三井不、築46年の旧耐震賃貸住宅でリファイニング建築に着工 7号目

2023年9月29日 08:38

印刷

外観イメージ(画像:三井不動産の発表資料より)

外観イメージ(画像:三井不動産の発表資料より)[写真拡大]

  • 補強イメージ・耐震補強壁(画像:三井不動産の発表資料より)
  • 補強イメージ・開口閉塞(画像:三井不動産の発表資料より)
  • リファイニング建築のプロセス概要(画像:三井不動産の発表資料より)

 三井不動産は25日、7号目となるリファイニング建築物件を着工したと明らかにした。物件は、1977年に建てられた築46年の賃貸共同住宅で、場所は東京都文京区本駒込。青木茂建築工房独自の建築手法である、リファイニング建築を活用し、建て替えせずに躯体補修や耐震補強などを行う。

【こちらも】三井不動産と東京ガス、東京・八重洲に自立分散型のエネルギー供給拠点

 リファイニング建築は、青木茂氏が1999年に提唱した、既存建物の構造躯体を約80%再利用する再生建築手法だ。耐震性能に関わらない壁や設備を解体・撤去し、建物を軽量化した上で、躯体補修と耐震補強を行う。1981年以前に建てられた旧耐震基準の建物を解体せず、現行の建築基準に適した建物に再生できる点が特徴。内外装や設備なども同時に刷新できる。

 三井不動産と青木茂建築工房は業務提携を結び、2017年頃からリファイニング建築を推進。渋谷区や目黒区など、東京都内を中心に建物再生を行ってきた。22年5月には、新宿区で築51年の共同住宅を再生。今回の本駒込はそれに次ぐ着工となる。

 リファイニング建築のメリットは複数ある。まず、建物規模の維持が可能なことだ。建て替えすると現行法の日影規制や都市計画などで規模を縮小せざるを得ない建物でも、建築基準の緩和措置を受けられ、現行の規模を維持できる。ちなみに本駒込の物件は7階建で、規模縮小に該当する物件だったという。

 耐震補強による外観や眺望の悪化も防げる。外付けの耐震補強であるブレース工法だと、外観デザインを損ね、居室内からの眺望も妨げられる。それに伴い、賃料や稼働率の下落を招くおそれがある。リファイニング建築では、外観に影響を及ぼさない配筋や新規耐震壁の設置などを行うため、そうした懸念も払拭できる。

 また躯体の再利用で建築資材の製造を減らせるため、CO2排出量の削減にもつながる。2021年に東京大学新領域創成科学研究科の清家教授と三井不動産が行った共同研究では、建て替えと比べCO2排出量を約72%削減すると判明。結果を受け、脱炭素社会に向けた対策にもなり得ると位置付けている。

 その他、建築費用の低減や工期短縮も可能。建物補修や事業性確保などにより長期借入もできるという。

 関東大震災の発生から今年で100年。巨大地震のリスクも高まっているが、国土交通省の調査では、耐震性を満たしていない住宅は全国で約700万戸あるという(2018年時点)。その8割は戸建住宅だが、共同住宅も約140万戸存在。国交省は、耐震性が不十分な住宅を2030年には概ね解消すると掲げているが、足元では建築資材の高騰やSDGsへの要請、建設業の「2024年問題」、空き家の増加など課題が山積している。

 三井不動産は今後も、リファイニング建築事業を推進し、耐震改修と脱炭素社会の実現に向け取り組んでいくという。単なる建て替えや再開発ではなく、建物を再生させ環境負荷も少ないリファイニング建築の今後の展開が期待される。(記事:三部朗・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事