ラーメンチェーン幸楽苑HDがECモールに再出店した意義

2019年1月14日 11:42

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 楽天市場に出戻った幸楽苑ホールディングス(以下、幸楽苑HD)は、本業のラーメン事業の支え役に成りうるのだろうか。幸楽苑HDは2010年に楽天市場に出店した。が、翌11年に早々に退店。そして昨年9月に再出店した。「最初の出店時の教訓を活かして」と強調している。

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 幸楽苑HDは18年3月期の営業損益で7200万円の赤字に陥った。だが今期は「0.3%の増収、6億2900万円の営業黒字」計画で立ち上がり、中間期開示時点で通期予想を「1.9%の増収、営業利益11億7500万円」に上方修正している。しかしアナリストも指摘する様にその背景は「主業のラーメン事業の底上げに求めることはできない」。前期段階で福島の不採算店(16店舗)と店名「伝八」で展開するとんかつ店をフランチャイジーとして「いきなりステーキ」の店舗に衣替えし、ラーメン事業の軟調を補った効果だ。

 上方修正(10月26日)を契機に株価は、27日の1563円から2334円(12月7日)まで50%近く上昇した。「株価は市場が決めること」は百も承知で記すが、これは異様な値上がりと言わざるをえない。理由は2点。まずラーメン業の黄ランプの点滅である。上方修正に至る4-9月期の既存ラーメン店の前年同期比動向は96・4%と100%を大きく下回っている。2点目は「いきなりステーキ」への店舗転換は完了し、効果は一巡するからだ。

 そこで楽天市場への出戻りが主業の後押し材料になるのか否かが、クローズアップされてくる。前回の出店時はラーメン関連の食品を冷凍・冷蔵・常温の3商品で展開した。商品管理と出荷体制が煩雑になり、配送段階での遅れが生じた。また東日本大震災で福島工場からの出荷が滞ってしまった。教訓を生かし今回は「冷凍」物だけを扱うことにした。かつ商品価格は消費税・配送料を含めて店頭価格より高めに設定。餃子とラーメンのセット商品が売れ筋となり「11月の売上高は10月比倍増」。

 だが今期のEC部門の売上高は500万円予想。幸楽苑HDの総売上高に占める割合は1%余り。「仕切り直ししたECの動向に注目というのはおかしい」と言う声が聞こえてくる。が、言うなかれ。主軸の収益が本格的な切り返しに転じる時には、売り上げの多寡云々とは別に「勢い」という風が吹くことが不可欠だからである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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