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トヨタとマツダの資本提携に秘められた”深謀遠慮”(前編)
提携発表の記者会見で握手するトヨタの豊田社長(左)とマツダの小飼社長。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]
8月初旬にトヨタとマツダの資本提携が発表された。提携の目的は(1)両社共同の製造拠点を北米に新設し2021年に稼働、(2)EV(電気自動車)の共同開発、(3)通信やビッグデータを活用したコネクテッドカーでの連携、(4)将来的に自動運転へとつながる高度な運転支援システムでの連携、そして(5)商品(モデル)の相互補完である。
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たまたま発表の時期の直前に、フランスとイギリスの両政府が「2040年までにガソリンおよびディーゼルエンジン搭載車の使用禁止」という政策を発表していたことや、大手自動車メーカーにも同様の動きが伝えられていたことも重なり、両社がEV目的で資本提携すると強調する報道が目に付いた。
ところが、共同記者会見でトヨタの豊田章男社長は、提携強化の目玉を4年後を目途に米国での新たな合弁の製造工場を稼働させることだと明言していたのである。無理筋の米国生産拡充を強面に要求するトランプ米大統領の発言との因果関係は否定しているものの、保護主義化する米国で持続的なプレゼンスを確保するための手を打ったということだ。もちろんその事業を推進する上では、近年自動車業界の大きな話題となっているEV、コネクテッドカー、自動運転との関連・調整を進めることが予想されるため、当然目的の中に組み込まれた。
さらに、上記の共同記者会見の4日後にマツダは「スカイアクティブ―X」と名付けた次世代エンジンの投入を発表した。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を組み合わせ低燃費、高出力の走りを実用化させようというのである。この新型エンジンは燃焼方式を従来の火花点火(SI:Spark Ignition)から圧縮着火(CI:Compression Ignition)に変更させるもので、空燃比を大きく高めたスーパーリーンバーン(超希薄燃焼)を実現し、熱効率を大きく高めることで、同社の現行ガソリンエンジンに比べて、エンジン単体の燃費率を最大で20~30%程度、トルクを全域の平均で10%以上、最大で30%改善されるという。同社の小飼雅道社長は次世代エンジンを「内燃機関革命の第2弾」との位置付けで、「極限までCO2排出量削減を進める」ための基盤技術にするという。この二つの動きは連動していると考えるべきだ。
(後編)へ続く(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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