IHI、二酸化炭素原料に持続可能な航空燃料を製造へ 年内に試験開始

2024年6月28日 09:09

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試験装置の設置イメージ(画像:IHIの発表資料より)

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  • SAF構想のイメージ(画像:IHIの発表資料より)

 IHIは24日、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の合成技術の開発に向け、プロセス検証のための試験装置をシンガポールに設置すると発表した。水素と二酸化炭素(CO2)からSAFの原料を合成する、一連のプロセスを検証する。

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 合成技術の開発はこれまで、シンガポール科学技術研究庁傘下の研究機関で、持続可能エネルギー・化学品の開発などを行っている「ISCE²」と共同で進めてきた。新たな試験装置は、ISCE²の敷地内で9月までに設置予定となり、年内に小型スケールの試験を開始する。

 IHIとISCE²は、22年9月よりSAFの合成技術の共同研究を開始。互いが持つ触媒技術を用いながら、SAFの原料となる液体炭化水素を、水素とCO2から高効率に合成する技術の開発を進めてきた。合成プロセスや化学反応を起こさせる反応器は、IHIが主に開発を担当。開始時点では、3年間で触媒の要素開発を終えるという目標を掲げていた。

 その3カ月後となる同年12月には、SAFを合成する新触媒を開発。開発にあたっては、機械学習などを用いながら、触媒組成や反応条件などの探索・調整を進め、高い合成性能を持つ触媒を開発した。ラボで行った触媒反応試験では、CO2に含まれる炭素のうち、液体炭化水素に変換された割合(収率)は26パーセントに達し、世界トップレベルの性能を記録している。

 新設する試験装置では年内に、100キログラム/1日のCO2を注入する小規模な試験を行う予定。試験では、触媒の性能に加えて耐久性も評価する。また、合成プラントの運転条件の最適化や、反応器のデータ取得などにも取り組み、プロセス全体を検証するという。

 背景には、航空分野での世界的な脱炭素の動きがある。国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)は、22年10月に行った総会で、国際線の航空機が排出するCO2を2050年に実質ゼロにする長期目標を採択。その中で、SAFの生産増加と利用拡大の必要性についても触れている。

 IHIはそうした流れを受け、CO2を活用したSAF合成技術の開発を推進。試験装置の設置を、開発の「次のステージ」と位置づけて取り組む。その先に、大気中から回収したCO2による、高効率・安定的なSAF製造技術の早期確立と商用化を目指す。なお、今回の発表は好材料視され、24日のIHI<7013>の株価は、続伸している。(記事:三部朗・記事一覧を見る

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