相場展望11月25日 米国市場は『金利上昇・資産縮小』を視野に、バイデン大統領は『中間選挙でインフレ継続』? 日経平均は本日、反発を予想

2021年11月25日 09:18

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/22、NYダウ+17ドル高、35,619ドル(日経新聞より抜粋
  ・バイデン大統領が11/22、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を再任する方針を発表し、金融政策を巡る不透明感の後退を好感した買いで一時+320ドル高まで上昇した。
  ・ところが、米長期金利が一時、前週末比+0.08%高い1.63%まで上昇し、高PER(株価収益率)のハイテク株への売りが強まると、航空機のボーイング、カードのビザやアメックスが下げ、NYダウは急速に伸び悩んだ。

【前回は】相場展望11月22日 株式相場は、好決算発表終わり、次の視点へ 米FRB議長人事は今週発表、インフレ対策影響

 2)11/23、NYダウ+194ドル高、35,813ドル(日経新聞より抜粋
  ・前日、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が続投する見通しとなったのを受け米長期金利がさらに上昇し一時1.68%と約1カ月ぶりの高水準となり、銀行の貸し出し利ザヤの改善期待から金融株が買われた。JPモルガンで+2%高、Gサックスは+3%高となり、2銘柄でNYダウを+90ドルほど押し上げた。
  ・反面、金利上昇で割高感が意識されやすいハイテクなど高PER(株価収益率)銘柄は売られ、相場の重荷になった。
  ・米政権が11/23、石油の戦略備蓄を放出すると発表したが、市場の想定通りで材料出尽くしとの見方から米原油先物相場は上昇した。原油高を受けシェブロンが買われた。
  ・医療保険のユナイテッドヘルス、製薬のメルクなどディフェンス株の一角が買われ、NYダウの上昇を支えた。

 3)11/24、NYダウ▲9ドル安、35,804ドル(日経新聞)
  ・感謝祭の祝日を11/25に控えて、積極的な取引が見送られる中、最近の長期金利上昇を受けて買われていた金融株が、長期金利が1.63%まで低下する場面があり、利益確定売りに押され、相場の重荷になった。
  ・反面、金利低下でナスダックが買われ、米景気の回復期待が相場を下支えした。11/24発表の週間米新規失業保険申請件数は19.9万件と、52年ぶりの低水準となり、10月の米個人消費支出(PCE)も市場予想以上に増えた。
  ・クレジットカードのビザや石油のシェブロン、建機のキャタピラーなど景気敏感株が買われた。

●2.米国市場は『金利上昇・FRB資産縮小』を視野に、大統領は『選挙でインフレ推進』?

 1)バイデン大統領の苦難
  (1)支持率41%と、就任後最低を記録し、浮上策に追われる

  (2)アフガン撤退の不手際

  (3)看板政策(1兆ドル、1.75兆ドルのインフラ投資・歳出法案)の成立に難渋

  (4)暫定つなぎ予算が12/3期限切れで連邦政府事務所閉鎖の危機対応の遅れ

  (5)議会対策はハリス副大統領の業務だが荷が重く、バイデン氏が担わざるを得ない

  (6)物価上昇(インフレ)対策の出遅れと不手際
   ・インフレ対策として、原油価格抑制に乗り出したが、不味い外交政策でサウジなどの離反を招き増産協力を得られず。
   ・代替案として、原油備蓄の僅かな取り崩しを各国協調で行うと発表したが、原油市場は一時的措置と足元を見て材料出尽くしと、逆に原油価格が上昇。
   ・原油備蓄放出の協力国に対して、「借り」をつくってしまった。
   ・米シェールオイル生産を回復指示し市場に供給すれば、効果的であった。尚、米シェールオイルの過去最高生産は1,300万バレル⇒現在1,000万バレル
   ・原油価格高騰の要因は、コロナ禍の経済正常化で需要増もあるが、米FRB等の資金供給(FRBだけで5兆ドル近い)による余剰マネーが投機化し、原油市場に流れ込んだことも大きく起因していると見ている。今年初めの木材価格高騰や、農産物価格などの資源価格急上昇は余剰マネーが暗躍したと言われている。投機化した余剰マネー縮小措置が取られれば、原油高騰の抑制効果があったと思われる。

