相場展望5月26日 株価の潮流に変化、「FRB金融政策・ウクライナ侵攻」⇒『景気減速』⇒『企業業績』へ

2022年5月26日 11:27

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/23、NYダウ+618ドル、31,880ドル(日経新聞より抜粋
  ・前週まで8週連続で下落し、下落幅は▲3,600ドル近くに達した。
  ・5/23はハイテクなどに割安感や値ごろ感に着目した買いが入り、銀行株が軒並み上昇したのも投資家心理の改善につながり、NYダウの上げ幅は一時+700ドルを超えた。
  ・バイデン米大統領が対中国の「制裁関税引下げ検討」発言も、インフレ抑制や米中貿易拡大につながると見た買いを誘った。
  ・アメックス、キャタピラー、ボーイングなどの景気敏感株の上昇につながった。ハイテクにも押し目買いが入り、アップル、マイクロソフトは各+3%上昇した。

【前回は】相場展望5月23日 米国は金利上昇とインフレで、景気後退に突進 『過剰マネー相場終焉』で、株式市場に注目

 2)5/24、NYダウ+48ドル高、31,928ドル(日経新聞より抜粋
  ・業績懸念から主力ハイテクが売られ、午前には一時下げ幅が▲500ドルを超えた。その後、米景気後退の懸念が広がる中、業績が景気の影響を受けにくいディフェンシブに、前週まで売られて下げすぎと見た買い直しが入り、NYドルは上昇に転じた。マクドナルド+3%高、ベライゾン、P&G、コカ・コーラが各2%高。
  ・景気減速で広告が打撃を受けるとの見方で、メタ▲8%安、アルファベット▲5%。中国・上海工場の生産回復遅れでテスラは▲7%安と下げが目立った。

 3)5/25、NYダウ+191ドル高、32,120ドル(日経新聞より抜粋
  ・5月米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表されたが、市場では想定内の内容と受け止められ、注目されたイベントを無事通過し、最近の相場下落で生じた割安感や値ごろ感に着目した買いが優勢となった。
  ・議事要旨では「+0.5%の利上げが適切」とあり、物価安定のためには(1)利上げと(2)資産圧縮の両輪で「金融政策を早急に中立的なスタンスに移行させるべきだ」との見方で合意していることも分かった。
  ・金融引締めが米景気を冷やすとの懸念が強いが、NYダウは8週連続で下げており、幅広い銘柄に買いが入りやすく、ハイテクが買い直され、消費関連・景気敏感も上昇。

●2.米5月製造業PMIは57.5と、予想57.7・4月59.2から大幅悪化(フィスコ)

 1)米5月サービス部門PMIは53.5と、予想55.2・4月55.6から大幅に下回る

●3.米4月新築住宅販売件数は59.1万戸、予想75.0・3月76.3と予想下回る(フィスコ)

●4.米国株のさらなる下落に備えを、最低▲10%値下がりか、MLIV調査(ブルームバーグより抜粋

 1)景気減速懸念が拡大し、米FRBがここ数十年で最大の金融引締めに着手する中、SP500株価指数のさらなる下落を覚悟すべきだ。

 2)SP500先週に弱気相場入り瀬戸際に立たされ、時価総額▲1兆ドル(約128兆円)余りを失ったが、今後さらなる痛みが待ち受けていると予想している。
  ・回答者1,009人の予想中央値に基づくと、SP500は年内に引き続き下落し、3,500前後で底入れする公算が大きい。これは5/20の終値3,901から少なくとも▲10%下落し、1月のピークからは▲27%値下がりすることを意味する。  
  ・要因は、
   (1)米金融当局の是が非でもタカ派を貫く姿勢
   (2)サプライチェーンの混乱
   (3)景気循環への脅威拡大
   (4)米国企業の利益創出能力への信頼性を損なったこと
   (5)バリュエーション(株価評価)が引き続き低下
  ・回答者のうち少数者は、SP500 が2,240へと歴史的な下落が進行中で、再び新型コロナ禍の安値を試すと予想する向きもある。

●5.米消費者関連株の時価総額▲5,500億ドル消失、小売企業決算控え警戒強まる(ブルームバーグより抜粋

 1)コスト高騰と在庫急増で小売業者は苦境に追い込まれており、こうした状況が早期に緩和されることはない、と投資家は警戒している。

 2)今週はコストコ、ベストバイ、ノードストロム、メーシーズ等が決算発表する。ウォルマートやターゲットの発表で1987年以来の最大株価下落を記録した後だけに、投資家はさらに悪いニュースが出てくる可能性に備えている。

 3)消費関連株の時価総額は過去5営業日に計▲5,500億ドル(約70兆円)失われた。店舗に消費者が求めない商品が溢れるということで在庫の膨らみに加え、値上げがコスト上昇に追いつかないという状況に陥っている。先週の小売株について、「まったくの惨劇だった。利益のさらなる収縮が予想される」との指摘がある。

●6.ロシアvsウクライナ関連

 1)スターバックス ロシアでの運営の差し止め決定(フィスコ)

 2)ウクライナ再建資金、6,000億ドル(約78兆円)、5/3時点(ロイター)
  ・5/3以降も戦争が続いているため、この金額は大幅に増加する可能性がある。
  ・リトアニアなど4か国は、ロシア資産没収して再建資金の一部に充当の提案。再建費用はロシアが負担しなければならない、とした。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/23、上海総合+0、3,146(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策への期待感が相場を支える流れで、中国人民銀行(中央銀行)が最優遇貸出金利を5月に引下げたが、6月も引下げられるとの見方が流れた。
  ・訪日のバイデン米大統領の「対中関税の引下げ検討」発言が流れ、好材料視された。
  ・新型コロナ感染対策の行動抑制強化を嫌気して推移していたが、終盤にプラス転換。
  ・業種別では、非鉄・レアアース・鉄鋼が高く、不動産・銀行保険が売られた。

