トヨタ・ヤリス、ホンダ・フィット、どっちを選ぶ? (1) GRヤリスはラリーカー

2020年6月23日 12:27

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トヨタ・ヤリス(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

トヨタ・ヤリス(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 コンパクトカーの売れ筋2台を比べて「どちらを買うべきか?」と悩むのは、なかなか贅沢なことだ。これほど多種多様な車が売られている国も珍しい。その中の最も実用的な車種で、これほど性格を異にして、しかもどちらも一流と言えるほどの出来であること。日本人冥利に尽きる。

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 ここで注意が必要なのは、これまでのトヨタとホンダのクルマの全体的なイメージを捨ててかからねばならないことだ。これまでは、『トヨタはファミリーカーを作らせると一流だが、走りはちょっと?』。『ホンダのクルマは特徴的で走りがいい』となるのだが、今回は真逆と言って良い。それも高いレベルで競合している。これは「どちらが良いのか?」迷うのが当然だ。

 トヨタ・ヤリスは知っての通り、WRC(FIA 世界ラリー選手権)参加を目標としたベース車の役割がある。GRヤリスでは「RZ」「RS」「RC」と種類を揃え、「RC」ではラリー車を造る時の、つまりアクセサリーを省いたベース仕様となっている。最高出力200kW(272PS)、最大トルク370Nm、直列3気筒1.6リッター直噴ターボエンジン。トランスミッションは6速iMTと組み合わせている。本格的ラリー仕様で機械式4WDだ。

 また、手軽に2ドアGR仕様を楽しめる「RS」を用意するところは、さすがにトヨタだ。最高出力88kW(120PS)、最大トルク145Nm直列3気筒1.5リッターエンジンでノンターボだ。「Direct Shift-CVT」トランスミッションと組み合わせる。FF駆動で「かっこだけGR」となっている。だが軽量ボディであるので期待しよう。

 なお、「RZ」は日常使用できる豪華装備を施した、「RC」と同じエンジン・6速iMTトランスミッション装備の高性能バージョンとしている。自動でシンクロしてくれるiMTであるため、ダブルクラッチの必要性はない。だが、「ヒール&トゥ」は出来たほうが良い。

 このGRヤリス開発に際しては、直接ではないがBMWの影響が深いとみられる。トヨタとBMWは、トヨタ・スープラとBMW・Z4で、エンジンやプラットフォームなど共通部品を使うことを前提に共同開発した。特に、スープラのエンジンがBMWであることが注目だ。

 その時、世界ですでにプレミアムメーカーの地位を獲得し、値引きせずに売ることが出来るブランドとなっているBMWの設計開発ノウハウを、トヨタは学んでいる。両車の生産工場は、それぞれのメーカーの生産工場ではなく、カナダ本拠の自動車部品メーカーであるマグナ(Magna)の子会社マグナシュタイヤー(Magna Steyr)「オーストリア・グラーツ工場」となっている。少数生産の特殊なクルマであるからだが、トヨタは、BMWなど世界のメーカーの開発方法と生産方法のノウハウを試していると言える。

 トヨタがBMWの開発手法で学んだものは、「初めにレーシングカーを作る」ことだった。『全長・全幅・全高・ホイルベース・トレッドなどを、走る性能に理想的な寸法で先に決めて、それから市場調査に合わせてパッケージングを決める』としたことだ。

 つまり、プレミアムブランドとなる秘訣は、「走る性能を最優先課題として取り組むことである」と学んだことだ。トヨタ・ヤリスもその原則に沿って忠実に開発されており、ラリーカーのベースカーであり、かつ『極めてヨーロッパ的なクルマ』とも言える内容になっている。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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