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北川鉄工所、通期は増収減益、2023年度は減収計画も黒字化を掲げ、業績見通しの達成に注力[写真拡大]
2023年3月期決算説明会
北川祐治氏:本日は大変お忙しい中、北川鉄工所の決算説明会にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。
前期に続き、今期も大変厳しい決算状況となりました。会社としてはさまざまな意味で変換期にあると考え、現状や今後についてご説明します。
会社概要
まずは会社概要です。本社は創業以来、広島県府中市にあります。社員は単独で1,442名、グループ合計で2,460名、事業規模は連結売上高で600億円規模の会社になります。
事業内容として、工作機器、産業機械、立体駐車場、金属素形材を取り扱っています。スライド右側には経営ビジョンを記載していますが、私が社長に就任した時に掲げたものになります。
「お客さま第一主義」「素直な心と勇気」「社員満足」「イノベーション」の4つの価値観を大切にし、「Quality Businessを実践する集団である」ことを目指して活動しています。
事業概要 KGhカンパニー
現在、当社は3つの社内カンパニーで運営しています。1つ目のKGh(キタガワ グローバルハンド)カンパニーでは工作機器を扱っています。スライドの写真は旋盤用チャックで、アクセサリのロボットハンドでグリッパと言われる部分です。右下の機器は円テーブルで、マシニングセンタ等で使われます。
事業概要 KSTカンパニー
2つ目のKST(キタガワ サンテック)カンパニーでは建設機械、立体駐車場を扱っています。建設機械では、スライド中央のビル建築用のタワークレーン、右上の生コンを生産するコンクリートプラント、右下の立体駐車場では現在大型を中心に扱っています。
事業概要 KMTカンパニー
3つ目のKMT(キタガワ マテリアル テクノロジー)カンパニーでは、自動車部品の鉄系鋳物の製造や鋳物製品の機械加工、農機具、建設機械器具等々、鉄系鋳物の加工を行っています。
現在、KMTは日本国内だけではなく、メキシコと今後閉鎖する予定があるタイの3拠点で生産を行っている状況です。
経営環境
それでは2022年度の状況についてお話しします。まずは4つの経営環境についてです。1つ目は「世界経済のブロック化」ということで、世界経済が「グローバル化」から「ブロック化」へと大きく変化しています。米中の経済対立もしかり、先日開催されたG7(広島サミット)でも「グローバルサウスの台頭」とあったように、一部の途上国や新興国が経済的にも大きなマーケットを築きつつあります。
2つ目は、とりわけ日本で言えることとして、「デフレ経済からインフレ経済へ」の変化があります。特にBtoBでは価格をコストベースで考えていましたが、今後は価格政策が重要な経営課題になると認識しています。
3つ目は「自動車業界の変質」です。我々は自動車業界のお客さまへ自動車部品を直接納品しており、工作機器等々においても自動車業界は最も大きなマーケットですので、非常に大きな影響を受けます。自動車業界は安定した業界であることが特長でしたが、コロナ禍以降の2年、3年の間に深刻なサプライチェーンの混乱があり、生産計画と実態においてありえないような変化が起こりました。あるいは、政治的なEV化生産台数の拡大も転換点となりました。
4つ目は「GX意識の拡大」です。環境をテーマに、さまざまな分野で取り組んでいかなければならないと考えています。
決算概要
2022年度の決算状況です。売上高は前年度とあまり変化はなく、営業利益はようやく黒字という状況です。経常利益は約10億円、親会社株主に帰属する当期純利益はマイナスの継続を余儀なくされました。
経常利益は約10億円まで上げましたが、先ほどお話ししたとおり、タイの子会社の工場閉鎖に伴い発生する費用等々があるため、最終的に当期純利益はマイナス着地となりました。詳細はこのあとご説明します。
セグメント別業績
セグメント別業績です。KGhカンパニーの売上高、営業利益は前期比で若干プラスとなりました。KSTカンパニーの売上高は前期比で大きくプラスとなっていますが、営業利益はマイナス約8億円となりました。KMTカンパニーの営業利益は、前期に引き続き今期もマイナス約18億円となりました。それぞれのセグメントについて詳しくご説明します。
KGhカンパニー 市況情報
まずはKGhカンパニーの市況情報です。スライドは右端を2023年とした工作機械の受注推移を表しており、棒グラフは内需(国内)・外需(海外)、折れ線グラフが受注総額(12ヶ月移動平均)を示しています。
スライドをご覧いただくとおわかりのとおり、この業界は好不況を繰り返す特性があります。2022年に山を迎え、現在は下り坂に入ったところです。ただし、現在は「下り坂」と言いながらも下り方が緩やかであると言えます。
KGhカンパニー 決算概要
KGhカンパニーは工作機械業界の好調を受けて好調を維持しました。しかし、メインの自動車関連の停滞を受け、思ったような結果となりませんでした。
海外市場については各国の対応がありますので、一律にお伝えすることはできませんが、中国などは大変厳しい状況でした。しかし、新しいマーケットを開拓しながら、それなりの数字をあげることができたため、前年と同様の結果を得ることができました。
