相場展望6月14日 米5月CPIはインフレ加速懸念の後退で、次のFOMC待ち 米下院での巨大IT企業規制法案提出の動向に注目

2021年6月14日 08:19

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/10、NYダウ+19ドル高、34,466ドル(日経新聞)
  ・5月米消費者物価指数(CPI)は前年同月比+5.0%と13年ぶりの高さとなり、予想+4.7%と前月4月から加速した。しかし、中古車などの特定品目の影響が大きく、物価上昇が「FRBの一時的との見方を変えるもではない」と受け止め、ダウは+290ドル高をつけた。
  ・ただ、長期金利低下でハイテク株の多いナスダックは上昇したものの、利ザヤ縮小が懸念される金融株が下げ、相場の重石となった。景気敏感株にも利益確定売りが出た。
  ・SP500指数は、1カ月ぶりに過去最高値を更新した。

【前回は】相場展望6月10日 米経済指標の成長率は高水準ながら、伸び率は鈍化 人手不足と物価上昇が深刻化すると景気後退リスク増す

 2)6/11、NYダウ+13ドル高、34,479ドル(日経新聞)
  ・景気回復期待から消費関連株に買いが入ったが、ダウは最高値圏にあり、高値警戒感から売りも出て上値は重く、小幅続伸。
  ・米連邦公開市場委員会(FOMC)が6/15~16に開催されるが、量的金融緩和の縮小(テーパリング)の議論開始について新たな言及があるかどうかが注目される。
  ・併せて発表される経済と政策金利の見通しについても市場の関心は高く、積極的な売買は見送られた。

●2.米国株は、5月消費者物価指数(CPI)が発表されたが、サプライズなしで、材料出尽くし

 1)5月CPIは+5.0%と予想+4.7%を上回ったが、CPIのコア指数が+0.7%と4月+0.9%を下回ったことから、インフレ加速懸念が後退した。CPIは+5.0%と予想を上回ったが、中古車価格上昇のウエートが大きく占めたのが原因で一時的と認識され、むしろコア指数の前月比低下したことに株式市場は着目した。

 2)インフレ加速懸念の後退で、長期金利が低下を好感し、SP500指数は史上最高値を更新、ハイテク株の多いナスダック総合指数も上昇した。

 3)ただ、株価の高値圏意識もあり、さらに上昇するには材料が必要。

 4)次の材料は、
  (1)6/15~16開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)
  (2)7月後半からの4~6月期決算発表
  待ちとなる。

 5)懸念される事項
  (1)米国株式市場に不透明感を醸し出す、GAFA規制法案の行方にも着目。

  (2)米証券取引所(SEC)による「ミーム株」(個人投資家によるゲームストップ、AMC株等の乱高下)の調査開始も注目。
   ⇒ 超金融緩和策のアダ花だが、その取引高は東証1部売買高を大きく上回る日々があり、SECの動向が膨張した風船を破裂させる可能性がある。
   ⇒ その際、金融市場のボラティリティが高い水準にあるだけに、急落に注意したい。

  (3)CPIへの継続的注意が必要
   ⇒ 5月CPI、特にコア指数の鈍化で株式市場はインフレ加速懸念が後退したと市場は受け止めたが、果たして本当にそれが正しいのか?
   ⇒ 異常な木材価格・食料価格の高騰、非鉄金属・原油価格の高値圏、人手不足による賃金時給の上昇などが、今後のCPI上昇に波及すること大とみる。『バブル期に入った症状』とも言えそう。
   ⇒ 5月CPIコア指数の方が、「一時的鈍化」と解釈するべきではないか。

●3.米下院、巨大IT企業の事業部分割を視野に、GAFA規制法案を議会に提出した(朝日新聞より抜粋

 1)米下院の超党派議員は6/11、GAFAと呼ばれる巨大IT企業への規制を強化する5つの法案を提出した。
  GAFA:グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン
  (1)プラットフォームによる独占禁止
  (2)プラットフォーム上での自社製品やサービスの優遇禁止
  (3)競争を阻害するような買収の禁止
  (4)利用者が、プラットフォームからタスや他社サービスに乗り換えやすくなるようにデータ移行をなどを容易に行えるようにする
  (5)規制強化の財源に充てるため、買収の申請料を上げる

 2)法案の補完事項
  (1)売上高の一定割合の罰金など、違反した際の罰則も定めた
  (2)「プラットフォーム」については、米国内の「一般の月間アクティブユーザーが5,000万人」、「時価総額6,000億ドル(約65兆円)」を超える企業と定義し、GAFAを明確に標的にした。