  (7)来年の中間選挙ねらいの施策か、インフレ対策で物価安定をねらうか、バイデン大統領の判断が問われる。
   ・バイデン大統領は、ハト派(資金供給増)のパウエル議長を再任し、もっとハト派といわれるブレイナード理事をFRB副議長に指名した。
   ・FRB理事の空き枠3名の指名を、ハト派から選任すると言われている。
   ・そうなれば、インフレ高進し、さらなる物価上昇は必須で、悪いインフレとなる可能性が増す。
   ・原油価格はさらに暴騰する可能性が濃くなりそうだ。さすれば、今回の原油価格抑制策は何だった?となるのではなかろうか。自身の支持率浮揚と中間選挙目当てのリップサービスとなりかねない。
   ・高インフレを抑制するには『オーバーキル的な利上げの連続』が待ち受ける。結果として、米国経済のみならず世界経済が沈滞化する。今からでも、高所に立った判断をバイデン大統領に求めたい。

 2)利上げ観測を強める経済指標が出揃う
  (1)コア個人消費支出価格指数:
   10月+4.1%上昇、1990年来で最大を記録
   FRB目標+2%を2倍も上回る
  (2)ミシガン大学消費者信頼感指数:11月67.4と予想上回る
  (3)新規失業保険申請件数    :19.9万件と、1969年来の低水準まで改善
                     良好な雇用関連を示す指標となった
  (4)1年期待インフレ率     :4.9%と高水準

 3)金融市場は、『2022年に2回の利上げ』を織り込んでいる。
     

●3.パウエルFRB議長再任で、2022年の利上げ確率上昇(フィスコ)

 1)バウエル再任で、金融緩和の解除を計画通り進めるとの見方が強まった。さらに、パウエル議長や副議長に指名されたブレイナード理事が会見で、物価対応を優先する姿勢を示すと、金利先物市場では、2022年の積極的な利上げを織り込み始めた。

 2)金利先物市場は、FRBの
  (1)量的緩和(QE)を4月に終了
  (2)6月に最初の利上げ
  (3)11月に2回目の利上げ
  を織り込んだ。

 3)ドル買いも拍車がかかっている。

 4)パウエル議長がインフレリスクに言及したことに続いて、今まで「一時的」としてきたイエレン財務長官も「インフレを懸念する必要がある」とタカ派色を強めた。

 5)バイデン大統領は数週間内に3名のFRB理事を任命するとしている。2022年に中間選挙を控え、よりハト派メンバーを選出すると見られ、来年も(1)金利高 (2)ドル高 が継続できるかは依然不透明感が残る。

●4.BofAは、『2022年は「金利ショック」の年に』、市場に弱気予想(ブルームバーグより抜粋

 1)バンク・オブ・アメリカ(BofA )は、2022年の市場に弱気な判断を示し、投資家に資産の保護に集中するように促した。

 2)インフレ加速や金利上昇によって、世界的に資産価格動向が一変するとの見方が背景にある。

 3)(1)2020年:「成長ショック」
   (2)2021年:「インフレショック」
   (3)2022年:「金利ショック」
   の年になる、と指摘した。BofAの推奨するトレードは、「ボラティリティ指標や原油、エネルギー、米ドル、実物資産に対する買い」で、『2022年のテーマは資産保全が浮上する』との見方を示した。

●5.パウエルFRB議長再任、ブレイナードFRB理事を次期副議長に11/22指名(フィスコ)

 1)バイデン大統領は声明で、パウエル議長について、(朝日新聞)
   「インフレを低位に保ち、物価を安定させ、完全雇用の実現に注力することにより、米国経済をかつてなく強くすると確信している」と述べた。
 
 2)イエレン米財務長官は、この指名を「歓迎」「引き続きFRBを支援へ」(フィスコ)

 3)パウエル議長は、上院に承認されれば、来年2月から2期目に入る。任期は4年。FRBは今月、「量的緩和」の段階的縮小を決めたばかりで、政策の継続性を重視した。急激に上昇する物価への対応が当面の課題となる。(朝日新聞)

●6.米10月コア個人消費支出(PCE)は前年比+4.1%と、予想に一致(フィスコ)

 1)9月+3.6%からは上昇。

●7.米11月ミシガン大学消費者信頼感指数は67.4、予想66.9を上回った(フィスコ)

●8.新規失業保険申請件数は19.9万件と、1969年来の低水準まで改善(フィスコ)

●9.米10月新築住宅販売件数は74.5万戸、予想と9月の80万戸から下回る(フィスコ)

