相場展望1月10日号 バイデン支持率低下は、生活苦の不満の表れ バブル崩壊リスク回避の金利上昇&資産縮小を

2022年1月10日 10:39

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/6、NYダウ▲170ドル安、36,236ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策正常化を急ぐことへの警戒感で下落。
  ・FRBが公開した12月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受けて、金融引き締めで、『株式市場に流入する資金が先細りする』との懸念が広がった。
  ・ユナイテッド・ヘルス▲4%下落し、1銘柄でNYダウを▲130ドル押し下げた。
  ・米長期金利は一時1.75%まで上昇しハイテクが売られ、アップルが下落した。
  ・消費改善の見方からディズニー、アメックスが、原油高でシェブロンが買われた。

【前回は】相場展望1月6日号 新年お祝儀買い大幅高も、FOMC議事で冷や水 FOMC議事: 早期利上げ&FRB資産縮小が必要

 2)1/7、NYダウ▲4ドル安、36,231ドル(日経新聞より抜粋
  ・12月米雇用統計は労働市場の引き締まりを示し、失業率が3.9%と低く、平均時給の伸びは市場予想以上だったため、FRBの金融正常化を後押しする内容となった。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の正常化を前倒しするとの警戒感が引き続き重荷となり、米長期金利の上昇でハイテクの多いナスダックは下落した。
  ・反面、雇用市場の改善に着目し、米経済の回復が続くとの期待から景気敏感株を中心に買いが入った。
 

●2.バイデン大統領の支持率低下の原因は、インフレで国民生活が苦しくなった不満の表れ

 1)『インフレ率(物価高)+6.8%―賃金上昇率+4.7%=生活苦▲2.1%』に国民の不満が
ある。

 2)インフレは国民全般に影響を与えるが、賃金上昇の恩恵は新規就職・転職した人など一部に限定されやすい。既就業者の賃上げはあっても、平均賃金上昇率以下であり、一般の多くの国民ベースでは「実質収入の目減りは▲2.1%以上」で生活苦は厳しさを増していると思われる。

 3)バイデン大統領が支持率を回復させるには、この「生活苦」を解消させることにつきる。

 4)「生活苦の解消」には、
  (1)インフレ率(物価高)の低下。
  (2)賃金のインフレ率以上の全国民の収入底上げ。
  を挙げることができる。

 5)そのためには、
  (1)インフレを誘引した「過剰マネー」の吸い上げの実施。
  (2)政府が急激に膨らました「消費支出増加策の終息」が必要である。
   (1)には、金利引上げと、FRBのバランスシート縮小ということになる。ただ、市場のタントラム(癇癪)を引き起こさないように、市場との十分な対話が必須である。
   (2)には、新規1.75兆ドルの巨額な財政支出の大胆な減額見直しや、安易に国民への現金給付策を考えないことである。
    ・昨年3/17の国民1人当たり1,400ドル(15.5万円)の現金給付は、消費を煽り経済回復に寄与したが、給付金額が2,420億ドル(26.8兆円)と大きすぎて消費が急拡大したことを起因して供給網の混乱を呼び、必要以上にインフレを引き込んでしまった。
    ・米国の貯蓄率は増加していなので、給付金の7割が消費に、3割が株式投資されたとバンク・オブ・アメリカの調査がある。

 6)バイデン政権の施策が、高インフレを招いている現況
  (1)FRBによる毎月1,200億ドル(月13兆円)の市場への供給が過剰マネーを必要以上に膨らませた。
   ・結果、過剰マネーが原油・商品・農産物市場に流れ込み、物価上昇を煽った。
  (2)巨額な現金給付が、消費支出へと短期間に一気に流れ込んだ。
   ・結果、供給障害と物価上昇を招くなどインフレ圧力を誘引した。民主党左派に迎合した労働者・雇用優先政策が、政権の柔軟な臨機応変力を奪い、金融政策の転換を遅らせ、過度なインフレの高進(物価高)を招いたといえよう。
  (3)一過性のインフレ対策が足元を見られ、さらなるインフレを助長させた。
   ・原油価格下落をねらった原油備蓄放出など一過性のインフレ対策の失敗。WTI原油価格は11/24終値78.39⇒1/7高値80.47ドルとさらに上昇。
   ・最大の原油生産国である米国は日量1,300⇒1,000万バレルと減産継続しながら原油価格低下のためにサウジなどOPECプラス諸国に増産を求めるという矛盾。結果、サウジなどから協力を得られず頓挫した。サウジは首都防衛用の迎撃ミサイル使用増加で在庫欠乏したため追加供給を米国に求めたが、バイデン大統領は了承したとの報道はない模様。サウジはやむなく米国と敵対する国に、迎撃用ミサイルの購入交渉をしているようだ。
   ・このようにインフレ対策を通じて、諸外国の反発や市場から足元を見られ、大きな負の課題をつくったといえる。

