相場展望3月15日号 米景気回復でNYダウ高、金利上昇でナスダック安 物色の流れは、ハイテク株売り⇒景気敏感株買い

2021年3月15日 08:19

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)3/11、NYダウ+188ドル高、32,485ドル
  ・長金利上昇が一服しハイテク株が相場を牽引した。
  ・バイデン政権の追加経済対策が3/11に署名・成立し、景気回復が勢いつくとの期待から景気敏感株を含めて幅広く買われた。

【前回は】相場展望3月11日号 外国人短期筋は3/10、先物▲4.8万枚大量の売り NYダウ史上最高値も、ナスダックは音無し

 2)3/12、NYダウ+293ドル高、32,778ドル
  ・1.9兆ドルの追加経済対策法の成立と、バイデン大統領がワクチン接種を5/1までに全成人に受けられるように知事に指示すると述べたことも好感された。(証券新聞)

●2.米国株上昇の現状とリスク

 1)NYダウが史上最高値更新した3/12までの上昇要因
  (1)ワクチンは5月1日までに全成人に接種(バイデン大統領発言)でコロナ終息へ。
  (2)1.9兆ドル(206兆円)もの過剰な追加経済対策によるマネーのばら撒きで消費拡大。
  (3)2月物価上昇率の落ち着きと、米10年国債利回り低下。
  (4)2021年米企業利益見通しの上方修正。

 2)膨らむリスク
  (1)物価上昇:
   ・1人1,400ドル(15万円)現金支給で、一気に消費拡大を引き起こし、インフレ懸念となる可能性がある。なお、12月の1人600ドル支給で、1月の小売売上高は前月比+5.3%もの大幅高となっている。
   ・3月の現金支給額が余りにも大きいため、3月以降の景気拡大と物価上昇の反映に注目したい。
   ・アトランタ連銀は1~3月期の実質成長率を8.35%と予測している。

  (2)金利上昇:景気拡大とインフレが引き起こす米10年国債金利上昇。
   ・3/10 1.517% ⇒ 3/11 1.9兆ドル法案成立 ⇒ 3/12 1.625%と上昇した。
   ・2018年10月の3.259%⇒2020年3月の0.314%まで低下した。したがって、50%戻りとなると『1.8%』近辺まで金利高騰する可能性が浮上する。ならば、長期金利上昇は「まだ途上にある」といえる。

  (3)原油上昇:
   ・物価上昇への圧力が強い。
   ・WTI原油価格は昨年10/30の35.79ドル⇒今年3/11の66.02ドルと+84.4%も急騰している。
   ・バイデン政権の環境破壊の抑制政策で、原油生産増が厳しくなるため、WTI原油価格が100ドルまで上昇する可能性があるという意見もある。

  (4)株⇒債券:余剰資金が株式市場から流出して、債券市場に戻る可能性がある。
   ・株を売る動きが強まると、株安を引き起こすおそれがある。

  (5)増税:コロナ後は、楽観だけでは済まない。
   ・コロナで膨らんだ財政赤字を英国では法人税引き上げで対処する方針。
   ・米国でも増税の動きとなるリスクが高い。(個人・企業業績の悪材料)

 3)現在の相場の流れは、「ハイテク株買い ⇒ ハイテク株売り・景気敏感株買い」へ
  (1)NYダウは、景気回復期待の楽観論と企業業績も向上するとして景気敏感株を軸に株価上昇。
  (2)ナスダックは金利上昇で割高と見られてハイテク株中心に反落基調。

●3.『景気回復・インフレ・金利上昇』はセットであり、消費の急激な拡大はリスクを伴う

 1)1月小売売上高は前月比+5.3%と、大幅増となった。
  (1)12月個人への600ドル直接給付が寄与した。
  (2)2月は、1月の大幅増の反動で市場予想は▲0.2%ダウンと予想する。
  (3)3月も現金給付1,400ドルで、小売売上高は1月以上の大幅増を予想。

 2)原油価格の大幅上昇と、消費の急拡大は、物価上昇とインフレを招く懸念が増大。

 3)米10年長期金利は1.6%から1.5%への低下に連動して株価は上昇に転じたが、再び3/12に1.64%まで上昇(終値は1.625%)した。金利低下幅の50%戻りの『1.8%』近辺までの上昇の可能性を予想。

