100余年の老舗企業:日本化薬の、上方修正に感じた「?」

2022年10月5日 07:56

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 日本化薬(東証プライム)は1916年(大正5年)、山本条太郎氏により日本火薬として設立された。その後、染料・製薬2社を吸収合併。1945年に「火薬・染料・医薬」の3事業をコアとした総合化学メーカーへの道を突き進むため、社名を日本化薬に変更。日本の戦後・高度成長期に際立った役割を果たしている。幾つか代表例を印す。

【こちらも】火薬で起業の日本化薬が医療医薬品企業になった背景と現状

◆1950年代の産業用火薬の需要増に最前線で対応。同じ時期、蛍光染料の開発を経て染料事業でも国内トップの出荷量に。1948年にペニシリンの製造を開始し、55年にはペニシリン錠剤でシェア45%に至る成長を遂げた。

◆1951年に創設されたデミング賞に立候補を宣言。TQM(総合品質管理)を社内で徹底教育・実施し、1962年に受賞している。1962年には梅澤濱生博士が発見したブレオマイシンをもとに抗がん剤を開発、69年に販売を開始している。

 いまもそうした企業素地は脈々と受け継がれている。「6.6%の増収、40.0%の経常増益、36.6%の最終増益」となった前2022年3月期の、主要事業がそれを如実に物語っている。

 『機能化学品事業』: 機能性樹脂事業が5GデバイスやIoTの普及、自動車の高度電装化、加えてテレワーク等の需要もありエポキシ樹脂など半導体部材が好調。色素材料事業は一般用インクジェットプリンタ用色素が堅調、産業用(・感熱紙用・繊維用)染料の需要が回復。などで前年比6.5%増収、57.2%のセグメント利益増。

 『医薬品事業』: 肺がん用バイオ医薬品:ポートラーザの市場浸透や、新たに発売したジェネリック抗がん薬:ペメトレキセド(点滴注射薬)が寄与。薬価改定下でも3.3%の増収、16.2%の増益。

 そんな日本化薬が5月12日に発表した今期予想を「6.5%増収、16.2%経常減益、18.5%最終減益」とした時は、一瞬「?」と首を捻った。が「後出しじゃんけん」と言われるかもしれないが、「想定為替レート:1米ドル・110円」と知った時は、「上方修正あり」と見た。

 現に第1四半期開示と同時に、通期予想を「13.6%増収(2100億円)、14.49%経常増益(266億円)、12.9%最終増益(194億円)」に上方修正した。その理由を「為替の影響、売上原価率の低減」とした。前者は容易に気づける点。だが後者は積み重ねの結果(それを期初計画策定に際し積算できなかったことには?を感じるが)。

 株価は上方修正直後に1289円まで買い直され、時価はその過程で開けた窓を埋めている段階。1200円水準、予想税引き配当利回り2.7%。IFIS目標平均株価1400円。どう対応するかは自己判断で・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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