 1)住宅ローン金利や価格の上昇で需要が滞ったほか、建設資材不足で供給も引き続き低水準にとどまったことが影響した。

●10.米11月PMIは56.5に低下、労働力不足などが重石(ロイターより抜粋

 1)米11月総合購買担当者景気指数(PMI)は56.5と、10月57.6から低下した。 労働力の不足や、原材料の供給上の制約があり苦戦した。
 2)投入価格指数が11月78.1と、10月74.1から大幅に上昇し、2009年以来最高。この価格上昇は、消費者に価格転嫁されており、高インフレが当面続く可能性がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/22、上海総合+21高、3,582(亜州リサーチより抜粋
  ・先週末の好調な地合いを継ぐ流れとなった。
  ・景気腰折れを回避するため、当局は経済対策を強めるとの期待感が広がった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)は11/19、四半期ごとの金融政策執行報告書を公表。「通常の金融政策を堅持する」との表現を削除した。これを踏まえ、複数のエコノミストは、「人民銀は緩和方向に舵を切る」と分析した。
  ・業種別では、ITハイテク関連の上げが目立つ。自動車株も高く、素材・発電設備・証券・食品飲料株の一角も買われた。

 2)11/23、上海総合+7高、3,589(ロイターより抜粋
  ・当局が小規模企業の資金調達コスト負担を軽減するとの考えを示したのを受け、投資家のリスク選好姿勢が強まり、小幅続伸した。
  ・中国の李克強首相は前日、画一的な景気支援策は回避すべきとの考えを示した。
  ・みずほ調査ノートで、「中国経済成長を下押しする新たな圧力に直面しており、中国人民銀行は金融緩和の度合いを強める用意があるようだ」と指摘した。
  ・ただ、野村は現在の不動産融資規制が大幅に変更される兆しはまだ見えていないと分析した。
  ・中国の金融当局が一部の国内銀行に対し、不動産向け融資を増やすように指示したとロイターが報じたのを受け、不動産開発会社株は1%上昇した。

 3)11/24、上海総合+3高、3,592(亜州リサーチ)
  ・景気下支え策への期待感が相場を支えた。
  ・経済回復ペースの鈍化懸念がくすぶる中、中国人民銀行(中央銀行)は緩和的な金融政策に舵を切る、との見方が広がった。
  ・また、当局と人民銀は、中小企業の支援策を拡充していく方針を発表した。
  ・原油など商品市況高も追い風となった。
  ・米金利上昇や欧州の感染再拡大などを不安視した売りが先行したが、下値は堅く、中盤からプラスに転じた。
  ・業種別では、素材株が相場を牽引し、反面、自動車株が安かった。

●2.中国政府の土地売却収入は10月に4カ月連続減少、不動産開発業者の資金繰り難で

 1)地方政府の財政が圧迫され、インフラ投資の財源が限定されるため、(ロイター)
  土地売却以外での資金調達を迫られる可能性がある。

●3.株価急落のアリババ、専門家が「アリババの上場廃止リスク」を警告(Forbesより抜粋

 1)アリババは、今春の決算発表の中で、
  (1)事業のオペレーションに影響を与える可能性がある規制環境
  (2)プライバシーやデータ保護関連の規制や懸念
  について警告した。

 2)アリババは、今年4月に独占禁止法違反の罰金として、中国で過去最高額の28億ドル(約3,190億円)を課されていた。

 3)アリババは11/18の決算発表で、
  (1)中国経済の減速
  (2)政府の規制強化
  の中で、収益の伸びが鈍化するとの見通しを示し、今後1年間の収益予測を下方修正した。これを受けて、株価の下落に拍車を掛けた。株価は11/18の▲11%超える急落となり、11/19はさらに▲2%以上下落した。

 4)アリババの株価は、今年に入ってから▲40%近く下落している。また、アリババの創業者で会長の馬雲(ジャック・マー)氏は、かつて中国トップの富豪だったが、株価の下落で資産を失った。彼の保有資産は、2020年10/27にアリババの株価が史上最高値の約317ドルを付けた際は、666億ドルだった。今年11/19時点のマー氏の保有資産を386億ドルと試算している。

 5)株式調査大手CFRAのジョン・フリーマン氏は11/19に、中国の習近平国家主席は、規制強化に関して「一歩も引かない」と述べ、『アリババ株に上場廃止のリスクがある』と警告した。

●4.EV電池の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)は11/22、時価総額2位(ブルームバーグより抜粋

 1)中国株式市場で上場来高値を更新し、時価総額として本土上場の企業として中国工商銀行を抜き2位に浮上した。

 2)時価総額は終値ベースで、1兆5,900億元(約28兆4,300億円)。1位は酒造会社の貴州茅台酒で2兆3,300億元。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/22、日経平均+28円高、29,774円(日経新聞より抜粋
  ・欧州を中心とした新型コロナの感染再拡大で、世界経済の先行きに慎重な見方が広がる中、医薬品株に買いが入った。
  ・塩野義やアステラスなど医薬品株の上昇が相場の押し上げ役となった。景気変動の影響を相対的に受けにくいという位置付けから買いが入った。
  ・景気敏感株の中でも、業績や株主還元への期待が根強い海運や商社株の一角も買われた。
  ・米株価指数先物が持ち直したのも支えになった。
  ・東京市場は明日が祝日で休場とあって、様子見姿勢から積極的な上値追いは限られ、商いも低調だった。
  ・政府の経済対策が、消費拡大につながるかどうかにも懐疑的な声が聞かれた。

