関連記事
相場展望8月16日 夏季休暇で閑散相場となり、振れ幅拡大に注意 外国人投資家は3週連続買越し⇒売り転換に注目
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)8/12、NYダウ+14ドル高、35,499ドル(日経新聞より抜粋)
・米国の雇用と物価の経済指標を受けて、長期金利が上昇した。
・7月物価指数は前月比+1.0%上昇と、予想を大きく上回った。週間の新規失業保険申請件数が37.5万件と、前週から改善した。この指標を受け、雇用回復とインフレ加速が進んでいると受け止められ、長期金利が一時1.37%と前日比+0.04%上昇し、金融株が上げた。
・3銘柄でNYダウを約+80ドル押し上げた。3銘柄は、スマートフォンのアップル、顧客情報管理のセールスフォース、ソフトウェアのマイクロソフトである。
・NYダウは連日にわたって過去最高値を更新しており、金利上昇を受けて、このところ上げが目立っていた景気敏感株を中心に短期的な利益確定の売りが優勢となった。
【前回は】相場展望8月12日 決算シーズン終了⇒市場は冷めた反応に留まる 夏後半~秋初旬は調整?
2)8/13、NYダウ+15ドル高、35,515ドル(朝日新聞)
・NYダウは4日連続の最高値更新、ただ、直近2日間の上げ幅は+30ドルと小幅。
・米国の長期金利が低下したため、売上成長率が高く、投資魅力の増すハイテク株が値上がりし、NYダウを押し上げた。マイクロソフト、セールスフォース、ユナイテッドヘルスなどが牽引した。反面、金利低下で金融株のGサックス、JPモルガンチェースなどが下げた。
・ただ、米国でもコロナ感染再拡大で、経済の先行きに懸念がある。米国8月消費者マインドを示す指数が8/13に発表されたが、市場予想を下回り、株価の重荷になった。
●2.米国株:「好材料に反発は小さく、個別株の悪材料には敏感に反応」というイメージに転換
1)米国株式は、決算発表シーズン入りで、好材料に好感して上昇トレンドを形成してきた。
好材料 ・好決算の相次ぐ発表
・米上院での、超党派インフラ投資法案の可決
・経済指標でのインフレ懸念後退 ⇒ FRBの緩和姿勢継続の期待高まり
・米雇用統計の強い雇用者数と求人者数で、経済回復への確かな手応え
・長期金利の低下
2)だが、先週後半から株式相場の流れに変化の兆し
・今まで無視してきた個別銘柄の悪材料に反応が大きくなり始めた。
マイクロン、モデルナ、ビオンテックなど
・長期金利は低下から反転上昇基調に転換。
・好決算発表シーズンによる上昇トレードの時期終了。
・米議会の夏季休暇入りで、買い仕掛け材料も夏季休暇で減少。
・市場参加者もバカンスで、買い手控えとポジション調整 ⇒ 市場は閑散相場に。
3)8月後半からは、市場は夏季休暇で閑散相場になるため、振れが大きくなるので注意
●3.米8月ミシガン大学消費者信頼感指数は70.2と、7月81.2から予想外に低下(フィスコより抜粋)
1)パンデミック発生時を下回り、2011年12月以降ほぼ10年ぶりの低水準に落ち込む。
2)FRBがインフレ期待指数として注目している、
・1年期待インフレは、4.6%と、7月4.7%からは小幅低下したが、依然、高い水準である。
・5~10年期待インフレ率は3.0%と、7月2.8%から上昇し、5月来で最高となる。
3)低調な結果を受け、米国債相場は大幅上昇・10年債利回りは1.356%⇒1.283%に低下
ドルも売られ、110.23円⇒109.59円の円高。
●4.コスト大幅上昇、消費者への波及は時間の問題 (フィスコより抜粋)
1)7月消費者物価指数(CPI)は前月から減速した一方、生産者物価指数は(PPI)は過去最大の伸びを記録している。
2)コストの上昇が続き、企業が最終的に消費者に価格転嫁せざるを得なくなった場合、今後、CPIも再度上昇する可能性が懸念となる。
3)PPIは前年比では+7.8%と、減速予想に反し、伸びが拡大し、最大を記録した。コアPPIも前年比で+6.2%と2010年来で最大。商品価格が高止まり、供給のボトルネックが依然として、企業のインフレ圧力となっていることが明らかになった。
4)債券王として知られるダブルラインキャピタルのガンドラック氏は、インフレが低く評価されていると指摘。7月消費者物価指数(CPI)は2カ月連続で前年比+5.4%。
5)FRB高官の早期の債券購入縮小(テーパリング)を支持する意見が増えている。ジャクソンホールでの年次会合でパウエルFRB議長の演説に注目が集まっている。
●5.インフレ率の予想以上の上昇で、米10年国債利回りは上昇・国債価格が下落(フィスコ)
1)米10年国債利回りは8/12、一時1.372%まで上昇し、7/14来の高さとなった。
2)ドル円は、ドル高・円安となった。
●6.米7月生産者物価指数(PPI)は前月比+1.0%と、予想+0.6%を上回った(フィスコ)
