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荏原製作所、日大と培養肉量産化に向けた共同研究を開始
荏原製作所が日本大学との共同研究を開始(画像:荏原製作所の発表資料より)[写真拡大]
荏原製作所は21日、日本大学と培養肉製造を目的とした共同研究を開始したと発表した。成熟脂肪細胞を培養して細胞を作製する「脱分化脂肪細胞(dedifferentiated fat cells、以下:DFAT)」の開発者である、生物資源科学部の加野浩一郎教授と共同で進める。廃棄される肉の脂肪細胞を用いた培養肉の大量製造を目指す。
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動物の肉体は1つの受精卵から細胞分裂を繰り返し、胚細胞や神経細胞、筋細胞などに分化し形作られていく。DFAT(ディーファット)は、分化の最終形態である終末分化した成熟脂肪細胞を培養して、自発的な脱分化(分化状態を失い分化前の状態に戻ること)を誘導することで、細胞を作製する。高い増殖能力を持ち、筋細胞や脂肪細胞だけでなく、軟骨、血管細胞などへ分化転換する多能性細胞だ。
DFATはこれまで、主に医学分野で研究開発が進められてきた。加藤教授は、2015~17年頃には獣医再生医療に脱分化細胞を用いた研究を実施。また日本大学医学部では、20年2月より患者本人の脂肪細胞を培養して作製したDFATを移植して、血管を再生する臨床研究を開始している。患者の年齢や病状に影響されずに均質な多能性細胞を製造できることから、再生医療用の細胞として期待されている。
共同研究では、食肉加工の過程で廃棄される脂肪組織を活用予定。DFATにより筋細胞や脂肪細胞に分化させるなどして、培養肉の安定的な製造を見込んでいる。また培養肉だけでなく、細胞を体外で育てて牛乳や皮革などを作る細胞農業の様々な用途での展開も見据えているという。
荏原製作所は、DFAT大量製造装置の設計開発を担う。製造の仕組み構築に向け、流体制御技術や装置機器設計ノウハウの提供を予定している。
同社の細胞培養肉の取り組みは、荏原グループの長期ビジョン「E-Vision2030」に基づく。その中で「進化する豊かな生活づくりへの貢献」を設定。実現に向けた新たな価値創出の1つとして、バイオテクノロジーを用いた細胞培養肉・再生医療の推進を掲げている。
23年2月に策定した中期経営計画「E-Plan2025」にも盛り込んでおり、他社との業務提携も行いながら着実に遂行していくとしている。
23年6月には、細胞培養事業を展開するインテグリカルチャーと共同開発を開始。同社が独自開発した細胞培養技術を用いて、培養肉や細胞農業の推進を目指すとしている。そうした流れの中で今回の日本大学との共同研究開始に至った。
荏原製作所は装置の開発を進めながら、大量製造と生産技術の合理化に取り組む方針。その先に、細胞農業が社会へ広く普及する状態を目指していくという。(記事:三部朗・記事一覧を見る)
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