KSTカンパニー 市況情報
KSTカンパニーの市況情報として、国内における建設投資、CP販売高、生コン出荷量の推移を表しています。生コンは国内全体で約1億立米から約7,400万立米まで下降してきており、業界は決して発展しているわけではありません。しかし、生コンはエリアにおいて多忙なところとそうでないところがあるという特徴があるため、プラントのマーケットそのものは安定し、それなりに動いている状況です。
KSTカンパニー 決算概要
KSTカンパニーの売上高は前期比で増加しましたが、材料費の値上げが収益を悪化させ、営業利益は減少しました。特に立体駐車場、荷役機械関連設備にそのような傾向が見られます。
要因の1つに、納期が非常に長いことが挙げられます。現在約1年の受注残高を抱えて工場はフル稼働状態ですが、納入は1年後となっていますので、価格設定時と最終納入時の価格差を製品に価格転嫁できず、収益性をさらに落としてしまっています。
そのため、売上は伸ばしたものの、結果として収益が厳しい状況となりました。
KMTカンパニー 市況情報
KMTカンパニーの市況情報として、世界における自動車生産台数推移を示しています。コロナ禍後は回復傾向にあります。
KMTカンパニー 決算概要
KMTカンパニーの収益は大変厳しい状況になりました。要因としては数量減にもかかわらず、材料費・電力料等々の価格高騰に対し、十分に価格転嫁することができなかったことが挙げられます。このような要因が重なり、営業利益はマイナス約19億円と非常に厳しい状況になりました。
KMTカンパニー 営業利益前期比分析
KMTカンパニーの営業利益の前期比分析です。前期のマイナス2億円から始まり、正味売上高減少に伴う経費未回収分・逸失利益の約10億円が減益要因です。
数字として売上高は11億円の減少となっていますが、単価値上げや為替換算による影響が含まれており、我々は生産していますので、生産という点で見ると前期比で10億円ではなく31億円の減少と、収益性はかなり厳しい状況です。
価格転嫁も行っていますが、不十分な価格転嫁として約8億円の減益要因があります。また、前期はメキシコで減損を出しており、今期はその分の償却費が減り8億円を戻しましたが、為替の影響や新規受注品の立ち上げに社内的に大変苦労し、結果的には全体として19億円のマイナスとなりました。
海外子会社の状況について
海外の子会社について詳細をご説明します。スライド左のKTCがタイの工場です。為替変動があるため、現地通貨でご説明します。売上高は2020年度の7億6,000万バーツから2021年度は7億9,000万バーツとあまり変わらないのですが、2022年度は5億9,000万バーツと多少の売上はあるものの、生産を止めている状態です。営業利益についても厳しい状況が続くと見ています。
生産により発生する費用については今期に計上しています。来期の計画の中でもう少しご説明しますが、工場閉鎖に伴う費用については来期の計画に織り込んでいます。また、2022年度は従業員解雇費用を特損に計上しています。
右側のメキシコについては生産数量の減少に加え、価格転嫁もできず大変苦しんでいます。2021年度は約2,800万ドル、日本円で32億円の減損を計上せざるを得なかったのですが、それだけ減損を計上しても今期は厳しく、実態はさらに深刻な状況です。今後の対応については、来期の計画の中でご説明します。
連結海外売上高の推移
連結海外売上高比率について、2018年度は約20パーセントありましたが、業績が厳しいこともあり、現在は約15パーセントまで低下しています。こちらは商品の性格的な違いはあるものの、自動車部品関連と自社で行っているKGhカンパニーの商品を合わせた数字です。こちらはカンパニー別のパートでご説明します。
特別損失等の内訳について
特別損失の内訳についてです。2021年度はメキシコ工場の固定資産の減損が32億円と大きな額を計上しました。2022年度はタイ工場のライン閉鎖に伴い、スライドに記載の額の損失を計上しました。
連結キャッシュフロー概要
連結キャッシュフローについては、フリーキャッシュフローが前期のマイナス約12億円から5億円とプラスとなりましたが、決して褒められた状況ではありません。
設備投資概要
設備投資の概要です。厳しい状況は続いているものの、引き続きKMTカンパニーに投資をしています。EV化が進む中、メキシコではトランスミッション系の部品からデフケースを中心としたEV商品に変更していくためのもので、ある意味では矛盾しているところもありますが、事業を継続していくために必要だと判断して投資を行っています。
連結貸借対照表概要
連結貸借対照表は、前期とほぼ同等の数字となっています。
主要指標推移
主要な指標であるROE、ROIC、キャピタリゼーション比率(Cap比率)ともに厳しい状況です。
トピックス
トピックスです。現在、本社を再構築しており、特に今後伸ばしていきたい事業であるKGhカンパニー、KSTカンパニーにおいて生産増強のための整備を行っています。その第1弾がスライド左側のKGhカンパニーの新工場「FactoryⅡ」で、順次新工場を建設していきます。
右側は「鳥栖プレミアムアウトレット」の立体駐車場です。1992年の発足以来、このような立体駐車場の納入実績が1,000基に達しました。また、昨年はタワークレーンを2,000基納めました。Kitagawaブランドの商品はしっかりと実績を上げています。
