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ニッスイ、完全養殖「黒瀬ぶり」でフィッシュレザー開発 テスト販売開始
namino leatherのイメージ(画像:ニッスイの発表資料より)[写真拡大]
ニッスイは24日、グループ会社の黒瀬水産が養殖している「黒瀬ぶり」の皮をアップサイクルした、フィッシュレザー「namino leather(ナミノレザー)」を開発したと発表した。完全養殖で通年出荷できる黒瀬ぶりの資源を有効活用する。今春より、サステナビリティへの関心が高い欧米や国内アパレルメーカーなどに向けてテスト販売を始める。
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ブリを三枚おろしに加工する工程で発生する、頭・骨・皮といった食用にしない部分は、これまで肥料などに再利用してきた。さらなる活用方法として、社内公募に寄せられた、魚の皮を革製品にするアイデアを採用。開発・生産は、国内の皮革なめし業者(タンナー)の協力を得て行った。
ナミノレザーの特徴は、ブリ皮の細かな鱗による滑らかな質感だ。一般的な皮革と同様に加工でき、目安サイズは、横幅35~45cm、縦は頭側で15~20cm、尾側で5~10cm。なめしには自然由来のタンニンやクロムフリーの合成タンニンを用い、環境負荷を抑えている。
カラーバリエーションがあり、箔押しを施した革など複数のラインアップを用意。活用例として、カードケースといった小物類や、草履の鼻緒、鞄の持ち手などを挙げている。
フィッシュレザーは、環境意識の高さなどから欧米が主要マーケットとされているが、近年、国内でも製品化の動きがある。事業者は現在、アパレル領域のベンチャー企業や地場の水産加工業者が中心。地元の水産物から出る魚の皮を活用して製品化し、ネットショップなどを通じて、国内外に販売している。
ニッスイのナミノレザーには完全養殖のブリを用いる。黒瀬ぶりは、飼育魚から採卵・孵化させた人工種苗を成魚に育て、産卵させるといった一連のプロセスを人の管理下で行っている。
2004年にブリ養殖を始め、22年度から出荷魚の全量を人工種苗で生産。一般的なブリの養殖で行われる天然の稚魚の漁獲に依存しない、持続可能な養殖として推進している。
完全養殖にあたっては、任意のタイミングで人工的に採卵できるブリの「成熟制御」技術や、健康な人工種苗を生産・育成する技術などを開発。夏場に身が痩せることもなく、一年を通して安定した品質・サイズのブリを提供できる。年間生産数量は約200万尾。25年2月には、年間300万尾の出荷を目指し、黒瀬水産の加工拠点の設備投資を行った。
背景にはニッスイの長期ビジョン「Good Foods 2030」(22年度着手)がある。サステナビリティ経営の推進を軸とし、養殖事業は30年度に、売上高1,000億円・営業利益100億円規模に拡大することを目指している。
黒瀬ぶりを活用したナミノレザーはその一環で、資源を有効活用しながら、既存事業との相乗効果が見込める新規事業と位置付けている。(記事:三部朗・記事一覧を見る)
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