ダイヤモンド加工技術(ダンシングストーン)で知られる:クロスフォーの次の一手

2023年4月3日 16:22

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 クロスフォー(東証スタンダード)の土橋秀位社長をZoom取材する機会を得た。月刊株主手帳の企業研究企画だった。参加の打診を受け、「宜しく」と返信した。が正直、「浮世の義理」が本心だった。現時点で、投資妙味を全く感じさせない企業だったからである。

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 特許を取得している独自開発のダイヤモンド加工技術で、ジュエリーやパーツを製造販売している。

 矢野経済研究所の調査によるとコロナ禍の2020年の世界ジュエリー市場は、前年比17%減(8195億円)の急減。だがコロナ状況の和らぎ、それを背景とした値上げの動きの中で23年には1兆545億円が予想されるという。そんな出直り基調の市場にあって矢野経済のレポートには、こうも記されている。

★ジュエリーブランドのトップ25位以内の企業の約3割が、クロスフォーの「ダンシングストーン」を採用している。

★日本ではミキモトや4℃など、約1000社と契約している。海外では約350社とパーツ販売のロイヤリティ契約を結んでいる。

 ダンシングストーン。これこそがまさに、クロスフォーが開発した斯界の特殊技術。土橋社長は「寿司屋に例えれば、最高の寿司を握りたいと思って開発した技術」とし、こう訴求した。「ダンシングストーンは、(ペンダントの)中央にセットされた宝石部分だけが身体の僅かな振動をキャッチして、まるでダンスするように細かく揺れながら美しい輝きを放つ。文字通りのダンシングストーン」。

 疎い世界ではあるが「模造品に悩まされた」というから、優れた技術商品なのだろう。が、クロスフォーの収益は2015年7月期の「営業利益:10億4700万円、経常利益:10億5900万円」をピークに、下降一筋。

 前22年7月期は「4400万円、2億2100万円(円安効果)」、今期も「1億2500万円、9800万円」計画で立ち上がったが開示した中間期実績は「1億800万円/1億1900万円の各損失」。

 取材時の時価は208円、予想税引き後配当利回り0.6%弱。上場時(2017年7月)以降の調整済み株価動向はマイナス6割。「投資対象としての妙味を全く覚えないが・・・」と問うた。

 土橋社長は「実直なご質問」とした上で、「新たな展開を認識して欲しい」と言い切った。至24年7月期の中計は『売上高50億円、営業利益率50%、配当性向30%目標』を掲げている。その背景を土橋氏は、「ステンレス製のピアスポスト(ピアスの耳たぶに入る部分)に全身全霊を傾ける」とした上で、こう指折り数えた。

 「女性の約3割が、金属アレルギーがある。だがステンレス製のピアポストなら、約8割の女性がピアスを楽しみたいとしている」。「販売価格は18金に比べ3分の1以下に抑えられる」。「金属に比べて3倍の強さ」。「世界中の成人女性のピアス愛好者8割(14億人)のうち、0.1%がステンレス製を使用するとして4億2000万円の市場が形成される」etc。

 熱心に説いた土橋氏は、最後にこう言った。「私も68歳。最前線に立てるのもあと5-6年。新規事業を成し遂げたい」。何かを感じた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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