799ドル
   2022/09/30       28,725   下落幅▲8,074ドル
   2022/11/30    34,589      上昇幅+5,864ドル(回復率+72.6%)

 3)フィラデルフィア半導体株指数(SOX) : 回復の勢いは鈍化傾向を示す
  ・2021/12/29    4,039
   2022/10/14         2,162  下落幅▲1,877(下落率▲46.5%)
   2023/03/31      3,230     上昇幅+1,068(回復率+56.9%)
      04/12       3,052
      04/14       3,070

  ・世界の半導体売上高は、2022年は2021年から減速に転じている点に注目したい。

  ・バフェット氏は、台湾TSMCの株式を購入したが、短期間で売却している。

  ・韓国サムスン電子は大幅減益。

●3.米新規失業保険申請件数、前週比+1.1万件増の23.9万件、予想23.2万件を上回る(ロイターより抜粋

 1)申請件数は増加したものの、エコノミストが雇用情勢悪化のシグナルとみる27万件と比べると、なお下回っている。

 2)3週ぶりに増加したが、増加分の3分の1超がカリフォルニア州 (ブルームバーグ)
 

●4.マスク氏、新会社「X.AI」設立、ChatGPT対抗か、米紙報道(朝日新聞)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/13、上海総合▲8安、3,318(亜州リサーチより抜粋
  ・外部環境の不透明を嫌気する流れとなった。
  ・米インフレの高止まりや、米経済の落込みが懸念材料だ。ただ、指数はプラス圏で推移する場面もみられた。
  ・取引時間中に公表された3月の中国貿易統計は、輸出入がそれぞれ予想を上回った。米ドル建て輸出は+14.8%増(予想は▲7.1%減)、輸入は▲1.4%減(予想は▲6.45減)となった。市場関係者の一部からは、中国景気の持ち直しは続いている、と分析された。
  ・業種別では、ITハイテクの下げが目立ち、不動産も冴えず、素材なども売られた。半面、医薬品はしっかり、海運・酒造・公益・銀行は買われた。

 2) 4/14、上海総合+19高、3,338(亜州リサーチより抜粋
  ・内外環境の改善が投資家心理を上向かせる流れとなった。
  ・中国景気の持ち直しが続いているとの見方が改めて支えになったほか、米インフレ鈍化を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ停止に動く都の期待が高まった。
  ・中国で公表された足もとの経済統計は、総じて事前予想を上回っている。
  ・一方、来週も重要経済指標の公表が相次ぐ。4/17に中期貸出ファシリティ(MLF)金利、4/18に第1四半期のGDP成長率や3月の各種経済統計(小売売上高や鉱工業生産)、4/20に銀行貸出の指標となる最優遇貸出金利などの公表を控えている。
  ・模様眺めのスタンスが漂う中、指数は弱含む場面もあった。
  ・業種別では、ITハイテクの上げが目立ち、自動車もしっかり、発電も高い。半面、酒造は安く、食品・空運・小売の一角が売られた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/13、日経平均+74円高、28,156円(日経新聞より抜粋
  ・米景気の先行き懸念から、朝方は幅広い銘柄で売りが先行したが、徐々に下げ渋って上昇に転じた。米物価指標が市場予想を下回り、利上げ長期化の観測が和らいだ。東京市場では値嵩のグロース(成長)株の一角が買われ、相場を押し上げた。
  ・4/12発表の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、インフレ鈍化が示されたとの受け止めが拡がった。日本時間4/13の取引で主要なハイテク株で構成する米ナスダック100株価指数の先物が上昇したことを背景に、グロース株の中でもクオリティー(優良)株とされる銘柄などが買われた。
  ・もっとも、4/12に公表された3月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、金融不安による米経済下振れリスクに言及されたことで、景気敏感株には売りが目立った。銀行や保険などの金融株は軟調に推移した。
  ・ファストリの1銘柄で日経平均を+60円あまり押し上げた。キーエンス・ファナック・第一三共・中外薬が買われた。一方、日産自・トヨタや東エレクなど半導体関連が下げた。

 2) 4/14、日経平均+336円高、28,493円(日経新聞より抜粋
  ・日経平均への寄与度が高いファストリが大幅高となり、指数を1銘柄で261円上げた。インフレ懸念や利上げ観測の後退を背景とした前日の米株式相場の上昇も、投資家心理の支えとなり、3/9以来およそ1ヶ月ぶりの高値となった。
  ・4/13に2023年8月期(今期)業績予想の上方修正を発表したファストリは急伸し、前日比+8%超高となり年初来高値を更新した。
  ・米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が保有比率の上昇に言及したことも連日で好感される中、総合商社株は軒並み高となった。
  ・もっとも、朝高後は高い水準で一進一退が続き、積極的に上値を追う動きは続かず。日経平均が心理的節目の28,500円を上回る場面では高値警戒感を背景とした売りが出た。今夜の3月の米小売売上高の発表などを控え、次第に様子見姿勢を強める投資家も多かった。
  ・楽天・サイバー・味の素・キッコーマンが上昇。一方、シチズン・東宝・川崎汽が下落した。

●2.日本株:日経平均は高値圏に回復し、指標は「過熱感」を示唆、注意したい

 1)テクニカル指標は「過熱感」の状況を示す
              4/6   4/14
  ・騰落レシオ(6日)  72.84  236.56 : 直近の最安値から急伸し「過熱」示唆
   日経平均終値    27,472円 28,493
  ・PER(株価収益率)  1/4   4/14  
              14.95倍 17.47  : 株式に資金流入し株価上昇、「過熱感」

 2)日経平均の高値推移 : 直近高値に接近し、そろそろ天井を迎える可能性がある
  ・2022/11/24   28,383円
   2023/03/09   28,623
      04/14   28,493

●3.企業業績

 1)ファストリ 2023/8期通期予想営業利益3,500⇒3,600億円に上方修正(ロイター)
 2)TKP    2023/2月通期営業利益35.7億円・経常利益30.6億円と黒字転換(フィスコ)
        2024/2月期の純利益は過去最高を見込む
 3)コメダ   2024/2月通期見通しの純利益58億円と前期比+8%増で最高益(日経新聞)
        自社株買い上限10億円、配当53円と前期比1円増配

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・3978 マクロミル  業績堅調。
 ・4301 アミューズ  コロナ回復期待。
 ・7012 川崎重工   業績好調。

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