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自動車メーカーの企業合併についての課題
Photo:仕事探しの強い味方ハローワーク (画像提供 厚生労働省)[写真拡大]
2024年12月23日発表された「ホンダと日産の経営統合」の話は、2025年2月13日、破談となった。だが巷の噂では、日産の現社長が交代し、指導力を発揮して日産社内の意見統一が実現できる体制になったら、ホンダは再交渉のテーブルに着いても構わないとの考えがあるとか言われている。
【こちらも】ホンダと日産の破談
ここでは、自動車メーカー同士が合併する場合の課題をいろいろ考察して見たい。
●部門によって異なる従業員の立場
技術系の従業員と、営業系の従業員のモチベーションは、全く異なるだろう。
事務管理部門の立ち位置は、技術系と営業系とも異なる筈だ。
企業が合体した場合、必ず重複する部門が存在するから、余剰人員は必ず発生する。
●3:4:3の原則
いろんな説(例えば2:6:2とか、比率の数値の違い)があるが、一般的に良く言われるのは「3:4:3」である。
その意味は、会社にとって「いて欲しい人材30%:いても構わない人間40%:辞めて欲しい奴30%」の比率であるとの説である。
唯、面白いことに、もし下層の30%を排除できても、残りの70%が再度3:4:3の層に分かれると言う。
100人のうち、下位の30人がいなくなっても、残る70人のうちの20人程度は、辞めて欲しいレベルのパフォーマンスしか発揮しないそうだ。
●実際の人員整理
一般的には、失業した場合に頼る先は「ハローワーク」となる。
極めて有能な人間には縁遠いが、普通の能力なら非常に力強い存在だ。
人員整理する場合、単純に考えれば「仕事の出来る人間」と「パフォーマンスの悪い人間」に分けて、リストラされるのは「パフォーマンスの悪い人間」と考えるのが普通だろう。
会社都合での人員整理では、退職候補者全員に、再就職先の面倒を見る人材会社を利用して、何とか全員をどこかの企業に当てはめようとする。
しかし現実問題としては、どこに行っても通用する優秀な人間は、余裕でよその企業に就職して行く。
業界内で名の知られた人材は、他社からハンティングされるケースもある。
有能な人材は、どこに行っても「つぶしが効く」のだ。
逆に現在の会社で、永年勤続した以外に取柄の無い人間は、「希望退職」に応募する勇気も無くて、最終的に「人員整理」対象リストに載るまでは、会社にしがみ付こうとする。
●事務管理部門の場合
事務部門の人間は、自動車メーカーで無くとも、その業態独自の購買関係等を除けば、経理、人事・労務、総務、管財、法務等の業務は一般論としては、殆どの業種でも応用が利くと考えられる。
●技術部門の場合
昨今のEV車関連では、多少様相は異なるが、一般論としての自動車メーカーの技術部門は、同業他社と極端に異なる業務を担当している訳は無く、業務内容には大きな相違点は無い。
操舵システムの開発要員、ブレーキシステムの開発要員に例をとれば、極端な相違点は無い筈だ。
その場合、同じ「ファミリーカークラス」のA社○○車のブレーキシステム開発者と、B社△△車のブレーキシステム開発者にとって、○○車が月販1万2,000台で、△△車の月販が1,500台なら、誰しも世に大量に出る車種の担当をやりたい筈だ。
従って技術部門の人間にとっては、仕事内容だけに限っては、合併すること自体に、大した違和感は無いと言える。
●営業部門の場合
営業部門にとっては、技術部門以上に複雑な問題が存在する。
合併前まではライバル車種であった○○車と△△車は、お互いに自社のモデルとライバル他社の車の優劣比較を挙げて、「セールストーク」のマニュアルを作成し、自社傘下の販売会社の営業担当に商品教育を施していた。
余談だが、筆者が某ディーラーに駐在していた頃、トヨタがチャネル毎に「マークII」と「チェーサー」「クレスタ」3姉妹を展開していた。
マークIIと競合している見込み客がいたので、「チェーサー」を扱うディーラーに架電して、「マークIIを検討している」と伝えると、電話口の営業マンは、マークIIに較べてチェーサーにはこんな利点があるとか、マークIIにはこの装備が外されているとか、いろいろとセールストークを展開してくれて、大いに参考になった。
同じメーカーの他チャネルでさえ、そんな状況であるのに、ライバル関係で火花を散らしていたA社とB社が合併して、今まではお互いを「貶し合っていた」までは言い過ぎだが、お互いの欠点と、自社の優位性を競い合っていた者同士が融和するには、或る程度の期日が必要となることは否めない。
●得意分野の重複
トラック専業メーカーと、乗用車専業メーカーであれば、相互に補完することで、比較的に融和することは容易だが、ホンダと日産の場合だと、殆ど重複する車種構成でもあり、どこかのお役所が「日産の沈没を防ぐため」に何とかして欲しいと懇願したのだろうと推測する。
そこで、溺れて助けてもらう立場の者から、「対等」だの何だのと言われれば、「それなら勝手に泳いで帰れば?」と破談になったのは想像に難く無い。
役員給与も溺れている側が平均8,000万、ライフセーバーが6,000万ではやっていけないだろう。
自社の置かれた状況を冷静に認識し、先ずは「助かる」最善の方策に向けて、努力するべきだったと考える次第である。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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