●4.ブラックロック予想「物価は高数値にシフトし、FRBは利上げ政策に変更」(ブルームバーグより抜粋

 1)2月米インフレ統計の落ち着きは物価上昇圧力が安定した環境を反映した一時的なもの。

 2)だが3月以降、力強い経済成長を背景に物価上昇は高い水準にシフトする可能性が高い。そのため、経済活動の活発化から将来的に米連邦準備制度理事会(FRB)に低金利政策の変更を迫る可能性がある。

 3)「米国の多くの地域でディスインフレ期が終了し、経済成長と物価が驚くほど高い水準に再評価されているのを眼の当たりにしている。再び深刻な新型コロナの流行で2番底に陥らない限り、2023年までに1回の利上げが行われる確率が60%ある、と市場は見ている」とリポートでコメントした。金融政策の変更は「目覚ましい経済成長に対応して段階的に行われる可能性が高い」と付け加えた。

●5.米10年債入札は、需要冴えず、応札倍率は2.28倍と平均割れ(ロイター)

 1)米財務省が3/11に実施した240億ドルの30年債入札は低調な需要にとどまった。最高落札利回りは2.295%と、入札前取引の水準よりも1ベーシスポイント高くなった。

 2)アクション・エコノミクスのキム・ルパート氏は「ひどい結果ではなかたものの、全般的に不調気味だった」と述べた。

●6.米10年国債利回りが3/12に再び1.625%と上昇

 1)3/11、懸念された米30年物国債入札が無事通過、10年物国債利回りは1.5%台前半で推移。

 2)3/12、ワクチン接種普及で景気回復の加速を見込み、10年国債利回りは前日比+0.08%高い(債券価格は下落)1.625%となった。なお、一時1.64%まで上昇した。

●7.米・先週分の新規失業保険申請件数は71.2万件と、予想72.5万件を下回り、昨年11月来で最低となった(フィスコより抜粋

 1)失業保険継続受給者数は414.4万人と、前回433.7万人から予想以上に減少し、パンデミックによる経済封鎖が始まった3月来で最低となった。

●8.米で景気過熱予想が台頭し、金融引き締めを警戒、市場に潮目(産経新聞)

●9.企業動向

 1)ボーイング  数十億ドルの737MAX受注の合意が間近=関係筋(ロイター)
 2)アップル   インドでiPhone12の組立て開始(ロイター)
 3)ノババックス コロナワクチン有効性96%で認可申請へ (ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数 

 1)3/11、上海総合指数+79高、3,436
  ・金融統計で新規融資とマネーサプライ市場予想を上回り投資家心理が改善、先週急ピッチの下落した反動もあり、景気敏感株に買いが入った。(亜州リサーチ)

 2)3/12、上海総合指数+16高、3,453
  ・政府の政策期待が持続する流れで株価は上昇したが、今週に公表される各種統計の内容を見極めたいとするスタンスが漂い、上値が重い。(亜州リサーチ)

●2.中国政府はソフトバンクなどに独占禁止法違反として3/12に罰金を科す(NHK)

 1)中国政府は、配車サービス最大手の滴滴と日本の携帯電話大手のソフトバンクが、日本で合弁会社を設立した際に、中国の独占禁止法で義務付けた手続きを行わなかったとして罰金50万元(800万円)を科したと発表した。

 2)今回はこの他に、SNSのテンセントや、ネット検索の百度など10社に対しても過去に行った事業買収などに関して同様に罰金を科した。

 3)中国政府は、影響力を拡大するIT企業への締め付けを強めており、今回の処分はその一環と見られる。

●3.日本の車載用空調大手「サンデン」を中国家電大手「海信家電集団」が214億円で買収(東洋経済)


■III.日本株式市場

●1.日経平均

 1)3/11、日経平均+175円高、29,211円
  ・米議会下院が1.9兆ドルの大規模経済対策可決で高値更新したのを受け、日経平均は買い優勢となった。
  ・ただ、決算対策としての利益確保による売りが重荷になった模様。

