京都の電子部品関連3社の2023年4-9月期決算

2023年11月20日 09:04

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記事提供元:エコノミックニュース

中国の景気減速もあり通期は減収  見通しで揃うが、各社積極投資姿勢は堅持

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中国の景気減速もあり通期は減収 見通しで揃うが、各社積極投資姿勢は堅持

 11月1日、京都市とその周辺に本社がある日本電産改めニデック、村田製作所、ロームの電子部品「京都3社」の2023年4-9月期(中間期)決算が出揃った。

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻から1年以上が経過。世界経済は、エネルギー、原材料価格の高騰はやや落ち着きをみせているが、先進国でのインフレ、金利上昇の波は止まらず、日本も金融政策の修正に動いている。そして中国の景気後退による影響は、電子部品マーケットではスマホ、PCからEV(電気自動車)などモビリティ需要にもひろがっている。

 「京都3社」の業績もそれらと無関係ではなく、ニデックはEV需要の縮小を受けてEV向け駆動装置の販売目標を2回も下方修正した。2023年4-9月期決算は、ニデックは4-9月期は増収増益でも通期見通しは減収増益、村田製作所、ロームは4-9月期も通期見通しも減収減益となっている。各社は、たとえばロームの東芝への資本参加、宮崎県のSiC半導体工場新設のような将来へ向けた積極投資姿勢は維持しつつも、当面の需要低下の局面をなんとか乗り切っていかねばならない正念場にある、と言えそうだ。

なお、10月1日付で村田製作所は1株を3株に、ロームは1株を4株に分割する株式分割を実施した。

■ニデックは構造改革と円安効果で増収増益で着地

 ニデック(Nidec/旧・日本電産)の2023年4-9月期決算(国際会計基準/IFRS)は、売上高は2.6%増の1兆1606億円、営業利益は20.1%増の1157億円、税引前利益は22.8%増の1453億円、四半期利益は22.4%増の1060億円という増収増益決算だった。

 1株当たり四半期利益は184.62円で前4-9月期の150.31円を上回った。中間配当は前年同期から据え置きの35円となっている。

 製品グループ別では、創業以来の「精密小型モータ」部門は、HDD用モータが販売数量を減らし、円安による約83億円の増収効果があっても外部売上高は31.5%の大幅減収。その他の小型モータも3.2%の減収で、トータルで8.5%の減収となった。営業利益は固定費を大きく減らしても減収と製品構成の変動が影響して、29.2%の大幅減益になっている。

 「家電・商業・産業用」部門は外部売上高5.8%増、営業利益53.1%増の増収・大幅増益だった。増収の主役は発電機やクリーンエネルギー需要の追い風を受けたモーション&エナジー事業本部で、増益の主役は固定費の大幅低減を推進する「WPR-Xプロジェクト」による構造改革、原価改善の進捗で、円安が約222億円の増収、約21億円の増益で寄与している。

 ニデックの最重要分野「車載」部門は、外部売上高は11.0%増だか営業利益が199.5%増で、収益力が大きく改善した。中国EV市場は成長率が頭打ちになっても、グローバルベースの自動車生産台数の回復と円安効果(約116億円の増収)が増収に寄与。トラクションモータシステム「E-Axle」の製品構成の良化、構造改革による固定費低減、約6億円増益の円安効果があいまって大幅増益となった。

 

 前期は堅調だった「機器装置」部門は、外部売上高4.5%減、営業利益16.3%減とふるわなかった。半導体検査装置の減収が利益面でも悪影響をもたらしている。「電子・光学部品」部門は外部売上高3.6%増、営業利益1.9%増、「その他」部門は外部売上高13.2%増、営業利益4.4%増で、どちらも増収増益のペースにブレーキがかかっている。

 

 概観すれば、中国経済の減速で情報機器やEV向けモーターが減速したのを、北米市場のインフラ更新需要で発電所向けの産業用モーターが伸びてカバーした形になっている。

 2024年3月期の連結業績予想は修正せず、売上高は前期比1.9%減の2兆2000億円、営業利益は119.8%増(約2.2倍)の2200億円、税引前利益は74.1%増の2100億円、当期利益は266.6%増(約3.6倍)の1650億円のまま。V字回復で過去最高益更新を狙う強気の見通しを崩していない。予想1株当たり当期利益も過去最高の287.08円。予想配当も修正はなく、期末配当は前年同期据え置きの35円、年間配当は前年同期据え置きの70円となっている。