 2)11/23、祝日「勤労感謝の日」で休場

 3)11/24、日経平均▲471円安、29,302円(日経新聞より抜粋
  ・下げ幅は10/21(▲546円安)以来の大きさ。
  ・米国で長期金利の上昇からハイテク株が下落した流れを受けて、休場明けの東京株式市場でもグロース(成長)株を中心に幅広い銘柄に売りが広がった。
  ・バイデン大統領がパウエルFRB議長の再任を11/22に発表した。量的金融緩和の縮小が順調に進展するとの見方から、米国市場で長期金利が11/23に1.6%台後半まで上昇した。金利上昇を嫌気してハイテク株比率の高い米ナスダック総合は11/22~23に▲1.8%程度下落し、東京市場でも割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)株への売りが強まった。
・後場に入ってもグロース株への売りは止まらず、日経平均は一時▲560円まで下げた。
  ・反面、金利上昇を材料視した金融関連株や、円安進行で自動車株の買いが、日経平均を支えた。

●2.本日11/25の日経平均は「反発」を予想

 1)前日11/24の日経平均▲471円大幅安は、過剰反応のためで自律反発を予想する。
  ・11/24の外資筋の先物は総合で▲2,985枚の売越しだったが、特記するほどの売りではなかった。
  ・原油市場等の動きをみた外資系の先物売りに、アルゴ取引が下落幅を一方向に拡大させたと思われる。
  ・したがって、本日11/25は買戻しされて反発すると見込む。
  ・ただし、超短期筋のアムロが+5,025枚の大量の買越をしたので、11/25は解消売りしてくる可能性がある。その場合、反発の上値が重くなる場合がある。

 2)最近、米国株は10年国債の金利上昇に振り回されている。
  ・11/24の日経平均の下落も、前日の米10年国債利回りの急テンポな上昇に振らされたのが要因となった。

 3)年末の株高期待があり、振らされる局面があっても、12月上旬までは堅調に推移すると思われる。

●3.米FRB議長の再任で、「悪い円安」を懸念(産経新聞より抜粋

 1)パウエル議長が再任されたことで、2022年に金利引上げが見込まれるため、「ドル高・円安」の進行が想定される。

 2)「円安」は輸出産業に有利であるが、昨今の輸入物価の上昇に、「円安」効果が加わり、「コスト高」を招くため国内経済に打撃を与える『悪い円安』の側面が強くなった。

 3)デフレ懸念が根強く残る中、日本銀行は金利を低く抑える大規模な金融緩和を継続せざるを得なくなり、政策の選択肢が狭くなる。

●4.政府は、経済安全保障の強化に向け「量子暗号通信」の研究開発に145億円(産経新聞)

 1)理論上、盗聴が不可能とされ、関連市場は2035年度に約200億ドル(約2兆2,000億円)に達すると見込まれている。(共同通信)

 2)量子技術普及へ東芝・トヨタが中心となり全日本の体制構築で協議会発足(共同通信)

●5.政府は、小型衛星網構築に向け、2020年代半ばに3基打ち上げ(読売新聞)

 1)災害状況把握や海洋の不審船監視の活用が期待され、中露の極超音速兵器探知も視野。

 2)11/19決定の経済対策では、経済安全保障強化に向け5,000億円規模の基金を創設し、3基の打ち上げ費用約600億円は基金から捻出する方向。

●6.日本郵便、大谷選手のMVP記念切手など発売(時事通信)

 1)84円切手×5枚、ポストカード、タオルなどが入り、1セット5,500円。送料別。

●7.豪州政府は、12/1からワクチン接種完了の日本人に事前許可なしの入国認める(時事通信)

●8.企業動向

 1)村田製作所 新中期計画で「戦略投資」に2,300億円 (EE Times)
         2024度までに売上高2兆円、営業利益20%超、投下資本利益率20%超
         戦略投資:(1)環境への投資・技術獲得 (2)リスク対策 (3)ITインフラ
 2)関西スーパー H2Oとの経営統合に関し、オーケーの申立てを神戸地裁認める(MBS)
          オーケーは1株当たり2,250円でTOB(公開買付け)提案をする方針

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6902 デンソー   業績好調
 ・4502 武田薬品   業績良好
 ・5802 住友電工   業績好調

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