値下げプラン発表で盛り上がる3大キャリアと、「産業スパイ」事件連想させる楽天 落差が意味するもの!

2021年1月16日 09:41

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 13日、携帯大手の一角をなすKDDIがトリで値下げプランを発表した。大容量プランについては、ソフトバンクと同じく容量無制限、4G・5Gとも利用可能で同額の6580円とした。NTTドコモは4Gと5Gに区分して、データ容量と料金に多少の幅を付けてはいるが、3社のプランはほとんど同一の条件と言えそうな内容だ。

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 データ容量の新しいカテゴリーとして登場した20GBクラスでは、NTTドコモとソフトバンクが2980円だったのに対して、KDDIは2480円と割安感を打ち出している。先行2社は1回5分以内の通話をかけ放題でセットしてあるのに対して、KDDIはユーザーのリクエストを受けて月額500円を加算すると、3社横並びとなる。

 若年層の6割以上が、1カ月間の累計通話時間が10分未満という調査結果や、アプリ通話が普及している状況を考えると、選択の幅が確保されたKDDIに多少の分は感じられる。

 KDDIが先行2社と大きく違う点は、1回200円でデータが24時間使い放題となるオプションを用意することだ。1日や1週間単位で課金されるシステムを持つ新ブランド「povo(ポヴォ)」が、今後サービス枠の拡大次第で存在感が際立つ可能性もある。

 20GBクラスで「povo」という工夫を見せたKDDIに対して、ソフトバンクにはLINEのアプリが使い放題というセールスポイントがある。これに対して、海外ローミングが可能というサービスでは、広範なユーザーに訴求することが期待薄なNTTドコモには一工夫必要だろう。

 苦しいのは「データ無制限、国内かけ放題で2980円」の単一プランで先行した楽天だ。現在はお試しで1年間の無料サービス中だが、目標としているユーザー300万人は達成できていないようだ。

 ユーザーが伸び悩む要因として、基地局の設置が進まないために通信品質への懸念が拭えないことが指摘されている。そんなハンディを抱えながらも、先行する3社に対抗するプランを練り上げている筈の楽天に、ソフトバンクから転職してきた社員が、不正競争防止法違反(営業秘密領得)容疑で逮捕されるという事態が明らかになった。

 大上段に「産業スパイ?」と囃す向きもあるが、データは随分安直に扱われていたらしい。双方の言い分は真っ向から対立するが、この職員の容疑が固まって立件されることになると、楽天の企業イメージが毀損することは避けられまい。

 昨年4月から続けてきた1年間の無料期間が締めくくられる大切な時期に、とんでもない爆弾を抱え込んだ楽天に、キャリアの3強1弱が固定化するというリスクが表面化して来た。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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