事業計画概要
2023年度の計画についてご説明します。売上高は前期比減収の計画です。営業利益は7億円、経常利益は11億円、親会社株主に帰属する当期純利益は6億円と、まだ満足できる数字ではありませんが、2023年度中の黒字化を掲げています。この計画の中には、先ほどお伝えしたタイ工場閉鎖に伴い発生する費用等もすべて織り込んでいます。
セグメント別事業計画
セグメント別の事業計画です。KGhカンパニーの売上高・利益は2022年度とほぼ変わりません。KSTカンパニーについては、立体駐車場の減収や、クレーン事業についてもちょうど端境期に入り受注はするものの翌年の納入となるため、売上高は前期比減収を計画しています。価格転嫁については徐々に進んでいくため、利益は売上ほど減少しません。
KMTカンパニーはまだマイナスですが、生産増と価格転嫁を見込み、営業利益は前期比10億円の改善の計画です。
KGhカンパニー 計画概要
KGhカンパニーの計画についてご説明します。工作機械業界はMachine Tool Accessoriesの業界ですので、業績は工作機械業界の動向に比例します。ピークを迎える2023年度はマーケットが減速するものの、それほど減速とはならず前年同等程度の計画としています。業界動向として、今年は下がりつつも来年の前半には底を打ち、後半には再び上昇するような動きになると見ていますので、それに見合うよう動いていきたいと考えています。
海外については2つあります。1つ目は、新たにメキシコ市場の開拓を進めています。カンパニーは違うものの、我々はメキシコに生産拠点を持っているため、そちらをベースにしながら展開しているところです。新たな市場を開拓していきます。
2つ目はインドに新工場を作るということで進めていきます。これまでいろいろと準備をしながら進めていたのですが、今回はスモールスタートということで、インドの機械の性能や工作機械のサービスの状況などを確認しながら機械を入れて、生産を始め、インドのお客さまに納入していきます。
最初にお伝えしたように、「グローバルサウスの台頭」ということで、工作機械の業界でもマーケットはさらに拡大しました。中国については政治的なこともあり、マーケットの拡大が難しいため、今後はインドを中心に海外展開を考えています。
KSTカンパニー 計画概要
KSTカンパニーは、立体駐車場、荷役機械関連設備の減収により、売上高は減収を見込んでいます。ただし、受注ベースでは落ちておらず積み上がっていますので、来年の売上に反映される認識です。
KMTカンパニー 計画概要
KMTカンパニーは、国内は堅調ですが、海外の工場拠点に大きな課題があります。タイの工場は閉鎖しますが、メキシコでは次なる投資も含めて安定した生産・供給ができる体制を作ろうということで改革を進めているところです。
メキシコの売上高は前期比約50パーセント増を計画しており、大幅な収益改善を期待しています。タイの工場は2023年末に閉鎖になりますので、可能な限り費用を使わず閉鎖できるよう、移管作業を進めます。ただし、まだ生産は続いていますので、お客さまにご迷惑をおかけしないように引き継ぎを含めて来期は取り組んでいかなければなりません。
メキシコは生産が戻ってきますので、それに伴い収益の改善を進めていきます。ただし、国内では材料・エネルギーの価格の転嫁はそれなりにご理解いただけるのですが、海外では日系企業でもなかなか認めていただけないことが多く、売上は戻るものの収益的にはマイナスです。引き続きお客さまにお願いするとともに、生産性向上を含めて、改善を進めていきたいと考えています。
設備投資計画概要
設備投資計画の概要です。KMTカンパニーでは可能な限り投資を抑えながら、現在の状態を保てるようにしていきます。そして、KGhカンパニー、KSTカンパニーを中心に、投資を行っていきたいと考えています。
ようやくKGhカンパニーに投資できるようになってきました。先ほど、トピックスとして、本社再構築で1つ新工場を建設したとお伝えしましたが、本体となる工場の建設はこれからですので、2023年から2024年はKGhカンパニーに投資していきたいと考えています。
主要指標計画値
主要指標の計画値です。決して満足できる数字ではありませんが、2期連続のマイナスとなりましたので、来期は必ず黒字転換し、そこを起点としてさらに発展させていきたいと考えています。
株主還元
株主還元について、2023年度は30円の配当を予定しています。最低額として30円と設定していますが、株主のみなさまにご理解いただかなければいけません。最小限の還元ということで、今回はこのように設定しています。
スタンダード市場への移行
2023年4月の東京証券取引所の規則改定で、上場維持基準抵触時の取り扱いが明確にされました。
もちろん、プライム市場に残りたいと思っていますが、株主のみなさまが当社の株式を保有・売買できる環境を失ってはいけません。
当然ながら株主のみなさまを最優先で考えなければいけないということで、今回、スタンダード市場への移行をやむを得ず、決議しました。
ただし、自らの責任で事業を再編し、再びプライム市場に戻れるように努力していきたいと考えています。
以上、2022年度の決算の状況と2023年度の事業計画の概要となります。
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