 2)5/24、上海総合▲75安、3,070(亜州リサーチより抜粋
  ・上海総合指数は3日続伸し高値水準でもあり、売り圧力が意識される流れとなった。
  ・感染者数は減少傾向だが、中国政府はゼロコロナ政策堅持のため景気不安が漂う。
  ・中国経済対策は李首相により税還付追加、自動車購入の規制緩和、インフラ事業投資拡大など33項目の追加経済刺激策を決定している。
  ・業種別では、ITハイテク・医薬品・消費関連が下げ、自動車関連はしっかり。

 3)5/25、上海総合+36高、3,107(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の景気対策が改めて材料視される流れとなった。中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会は、主要金融機関と会合し中国経済支援のため貸出拡大するよう要請した。
  ・5月の地方債発行が過去2番目の大きさと報じられ、公共事業の加速も期待される。
  ・新型コロナ感染者数減少する上海市で、経済活動が正常化しつつあることもプラス。「6/1から主要商業施設が営業再開される」と伝わった。
  ・業種別では、自動車・航空・建設関連・エネルギー関連の銘柄がしっかり。

●2.UBSとJPモルガン、2022年の中国成長率予想を下方修正(ブルームバーグ)

 1)UBS     4.2% ⇒ 3.0% に下方修正
   JPモルガン 4.3% ⇒ 3.7%

 2)新型コロナ対策の制限措置で4月の経済活動が急減速したことを反映した。

●3.摘摘出行、株主投票でNY証券取引所から上場廃止手続き開始(ブルームバーグ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/23、日経平均+262円高、27,001円(日経新聞より抜粋
  ・米市場で5/20に長期金利が低下したため、東京市場でハイテクに買いが入り上昇して始まり、一時+400円を超えたが、節目の27,000円前後では戻り売りが出た。
  ・大引け間際、バイデン大統領が「対中関税の引下げを検討」と発言すると、日経平均は上げ幅を広げた。
  ・日本国内では、コロナ感染者数の増加に一服感が見られ、外食に買いが入った。
  ・川崎汽船・サイバー・資生堂が買われ、東ソー・日揮・IHIが売られた。

 2)5/24、日経平均▲253円安、26,748円(日経新聞より抜粋
  ・米金融引締めや中国の景気減速などへの警戒感は根強く、軟調に推移した。
  ・朝方は小高く始まったが、27,000円の節目を上回る水準では戻り待ちの売りが出た。
  ・米株価指数が下げ幅を広げると、日経平均先物も売られ押し下げた。米主要ハイテクで構成するナスダック100指数の先物が大幅下落し、東京市場でも主力のグロース(成長)を中心に幅広い銘柄に売りが出た。大手海運は買われた。
  ・中国・北京市で、新型コロナ感染拡大で景気減速への懸念が根強く、上海や香港株式市場で下落したことも、東京市場の重荷になった。
  ・市場では「27,000円の壁は厚かった。米金融引締め局面で積極的に買い向かう投資家は少ない」との声があった。
 
 3)5/25、日経平均▲70円安、26,677円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテクの下落は、東京市場ではある程度織り込んでいたこともあり、積極的に下値を探る展開にはならなかった。
  ・日経平均が25日移動平均26,726円を下回る中、割安感のある銘柄を中心に押し目買いが入り、後場には上昇に転じる場面もあった。
  ・市場では、「米ハイテク企業の業績期待が高すぎ、一方、日本国内企業の業績悪化をかなり織り込んだ慎重なものになっていたため、米国と比較して日本は相対的に堅調な株価推移が見込める」との見方があった。
  ・ソフトバンクG・ソニー・リクルートが売られ、三井不・三菱商事が買われた。

●2.日本株:株価の潮流に変化、「FRBの金融政策・ウクライナ」⇒『景気減速』⇒『企業業績』へ

 1)今までの株式市場を動かしてきたキーワードは、
  (1)米欧の高インフレ
  (2)米利上げ
  (3)ロシアのウクライナ侵攻 
  であった。

 2)株式市場の潮流の変化が起きようとしていると思われる。それは、上記キーワード項目の影響で、具体的な景気後退への圧力が増し、企業業績に懸念が及びはじめてきた点に焦点が移りつつあると感じる。

 3)ちょうど、決算発表シーズンが終わり、今後は来期の企業業績の変化度に注目が向くと思われる。半導体市場もひっ迫状況から軟化の兆候が見られる。潮流の変化を見極めていく時期に差し掛かったといえよう。

●3.4月全国百貨店売上高は前年比+19.0%増、2か月連続プラス(ロイター)

 1)前年の緊急事態宣言による営業制限の反動、先月下旬のまん延防止等重点措置解除で外出機会が増えたことが寄与した。

●4.4月全国スーパー売上は8か月連続増、行楽用品など堅調(NHK)

●5.企業動向

 1)キリン   ビール類、10/1から6~17%値上げ(共同通信)
 2)サントリー 伊右衛門・天然水を10/1から20円値上げ(朝日新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・1893 五洋建設   業績好調。
 ・6035 アイアールJ  業績堅調。
 ・8252 丸井     業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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