 2)3/12、日経平均+506円高、29,717円
  ・米国株高を受け、過度な警戒感が和らぎ、2/25(日経平均30,168円)以来の高値となった。
  ・米ナスダック高もあって、半導体や電子部品株に買いが広がった。

●2.日本株先物手口の動向は、『外資系の売りvs野村の買い』の構図になっており、注視したい

 1)外資系の先物手口を見ると、「外資系は、米国株が上昇しても、日本株を売り続ける姿勢であり上値を追う姿勢が見られない」状態となっており、強気相場の変化に警戒したい。
                2/25      3/12
  ・外資系先物買い残枚数は、283,641枚 ⇒ 195,922枚と急減(▲87,719枚減)。
  ・日経平均は、       30,168円 ⇒  29,717円と低下傾向。

 2)先物の売り筆頭の野村は、外資系の売り攻勢に対し買い向かっているため、日経平均の下落幅は限定的となっている。
  ・野村の売り残枚数は、 ▲157,029枚 ⇒ ▲85,184枚と急減(▲71,845枚減)

 3)いずれにしても、日経平均は3/12に+506円と大幅高したが、外資系の売り姿勢が変わらない限り、上値を駆け上がる勢いが付かないと思われる。

●3.アフターコロナは増税が待ち受ける

 1)政府は、コロナ対策でばら撒いた結果の財政赤字を、増税で対処する可能性を予想する。
  ・英国は法人税引き上げで対処する方針との報道。
  ・日本では消費税引き上げと推測。

 2)コロナ終息は、楽観的で良いことばかりではないことを認識する必要がある。

●4.日銀、「年6兆円ペース」のETF購入原則を削除する方向(ブルームバーグ)

 1)日本銀行は3/18~19の金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)の購入について、『上限、年12兆円は維持』しながら、「年6兆円ペース」としている購入原則を削除する方向だと3/12付きの毎日新聞朝刊が情報源を示さず報じた。
 
 2)株式市場への影響は「限定的」と見ている。

 3)日銀は1月にETFの1回当たり買入額を減額し、2月は買入実施条件も厳格化した。通常のETF買入額は1月が2,004億円、2月は2015年10月以来の少なさとなる501億円にとどまった。米金利高では「緩和が後退したように受け取られないようにしてくる」と推察する。

●5.3月日銀会合で9割がET購入額の柔軟化を予想、金利変動拡大は2割 (ブルームバーグより抜粋

 1)調査によればエコノミスト46人のうち43人が、日銀ETF購入の柔軟化を3月に発表する可能性が「非常に高い」または「高い」と回答した。

 2)日経平均株価が一時3万円を超えるなどバブル後の最高値圏で推移する中、日銀によるETF買入を疑問視する声が増えていた。

●6.東京都心5区の2月オフィス空室率が5.24%に上昇、5年8カ月ぶり(朝日新聞より抜粋

 1)大規模なビルが多い港区は6.88%、IT企業が集積する渋谷区は5.55%、製造業の本社が多い千代田区は3.85%とい地域差が出ている。
 
 2)市況の悪化を受けて、賃料も下落傾向。2月平均賃料21,662円/3.3平方メートル(ピーク23,000円)

●7.企業動向

 1)武田薬品   米バイオベンチャー「マーベリック」を570億円で買収(時事通信)
 2)藤田観光   コロナ禍で業績悪化し、基本給を▲3~▲16%減(時事通信)
 3)岩谷産業   燃料電池車用の水素ステーションを2021年度20カ所増設(朝日新聞)
 4)楽天・郵政  インターネット販売と物流・金融の組み合わせで資本提携へ(時事通信)
         日本郵政が楽天に1,500億円の出資、約8%で第4位の株主(朝日新聞)
         楽天は米ウォルマート、中国テンセント等から出資総額2,423億円調達。楽天は増資資金で携帯基地局整備に充当し携帯電話事業を強化(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6326 クボタ   穀物価格高騰で米国での農機販売増を期待。
 ・2607 不二製油  業績堅調。
 ・3141 ウェルシア 業績順調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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