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シチズンの前期収益好調の中身と今後を考える
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前3月期決算を確認していて、目を惹かれた1社にシチズン時計(東証プライム、以下シチズン)があった。2021年3月期の「25.8%減収、95億5100万円営業損失、7円減配5円配」に対し、「36.2%の増収(2814億1700万円)、222億7300万円の営業利益、13円増配の18円配」。
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比較可能と見るセイコーホールディングス(東証プライム)も営業利益を大きく伸ばしてはいるが、絶対額は87億7000万円。そしてシチズンは今期も「4.3%増収、1.0%営業増益、12円増配30円配」計画と、堅調な船出となった。
時計業界に興味を持ったのは、世界市場のシェアで日本企業が上位10位に3社が名を連ねるいまや稀有な存在だからだ。圧倒的な1位はアップル(シェア28.3%)。2位スウィッチ(9.7%)、3位ロレックス(8.7%)と続き・・・7位にカシオ(2.1%)/8位にセイコー(1.6%)/9位にシチズン(1.5%)が登場する。世界に冠たると言ってよい日本の時計メーカの1社がシチズン。
シチズンの前期決算を改めて覗き込んでみた。
『時計事業』: 総売上高の約47%を占める。最上位ブランドの「The CITIZEN」など、新製品を投入。だが新型コロナウイルス禍の影響で国内売上高は微増。対して北米が「BULOVA」ブランドを中心に順調に伸びた。実店舗販売もさることながら、EC販売の伸びが牽引。欧州市場も堅調な販売で推移。ムーブメント(車で言うとエンジン)販売も北米軸に堅調。結果、前年度の81億円の営業損失から103億円の営業黒字に転換。
『工作機械事業』: 総売上高比率約29%。シチズンの時計事業と並ぶ双璧。半導体関連をはじめ建機・住宅設備関連等の受注好調が、自動車向け回復の遅れをカバー。海外は米国の医療関連の積極投資効果や、ドイツ・イタリアなどが自動車関連の堅調が寄与。73.4%の増収(810億円)、329%の営業増益(125億円)となった。
と見てくると・・・国内経済の景気回復の遅れを先行して回復に転じた、海外市場の貢献で急激な回復を実現したことが読み取れる。言い換えれば今期計画の「堅調」は海外の好調持続をベースにした、「国内回復」期待と見ることができる。
さて株価はシチズンをどう捉えているか。3月期決算発表直後は6月3日の575円(年初来高値)まで買い進まれた(年初来安値は3月9日の457円)。時価も高値圏。が、アナリストの見方(IFIS目標平均株価)は529円。信用取引の取り組みも買い残減・売り残増。(国内部門の)状況を見定めようとしている感が強い。さて・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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