 3)上院での審議結果が関門となるが、立法できれば巨大IT規制の重大な転機となる。

●4.米・消費者物価指数は前年比+5.0%と、予想+4.7%・4月+4.2%を上回った(フィスコより抜粋

 1)物価指数が予想以上に伸び、新規失業保険申請件数がさらに減少したことを受けてドル買いと、米10年債利回りは1.49%⇒1.52%台まで上昇した。(6/11現在1.454%)

●5.米・先週分新規失業保険申請件数は37.6万件と、予想37.0万件を上回り悪化(フィスコ)

 1)パンデミック発生以降では最低水準となった。

 2)米・失業保険継続受給者数は349.9万人と、予想366.5万人から改善。

●6.米・6月ミシガン大学消費者信頼感指数は86.4と、予想84.2・5月82.9を上回る(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/10、上海総合指数+19高、3,610(亜州リサーチ)
  ・米中対立激化の過度な警戒感の後退が、投資マインドを改善させた。6/10、中国商務部の部長と米国商務省の長官とが電話会談し、貿易と投資推進を推進することで一致したと発表。
  ・中国10年国債利回りの上昇が一服したことも、投資家の買い安心感につながった。
  ・業種別では、ハイテク関連株の上げが目立ち、医薬品株も高い。反面、金融株は安い。

 2)6/11、上海総合指数▲21安、3,589(亜州リサーチ)
  ・米金融緩和の長期化観測などを好感し、買いが先行したものの、上値は重かった。
  ・米長期金利低下を受け、金融株が下げを主導した。
  ・食品・飲料や小売りの消費関連株も冴えなかった。

●2.中国、「反外国制裁法」を可決、G7による対中包囲網を牽制(時事通信)

 1)外国の対中国制裁に対して、中国内の資産凍結や入国禁止などの対抗措置を講じる、とした。(共同通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/10、日経平均+97円高、28,958円(日経新聞)
  ・ワクチン接種状況が順調だとの見方から、経済正常化を見込んだ買いが入った。
  ・反面、高値圏にある銘柄には利益確定売りも出て上値は重かった。
  ・米長期金利が1.5%を下回る水準に低下したことで、調整していた半導体関連株など値嵩成長株が買われて日経平均を押し上げた。

 2)6/11、日経平均▲9円安、28,948円(日経新聞)
  ・前日の米国株高を受けて買いが優勢で始まったが、勢いが続かなかった。
  ・日経平均の29,000円前後では、主力銘柄に対する利益確定の売りが出やすかった。
  ・エーザイなど医薬品株に買いが入ったが、後場に入って、方向感が乏しくなり横這い圏で推移した。
  ・東証1部の値下がり銘柄数は1,363と、全体の約6割を占めた。

●2.日本株上昇の条件

 1)上昇条件
  (1) 米国株の上昇
  (2) 日本でのワクチン接種率の上昇
  (3)資系短期筋の買い転換
  (4)日銀ETF買いの再開
  (5)好感を得られるイベント(好決算発表など)

 2)懸念される事項
  (1) G7と中国との対立が鮮明化
  (2) 米国経済成長のピークが4~6月期で、以降は鈍化するとの予測が出始めた
  (3) 中国経済成長率鈍化の可能性(経済指数で月次予想を下回る伸びが散見)
  (4) 米国株式市場での高値警戒意識
  (5)チャート的には米国株式市場は「三尊形成の最終段階」にあるともみえる
  (6)米国でのGAFAM規制が、米国経済成長を阻害する可能性

●3.企業動向

 1)台湾TSMC 熊本に日本初の半導体工場を検討へ(ブルームバーグ)
        300ミリのシリコンウエハーを使う大規模工場を建設する案を検討と伝わる。新工場は16ナノや28ナノの技術導入を検討している、としている。

 2)東芝    社外取締役4人が、会社側の人事案に反対し、異例の展開に(朝日新聞)
         大株主3Dは、東芝の取締役4人の即時辞任を求めた(ロイター)
         東芝は取締役選任で「問題視」の社外取締役2人退任へ(6/13)(読売新聞)

●4.企業業績

 1)HIS    旅行大手HISは、中間決算▲232億円の純損失で過去最大(朝日新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4062 イビデン   インテル向けICパッケージが主力。業績好調。
 ・4502 武田薬品   製薬。業績堅調。
 ・4452 花王     トイレタリー、化粧品。業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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