1)前年比+7.8%と、6月からの減速予想に反し、伸びが拡大し、2010年来で最大を記録
2)変動の激しい燃料や食品除くコア指数は、前年比+6.2%と、2020年来で最大。
3)PPI発表を受け、早期の金融緩和縮小(テーパリング)観測が再燃。
●7.米先週分新規失業保険申請件数は37.5万件と、予想と同じ、前回38.5万件(フィスコ)
1)失業保険継続受給者数は286.6万人と、昨年3月中旬以降で最小となった。
2)改善は3週連続で、労働市場は引き続き回復に向かっている。
●8.米マイクロン株価は8/12、DRAM需給サイクルがピークアウトと、一時▲8%安
1)モルガン・スタンレーが投資判断を「買い」から「中立」に、目標株価も105⇒75ドルに引き下げたことを、嫌気され株価下落した。
2)マイクロン・テクノロジーズの主力メモリのDRAMの需給サイクルがピークを過ぎたと指摘し、成長の勢いが鈍ると予想した。(日経新聞)
●9.米議会上院、385兆円の財政措置法案を可決(共同通信)
1)米議会上院は8/11、地球温暖化対策や福祉などに対し、総額3.5兆ドルの投資を実行することを盛り込んだ財政措置案を、賛成多数で可決した。
●10.米政府の債務上限巡る「厄介な問題」に、米短期市場トレーダーは警戒感強める(ブルームバーグより抜粋)
1)米財務省が9月にもデフォルト(債務不履行)に陥るリスクがある。
2)民主党主導の3.5兆ドル(約390兆円)規模の予算決議には、債務上限の引き上げに関する文言が盛り込まれれなかった。
3)共和党上院議員46人は、債務上限引き上げに賛成票を投じるつもりはないとする書簡に署名した。
●11.米国の資金流動性がマイナスに転じ、市場に警戒シグナル(ブルームバーグより抜粋)
1)米国で金融の流動性指標の1つが、警戒シグナルを発している。
・マネーサプライ(通貨供給量、M2)の伸び率から名目国内総生産(GDP)の伸び率を差し引いた数値がマイナスに転じている。2018年以来のことだ。
・2010年と2018年にこの数値がゼロを割り込んだ際は、株価急落の前兆となっただけに、米連邦準備制度理事会(FRB)が資産購入のテーパリング(段階的縮小)に着手していない現在は、警報が鳴っている状況だ。
・現状は、名目GDPの伸びが、M2の伸びを上回っている。景気拡大の下、米国内で利用可能なマネーが急激に減っているのが背景で、過剰流動性がビットコインや「ミーム株」を支えている中にあって、市場に問題が発生する可能性がある。
・4~6月のM2の伸び率は前年同期比+12.7%と、名目GDP伸び率の16.7%を下回った。これを別の言い方をすれば、株式市場が独り占めしていた資金を、回復するGDPが横取りして飲み込んでいる、ようなものだ。
・この数値がマイナスになった2010年にSP500は▲16%の調整に見舞われ、2018年には弱気相場入り寸前まで落ち込んだ。
・株価収益率(PER)は過去15倍だったが、現在22倍と超割高となっているだけに、下落リスクの高まりを警告していると思われる。
●12.米モデルナと独ビオンテックは米株式市場で8/10から2日間で時価総額計6.6兆円失う(ブルームバーグより抜粋)
1)2社は今年初め~8/9までに時価総額は360%上昇し、8/9に上場来高値を記録した。
2)8/10に、高いバリュエ―ションが投資家から嫌気され、時価総額は2日間で2社合計で約▲600億ドル(約▲6兆6,300億円)減少した。
3)アナリストは、モデルナ株のバリュエーションについて、もはや「不合理」というより「馬鹿げた」水準になったと指摘した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)8/12、上海総合▲7安、3,524
・中国政府による締付け懸念が再燃したほか、コロナ感染拡大が警戒され、投資家の慎重スタンスが強まる流れとなった。
・国務院(内閣に相当)は8/11夜、今後5年間に国家安全保障やイノベーション、独占禁止法などの分野で法整備を積極化する方針を発表している。
・感染力の強いデルタ株が散発的に流行し、各地で行動制限が強化され、一部の工場では閉鎖される状況になった。
・7月金融統計が弱い内容となり、中国当局が景気の下支えに金融緩和をする可能性があるとの見方が広がり、大きく売り込む動きは見られなかった。
2)8/13、上海総合▲8安、3,516(フィスコより抜粋)
・中国政府による一部業界の締付け懸念や、コロナ感染拡大が引き続き投資家心理の重しになっている。
・コロナ感染状況を巡って、世界最大級の港湾・寧波舟山港でも新規感染者を確認。当局は港の一部を閉鎖した。サプライチェーンが打撃を受ける恐れがあるだけに、国内経済に及ぼす影響が不安視されている。
・ただ、大きく売り込む動きはみられない。
・景気懸念が依然としてくすぶる中、金融緩和を含む景気対策が打ち出されるとの観測も根強い。