 最大の懸念は中国経済の減速と競争の激化でEV需要の回復の見通しが立たないことで、EV向け駆動装置の販売目標を2回にわたって下方修正している。永守重信会長兼CEOは決算説明会で、開発費の積み増しも響いてEV向け部品事業は当初の黒字化予想を撤回し、通期で「150億円の営業赤字になる」と述べている。

 それでも中期戦略目標「Vision2025」では、「車載」部門は「家電・商業・産業用」部門と並ぶ事業の柱だと位置づけ、2025年度の売上高の自立成長目標は1兆円、新規M&Aを含めた挑戦目標は1.3兆円で、ニデック全体の売上高目標を「4兆円」に置いている。

■村田製作所は円安効果で通期予想の減益幅圧縮

 村田製作所の2023年4-9月期決算(今期から米国基準を国際会計基準/IFRSに変更)は、売上収益は11.9%減の8103億円、営業利益は30.7%減の1389億円、税引前四半期利益は25.7%減の1612億円、四半期利益は22.6%減の1251億円という2ケタ減収減益決算だった。前期から引き続き厳しい業績が続いている。基本的1株当たり四半期利益は前4-9月期の84.98円から66.25円へ減少している。なお、2023年10月1日に1株について3株の割合で株式分割を行っている。中間配当は前年同期から据え置きの75円となっている。

 エレクトロニクス市場の部品需要は、半導体不足の緩和による自動車生産台数の回復でモビリティ向けは伸びたが、世界的なインフレ、中国の景気減速に伴う民生用電子機器の最終需要低迷がPC向け、スマホ向け、家電向けなど幅広い分野の需要を冷やしている。そんな状況が村田製作所の業績を大きく悪化させる結果につながった。

 用途別売上収益は、自動車生産台数の世界的回復、円安による増収効果が効いたモビリティこそ13.0%増だったが、通信は12.3%減、コンピュータ28.1%減、家電27.4%減と、産業・その他17.2%減の2ケタ減収になっている。

 事業セグメント別売上収益には増収分野がなく、コンポーネントはコンデンサ、インダクタ・EMIフィルタがモビリティ需要に支えられて7.7%減にとどまったが、デバイス・モジュールは16.8%減で、高周波・通信15.8%減、エナジー・パワー21.6%減、機能デバイス10.6%減と2ケタ減収で揃った。その中で健闘した製品はスマホ向けの高周波フィルタと、モビリティ向けのセンサぐらいしかなく、前期好調だった家電分野のリチウムイオン二次電池も4-9月期は減収となっている。

 2024年3月期の通期業績見通しには修正がある。売上収益は、パワーツール市場、PC周辺機器の需要減を受けて当初見通しの1兆6400億円を前期比4.0%減の1兆6200億円へ200億円減額。営業利益は当初見通しの2200億円を9.5%減の2700億円へ500億円増額。税引前利益は当初見通しの2200億円を1.5%減の2980億円へ780億円増額。当期利益は当初見通しの1640億円を7.8%減の2250億円へ610億円増額。減収幅を拡大しながらも減益幅は圧縮している。その理由は円安効果と準変動費・固定費の圧縮だが、それでも2期連続の減収減益予想に変わりはない。

 予想1株当たり当期利益は119.10円。ただし、2023年10月1日に1株について3株の割合で株式分割を行ったため、それを考慮しなければ357.30円になる。期末予想配当は25円だが、株式分割を行っているため実質的には前期同期(75円)比で据え置き。年間予想配当100円も実質的には前期(150円)比で据え置きになる。

 設備投資額は前期比5.7%増の2200億円、研究開発費は4.6%増の1300億円を見込んでおり、業績予想は厳しくても6ギガヘルツ帯対応のWi-Fiモジュールの量産を開始し、タイにスマホ向け電子部品の新工場を完成させて11月から稼働するなど、将来に向けての積極投資姿勢は崩していない。中・長期ではスマホ需要の回復、EVの成長を見込み、コンデンサの長期的な成長にも期待している。

