トヨタの強さ、日産の弱さ、ホンダのチョンボ (2) AIの先生は人間、現場主義が生む超合理性

2020年8月7日 07:20

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 ホンダは新型フィットの駐車ブレーキで発売前に不良を起こし、対策できずにサプライヤーを変更し、コストアップしてしまった。この体質を対策するには、不良の原因をホンダ自身がつかみ、対策できなければならない。つまり、駐車ブレーキに精通していなければならないのだ。

【前回は】トヨタの強さ、日産の弱さ、ホンダのチョンボ (1) 「品質はマニュアルと教育」では出来ない

 しかし、ホンダは不良を起こしたサプライヤーを指導できず、カイゼンできなかった。そしてサプライヤーを替えざるを得なかったのだが、その時、後輪ドラムブレーキからディスクブレーキに格上げしている。そのためコストは上昇したと考えられる。

 情けないのは、不良の原因追及も完結せず、業者を替えていることだ。これでは再発防止にならず、サプライヤーを使っていくにも、「品質管理」のレベルをホンダ自身が正確に把握できていない恐れがある。

 基本には、加工方法や組み立て方法など製造技術と生産技術を持っていて、サプライヤーの評価が出来なければコスト上昇を招くのだ。

 日産自動車も品質問題を過去に起こした時、「マニュアルと教育の徹底」で再発防止策としていた。これでは社員の気構えがどこにあるのか分からない。社員と接する組織が必要なのだ。

 それには、トヨタ・河合満元副社長のような「心遣い」がものを言う。以前、品質は「マニュアルと教育」では実現できないとの記事をいくつか書いた。しかしその時、日産自動車で品質管理に関わっていた人物が「ただの作文だ」と批判してきた。

 残念ながら、本人と話すことが出来なかったが、「マニュアルと教育」こそ「絵空事」だ。品質管理は「現実」である。現実を動かすのは人間だ。これからAIを使っていくにも教師データが必要だ。そのデータを作るのは人間の職人芸である。これが悪ければAIは使い物にならない。「AIの先生は人間、現場主義が生む超合理性」が資金効率を向上させるのだ。

 一方でトヨタは、職人の手作業を教える学校を持っている。それは当然だ。どんなに自動化が進んでも、加工技術は職人芸をデータとした時にはじめて使えるようになる。

 その昔、NC工作機械が導入され始めた時、「職人が要らなくなる」と恐れられたことがあるが、それによって人数は削減できても、腕のある職人は逆に貴重な存在となってきていた。技術の伝承が危ぶまれるほど、手作業を縮小してはいけないのだ。

 トヨタの河合元副社長は、現場に出ていつも肌身で現場を確認している。「ウソ」に聞こえるかもしれないが、現場に出て、その雰囲気から異常を発見することもあるのだ。匂いと言うか、雰囲気と言うか、誰も知らないうちに進んでいる異常事態が彼のような人間によって表面化したりする。

 現場で働く社員と「同じ飯を食い」、「同じ風呂に入って」、河合元副社長は社員を前向きにしているのだ。「昨日より今日」、「今日より明日」前進した姿を現場が見せ続けるには、日ごろからの大変な努力が必要であるのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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