・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、自動車株も冴えない。反面、不動産株は高く、素材・公益・食品飲料株は買われている。
●2.中国、安全保障や独占禁止等で新法策定へ、取締り継続を示唆(ロイターより抜粋)
1)中国政府は8/11公表文書で、国家安全保障、技術革新、市場の独占、教育のほか外国人が関与する分野で新たな法律を策定する方針を明らかにした。
2)新華社が報じた文書によると、中国共産党と政府の「法治政府」は、『党指導部に従う』べきだと強調。
3)当局は、デジタル経済やインターネット金融、人工知能(AI)、ビッグデータ、クラウドコンピューティングといった新たな分野と、整合的な法律を目指すとした。また、緊急事態への対応も改善するとした。
4)習近平国家主席は「法治」を強調し、来年3期目の続投を目指すとみられている。
●3.中国、コロン感染者発生で、コンテナ取扱量で世界3位の寧波舟山港を部分閉鎖(ブルームバーグより抜粋)
1)中国の港湾が閉鎖されるのは、最近では深圳の塩田港に次いで2番目。塩田港の閉鎖は5月から約1カ月続き、商品が工場や保管場所で山積みとなり、貨物運賃を押し上げた。
2)貨物運賃は既に記録的な高水準にあり、インフレの源となっている
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)8/12、日経平均▲55円安、28,015円(日経新聞)
・前日のNYダウ高を背景に上げ幅は一時+200円を超えたが、その後、4連騰したこともあり、上昇が目立った銘柄に利益確定売りで上げ幅縮小。後場に入ると下げに転じた。
・主要企業の決算発表がほぼ一巡し、新規材料が乏しい中で、夏休みを控えた市場参加者の持ち高調整の売りが出やすい局面となった。
・米ナスダックの下落を受け、東京エレクトロンなど値がさ半導体関連銘柄が下げたことも重荷となった。
2)8/13、日経平均▲37円安、27,977円(日経新聞)
・コロナ感染者数が過去最高を更新し、景気への影響を懸念し、積極的に上値を買う雰囲気ではなかった。
・米半導体関連株の下げを受けて、値嵩の半導体株が売られたのも相場の重荷。
・日経平均が節目の28,000円を上回る局面では、戻り売りが出やすかった。
●2.日本株は、好決算シーズンでも反応薄 ⇒ 市場参加者の夏季休暇入りに注意したい
1)先物と日経平均の推移 ⇒ 外人短期筋の大量の買い転換に対し、みずほ・野村が売り対抗し、日経平均は僅か+2.7%の上げ幅にとどまった。
7/30 8/12 増加幅 増加率
外国人先物買残数 124,099枚 146,438 +22,339 +18.3%増
日経平均 27,283円 28,015 + 732 + 2.7%増
2)業績相場に移行と煽ってきた市場関係者だが、EPSの上昇は限定的で、業績相場不発
7/19 8/3 8/12 増加幅(8/3比)
1株当たり利益(EPS) 2,045円 2,049 2,121 +72 +3.5%
3)外国人投資家(外国人短期筋)は、7/26から3週間連続で買越し ⇒ 売転換に注目
・外国人短期筋の牽引役の1つであるCスイスは、すでに8/11から売り転換している。
・今後、日経平均上昇の重さを知った他の外国人短期筋の売り転換が懸念される。
●3.コロナ後見据え外需が追い風の製造業急回復、苦境続く運輸・旅行と格差拡大(読売新聞)
1)通期の最終利益を上方修正した194社のうち、製造業が135社と7割を占め好調。
2)ワクチン接種が進む欧米や感染拡大を比較的抑え込んでいる中国などの経済回復で先行する海外の需要を取り込み、新車販売などが伸びている。
3)ただ、製造業も半導体不足や原材料高騰のリスクがある。
●4.企業業績
1)JFE 2022年3月期純利益1,300⇒2,400億円に+75%上方修正(ロイター)
鋼材需要の回復が継続。前期は▲129億円の赤字だった。
2)メルカリ 2021年6月期純利益57億円(前期▲227億円赤字)初の黒字(共同通信)
3)東芝 4~6月期純利益+179億円(前年同期▲113億円赤字)(ロイター)
営業利益率は2.0%で、競合の日立5.5%や三菱電機7.8%に比べ低い
4)SMC 2022年3月期純利益1,500億円、前期比+23%増、過去最高(日経新聞)
5)森永製菓 4~6月期営業利益62億円、前年同期比+18%増、過去最高(日経新聞)
●5.企業動向
1)ニコン 米センサー開発企業「エイバ」社と協業を検討(時事通信)
2)百貨店協会 入場者数制限や感染対策強化へ(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6473 ジェイテクト 自動車部品。業績好調。
・6955 FDK 電池。業績好調。
・6095 メドピア 医師向け情報サイト。
スポンサードリンク