ロート製薬がボラギノールを買収 初の外部招聘社長:杉本氏の方向性

2021年6月16日 17:18

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 ロート製薬が6月8日、「天藤製薬を買収する」と発表した。痔の治療薬「ボラギノール」で知られる企業である。天藤製薬の創業家などから発行済み株式を3分の2超取得しての買収だという。買収額については、産経新聞だけが「90億円程度」(他メディアは未公開)と報じた。

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 2019年6月に社長に就任した杉本雅史氏が敷いた、「大衆薬部門強化」の一策である。ボラギノールには正直、いささか驚かされたが・・・。杉本氏はこう発信していた。「M&Aやブランド買収を通じて、一般医薬品(OTC医薬品)を拡充する。ロートが持っていない分野を埋める。新たな事業柱をつくる」。

 周知の通りロートは「目薬」、そして詳細は省くが「メンソレータムの買収」に入り口が求められる化粧品が主力であり、「事業・商品の多角化」が課題だった。杉本氏は健康志向の高まりという時代の流れの中で、「病気を自分で予防する取り組みが広がり、大衆薬の市場が拡大する」と予測した。

 就任時には投資対象として風邪薬やビタミン剤を挙げ、「市場の大きさに優先する」とした。揚げ足を取るつもりは毛頭ないが、痔治療薬市場も食指を動かすだけの市場ということなのだろう。

 杉本氏は、ロートでは初の外部招聘社長。ロートでは長らく創業者(山田安民)一族が社長の座を務め、社員からの登用は先々代の故吉野俊昭氏が初。杉本氏には「大衆薬事業の拡大を・・・」を提唱するだけの背景があった。武田薬品工業に入社。2つの子会社の社長を歴任し19年1月に、実質上スカウトされ早々に社長に抜擢された。大衆薬市場の「今後」「主力たりうる商品」に関しては、一家言を有した御仁。お手並みをしばらくは、とくと拝見したい。

 ところで私にはロートに関し、このところ新たな情報が伝わってこない「新事業」で興味関心を寄せているものがある。「再生医療」事業。11年に本格的な研究が「ロートリサーチビレッジ」で始まった。ベースとしている技術は「細胞を扱う技術(化粧品や皮膚向け製品の研究開発で蓄積)」であり「無菌製剤技術(目薬の量産化で得た)」。

 まず結実したのが「自動培養装置」。高品質な細胞を自動で作り出す。国内初である。その後「肝硬変に対する再生医療を用いた治験を新潟大学と治験を、17年に日本で初めてスタート」「塩野義製薬とライセンス契約を締結」が伝えられた。

 「当社は肝細胞を用いた医薬品分野のトップランナーを目指す」とする方向性も耳にした。が以来、なんらの話も伝わってこない。「新」ロートの出発ラインに、と期待しているのだが・・・。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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