 7)バイデン政権の支持率低下の上記以外の要因
  (1)アフガン撤退時の失態
  (2)コロナ対策の不手際

 8)米政権とFRBの施策が『後手・後手に回る可能性を、危惧』⇒『バブル崩壊から回避』上記の通り、打つ手が後手に回り始めたと思われる。
  (1)FRBは今からでも『後手』となった対策を、『後手・後手』にしないことが重要。
   ・FRBの「市場への新規資金供給は、昨年初めには終了すべき」、さらに、「金利引上げは昨春に開始すべき」、「FRBのバランスシート縮小は昨夏から始めるべき」だったと、推測する。
   ・インフレの終息のために、早期の利上げ&バランスシート縮小が望ましい。『後手・後手』になると『オーバーキル』となりやすく、結果として米国経済の重症化と企業業績に深刻な影響を与える可能性が高まる。したがって、遅くとも、『3月利上げ&4月バランスシート縮小開始』が望ましいと思料する。

  (2)バイデン政権の消費支出拡大策としての昨年3/17の1人当たり1,400ドルの現金支給が、インフレを高伸させた大きな要因の1つと思われる。
   ・「後手・後手に回ったインフレ抑止策」が引き起こすのは『急激なブレーキ』を踏みやすくなることである。「急激なブレーキが、景気後退を速め&底を深くする」という懸念が浮上する。
    ・したがって、これ以上の消費刺激はインフレリスクを膨らませるだけである。最悪の『悪性インフレは避けなければならない』からだ。『後手・後手』に回った結果、行き過ぎたインフレ対策に陥りやすく、
株式市場にも波及し『株式バブル崩壊』の可能性が高まることに留意したい。
   ・すでに、米長期金利上昇に反応して、ナスダック総合は1/3をピークに、1/7終値で▲5.7%も下落している。一部の小型株の下落も目立ち始めている。
   ・早急に、大胆で的確な対策を、市場と慎重な対話を通じて実行する対応力が望まれる。間違った政策と適時を外した判断は『傷を大きく、深くさせやすい』ことに留意したい。

●3.米国株、長期金利の指標・10年国債利回りは2年ぶり一時1.8%台に上昇、警戒の状況

 1)金利の推移       昨年12/1   今年1/7
    10年国債利回り 1.404%   1.765%に上昇
    2年国債利回り   0.551%   0.868%に上昇

●4.サンフランシスコ連銀総裁「緩やかな利上げと、早めのバランスシート縮小開始を支持」

 1)バランスシートの縮小時期は、初回利上げ時ではなく、1回目もしくは2回目の利上げ後に着手すると想定した。(ロイター)

 2)FRBのバランスシート規模は、コロナ禍前は現在の8.5兆ドル超の半分程度だった。

●5.米12月非農業部門雇用者数19.9万人、予想42.5万人・11月21万人を下回る(フィスコ)

 1)雇用者数は、予想の半分にも届かず、期待外れ。(ブルームバーグ)
  ・労働市場のタイトな状況をうかがわせ、早ければ3月の米利上げを後押しする可能性がある。

 2)12月失業率は3.9%、予想4.1%・11月4.2%より改善。(フィスコ)
  ・3%台は、感染拡大前の2020年2月以来。
  ・失業率は、昨年から2.8%改善した。(ブルームバーグ)

 3)賃金急増⇒利上げ圧力強まる
  ・平均時給は前月比+0.6%増、前年同月比+4.7%増
  ・インフレが加速する中での、失業率低下や賃金の伸びは加速は、より速いペースでの金融政策の引き締めを正当化する可能性がある。

 4)労働参加率は61.9%で変わらず。
  ・現在就業している人の割合である就業率は、25~54歳で79%に上昇し、2020年3月以来の高水準となった。

 5)今回の調査期間は12月中旬で終了したため、オミクロン株関連の影響は1月の統計に反映される。
 

●6.米12月ISM非製造業景況指数62.0、予想67.0・11月69.1から予想超え悪化(フィスコ)

 1)11月の過去最高から一転し、予想を下回り失望したことから、
  ・米国債相場は下げ止まり10年債利回りは1.728%で推移。
  ・為替はドル安となり、115.87円⇒115.67円までドル安・円高。

●7.週次失業保険申請件数20万件と、1969年ぶりの低水準と労働市場逼迫(フィスコ)

 1)予想失業率は4.1%、11月4.2%からさらに低下し、パンデミック前の低水準を回復。

●8.米11月消費者信用残高+399.9億ドル、予想+200億ドル・10月168.9億ドル(フィスコ)

●9.シティG、ワクチン接種なしの従業員を解雇へ、今月規制強化 (フィスコ)

●10.ユーロ圏、消費者物価は前年比+5.0%上昇し、2カ月連続で過去最高を更新(NHK)