■ロームは通期減収減益だが投資意欲旺盛

 ロームの2023年4-9月期決算(日本基準)は、売上高は7.9%減の2393億円、営業利益は40.8%減の298億円、経常利益は29.4%減の500億円、四半期純利益は28.4%減の373億円で2ケタ減収減益決算となった。電子部品業界を取り巻く環境の悪化に直撃されている。1株当たり四半期純利益は前4-9月期の132.79円から95.375円へ減少している。なお、2023年10月1日に1株について4株の割合で株式分割を行っている。中間配当は前年同期から据え置きの100円となっている。

 セグメント別では、前期はまだ好調だったLSIの売上高は前年同期比8.3%減、セグメント利益は31.3%減と業績悪化。自動車用では各国のEV(電気自動車)の普及促進策でパワートレイン向け絶縁ゲートドライバICなどの高付加価値商品や、高性能半導体パワースイッチIPD、車載向けLEDドライバIC、エアコン向けモータドライバなどが伸びたが、民生機器のAV機器、白物家電向けがおおむね売上減に見舞われた。さらにコンピュータ&ストレージ市場向けの電源IC、FANモータドライバICや、産業機器市場、通信市場向け市場も状況が厳しく、総じて減収減益になった。

 半導体素子は売上高6.8%減、セグメント利益31.3%減で、前期とはうって変わって減収減益。自動車関連はトランジスタ、ダイオード、パワーデバイスが「xEV」中心に引き続き好調だったが、民生機器市場、コンピュータ&ストレージ市場向けは厳しい状況が続き、民生機器市場向けの発光ダイオード、半導体レーザーも低迷が続いた。

 モジュールは、前期は悪かったオプティカル・モジュールのスマホ向けセンサモジュールは回復したものの、プリンタヘッドが決済端末向けを中心に売上を落とし、売上高は7.2%減ながらセグメント利益は32.0%減と、大きく悪化した。                                                                                                                                                                                                                             く悪化した。

 その他の分野は売上高14.2%減、セグメント利益59.6%減と大幅減益で着地。抵抗器で自動車市場向けの高電力抵抗、シャント抵抗のような高信頼品は順調だったが、産業機器市場向けの製品群が収益の足を引っ張った。 

 2024年3月期の通期業績見通しには修正がある。売上高は当初見通しの5400億円から前期比1.6%減の5000億円へ400億円減額。営業利益は当初見通しの750億円から42.6%減の530億円へ220億円減額。経常利益は当初見通しの870億円から36.1%減の700億円へ170億円減額。当期純利益は当初見通しの700億円から26.6%減の590億円へ110億円減額。下方修正によって当初見通しの増収減益予想から減収減益予想に変わった。

 通期のセグメント別見通しは前期比で半導体素子は2.4%増収、モジュールは0.5%増収だが、LSI(5.2%減)、その他(3.5%減)の減収幅がそれを上回り、トータルで減収に変わった。想定為替レートは1米ドル=140円を見込み、当初見込みから10円、円安方向に修正したが、円安効果が出ても減収は避けられない見通しとなっている。

 予想1株当たり当期純利益は151.77円。ただし、2023年10月1日に1株について4株の割合で株式分割を行っているので、それを考慮しなければ607.08円になる。予想期末配当は25円、予想年間配当は125円だが、2023年10月1日に1株について4株の割合で株式分割を行っているので、どちらも実質、前期比で据え置きになる。

 足元の業績は厳しいが投資意欲は旺盛で、通期の設備投資は前期の1261億円から339億円上乗せした1600億円を計画。これは前々期の799億円から2年でほぼ倍増という勢い。その焦点が2024年稼働開始予定の宮崎県国富町に新設する宮崎第二工場で、次世代のパワーデバイス、8インチSiCパワー半導体の量産体制が整う。SiC事業の売上目標は2025年度は1300億円、2027年度は2700億円で、ロームの収益の大きな柱になると見込まれる。

 また、東芝に対し、投資ファンドを通じて普通株、優先株で3000億円を出資した。松本功社長は11月1日の決算説明会で「投資に対する相応のリターンがあると考えている」と述べ、東芝との協業の可能性についても言及している。東芝の半導体事業との親和性は高くさまざまなシナジーを創出できる可能性があると説明されているが、東芝の株式非公開後に具体的な協議に入るので、ロームの業績に効果があらわれるのは早くても2024年度以降になりそうだ。(編集担当:寺尾淳)

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