日経平均6万円への最終秒読み 地政学リスクを収益化する「新生・日本」の覚醒

2026年4月20日 17:11

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 東京株式市場は、歴史的な転換点を迎えている。高市早苗政権の経済政策「サナエノミクス」への期待から始まった今春の相場は、3月のイラン紛争勃発による一時的な冷え込みを乗り越え、日経平均株価はいまや未踏の6万円大台を目前に捉えている。

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 4月8日の停戦合意を経て、市場は中東情勢の緊迫を単なるリスクから「防衛の産業化」という収益機会へと再定義した。

 グローバルマネーは今、日本を地政学的変動を成長へと転換させる「戦略的市場」として再評価している。

■防衛産業の構造的成長と受注残高の拡大

 現在、株式市場で一際強い存在感を放っているのが、三菱重工業(コード:7011)や川崎重工業(コード:7012)に代表される防衛・宇宙セクターである。3月の有事と、それを受けたトランプ政権による同盟国への「軍事的自立」要求は、日本の防衛産業をボランティア的な受注構造から、高収益な成長セクターへと変貌させた。

 2026年度(令和8年度)予算において、防衛関係予算は過去最高の9兆353億円(前年度比3.8%増)が計上された。これを背景に主要企業の受注残高は過去最高水準を更新し続けている。

 三菱重工業が2月に発表した第3四半期決算では、事業利益が前年同期比25.5%増の3,012億円と大幅な伸長を見せ、通期予想を上方修正した。5月に控える本決算では、装備品の長期契約化と輸出解禁に伴うさらなる利益率改善が確実視されており、同社のROE(自己資本利益率)向上は日本株全体の質的変化を象徴している。

■資本効率改善と「セーフヘイブン」としての再評価

 日本市場全体の「稼ぐ力」の向上も、株価を押し上げる強力なエンジンとなっている。トランプ政権による「第二次マキシマム・プラッシャー(最大限の圧力)」に伴う原油高懸念は残るものの、日本株が選好される理由は、企業によるROE向上とPBR(株価純資産倍率)改善が着実に定着している点にある。

 半導体製造装置大手の東京エレクトロン(コード:8035)は、生成AI向け設備投資の拡大を背景に、2月6日の決算発表で通期業績予想を上方修正し、配当増額も打ち出した。先端技術への巨額投資と機動的な株主還元を両立させる同社の姿勢は、国際投資家における日本株の評価を「質の高い割安」へと変質させた。

 中東情勢のボラティリティが高い今、ガバナンスの規律が守られ、かつ地政学的リスクを「受注」という形で収益化できる日本市場は、相対的に最も安全で魅力的な「セーフヘイブン(避難先)」としての地位を確立しつつある。

■2026年後半に向けた展望:6万円定着への課題とリスク

 2026年後半に向けて、日経平均6万円の定着には、製造業における利益率改善の持続性が鍵となる。新年度予算の執行が本格化する中、リスク要因として注視すべきは、米国第一主義による関税引き上げが輸出企業に与える打撃、およびエネルギー価格の再高騰に伴う輸入インフレの再燃だ。

 しかし、高市政権による積極的な財政出動と、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を通じた構造的な内需の底上げが、これら外部要因を吸収できるかが焦点となる。

 投資上の注意点としては、株価収益率(PER)の過度な期待先行を警戒しつつ、PBR1倍割れ解消という「底上げ」が継続するかを注視すべきである。2026年末に向けて、日本企業の収益構造の転換が証明されれば、日本株の再評価(リレイティング)はさらなる高みへと進むだろう。(記事:今福雅彦・記事一覧を見る

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