●11.サムスン電子、半導体価格低迷で10~12月期営業利益は予想下回る(ブルームバーグより抜粋

 1)営業利益は約1兆3,300億円と、アナリスト予想から▲9.2%下回った。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/6、上海総合▲9安、3,586(亜州リサーチより抜粋
  ・経済活動の縮小が懸念される流れとなった。中国国内で新型コロナ感染拡大が散発する中、当局は「ゼロコロナ」政策による行動制限を強化している。
  ・Gサックスは、中国が2022年末までコロナ対策で入国規制を継続する可能性があると指摘した。2月北京五輪、秋の共産党大会と重要イベントが相次ぐ。
  ・ただ、李克強首相は「大規模減税を実施、1~3月期の経済成長を促す」と述べているため、下値を叩くような売りは見られない。
  ・業種別では、運輸・金融が冴えない。反面、インフラ建設関連が高い。

 2)1/7、上海総合▲6安、3,579(亜州リサーチ)
  ・中国国内で新型コロナ感染が拡大する中、複数の地区で都市封鎖を実施中。
  ・Gサックスは、全国的にロックダウンが実施された場合、中国の2022年国内総生産(GDP)成長率は悲観シナリオで1.5%まで鈍化する可能性との見解示す。
  ・行動抑制の影響が不安視されて、株価の上値は重く、マイナスに転じた。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、反面、不動産が買われた。

●2.中国当局、デフォルト懸念で銀行に対し不動産融資を1~3月期に強化を促す(フィスコ)

●3.中国・天津市1/9発表、オミクロン株市中感染で全市民1,390万人にPCR検査(共同通信)

 1)ねらいは、オミクロン株の北京市への流入阻止。(時事通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/6、日経平均▲844円安、28,487円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式市場で主要指数がそろって下落し、東京市場でも下落幅は昨年6/12の▲953円安以来の大きさとなった。
  ・12月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表され、利上げや資産縮小が速く進むとの見方が強まった。
  ・東京市場でも上昇が目立っていた値嵩株の半導体関連銘柄に利益確定の売りが出て日経平均を押し下げたが、保険と鉄鋼が上昇した。
  ・国内でも新型コロナ感染者数が増え、行動制限の懸念で、内需関連銘柄に売り。

 2)1/7、日経平均▲9円安、28,478円(日経新聞より抜粋
  ・朝方、自律反発ねらいの買いで+300円ほど上昇した後、下げるなど短期筋主導の動きが目立ったが、一巡後は米雇用統計の発表を前に、積極的取引が手控えられた。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げや保有資産の縮小を前倒しで進めるという見方が広がる中、株式市場からの資金流出を意識した売りが優勢だった。
  ・主力値嵩株や半導体関連、感染拡大懸念から陸運・レジャーが下落した。反面、大型株のトヨタなど自動車関連と、米長期金利上昇で銀行株も上昇した。

●2.日本株の材料:日銀は米欧より一足先に金融引き締め策に転換、企業利益は低下傾向

 (1)新年ご祝儀相場は2日間で終了し、1/6から売りに転じ、昨年末比でマイナスとなる。調整は長期化するリスクもあり、注視したい。

 (2)日銀の金融引き締め策は、米FRBや欧ECBより早く昨年4月から始まっている。
  ・2021年は▲14兆円の日銀保有資産を縮小し、市中から余剰マネーを回収した。
  ・2021年4月から年6兆円程度のETF「購入実績」⇒6兆円の「枠」扱いに変更した。これは、余剰マネーを、株式市場に新規供給を事実上停止したということ。(2021年6兆円枠⇒2021年10/1の701億円購入以降、3カ月以上ゼロ継続)

 (3)日銀は、金利の上昇を容認し始めた可能性が高まる。
  ・日本10年国債利回り上昇: 昨年12/16 0.040%⇒ 今年1/7 0.130%

 (4)EPS(1株当たり利益):企業業績は低下傾向。
  ・昨年12/28 2,094円⇒1/7 2040円・▲2.6%減。 

 (5)外資系先物:Cスイス1/6▲2,400枚と売り転換。買残多く売り転換なら影響大。
  ・1/5 25,182枚買残高⇒1/7 22,034枚・▲12.5%売。

 (6)海外投資家の買い越しの増加は、売り越しの建玉ともなり得るので注視したい。
  ・12月第4週+2,809億円、第5週+1,308億円(現物株+先物合計)の買い越し。

 (7)投資マネーは潤沢にあり、1/6以降調整しても短期に留まり反発のエネルギーあり。

 (8)オミクロンは重症化リスク小さいながらも、感染力が4~5倍と強力・潜伏期間短期化 4~5日で発症するので、決して甘く見ないこと。
  ・感染拡大での操業停止等は、インフレ高進させ、企業業績に悪影響。

●3.11月の実質消費支出▲1.3%減、外食などの消費で減少続く(NHK)

 1)旅行代金など教育娯楽▲3.7%減、外食や飲酒代など食料が▲3.0%減少。

 2)昨年11月はコロナ感染者数が減少し、外出が増えて洋服購入増で服・履物が+8.9%増。

●4.企業動向

 1)東急電鉄  コロナ禍の収入減で東横線・田園都市線の運賃12.9%値上げ(朝日新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4188 三菱ケミカル   業績好調。
 ・4595 ミズホメディー  業績好調。
 ・2726 パル       業績好調。

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