コマツのスマートファクトリー (1) 【基礎知識】【95%は四則計算レベルで、かたが付く】

2020年6月16日 17:22

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 2月26日~28日に開催された「日本ものづくりワールド2020」において、小松製作所(コマツ) 生産技術開発センタで生産技術を担う山中伸好センタ所長が講演した。テーマは、『コマツ流IoTで“見える化”、“生産性改善”を実現した取り組み』であった。

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■管理技術には、全てOR(オペレーションズ・リサーチ)の概念が関わっている

 管理技術には、全てOR(オペレーションズ・リサーチ)の概念が関わっている。「シミュレーション」を思い浮かべると、イメージが湧いてくるはずだ。新型コロナウイルス(COVID-19)の防疫手法を考えるために必要なことも、ORの手法だと言える。

 三菱航空機・スペースジェットの座席数を決定するMR(マーケットリサーチ)でも基本はORであり、半世紀前のYS-11の日本航空機製造では「OR」と呼んでいた。このようにMRのデータを読み解くにも、ORは使われている。

 そのためCOVID-19防疫には、現状では「隔離(ロックダウンはできる限りの隔離)」しかなく、経済との両立を図るには『陽性者だけ隔離して感染確率を下げ、陰性者で経済活動を進める』ことが効果的と判断できる。ワクチンもなく特効薬もない現状では、経済活動を再開し持続するには「クラスターつぶし」と「検査して陽性者隔離」も含めて、大枠では他の手法では難しいと言えるだろう。

■95%は四則計算レベルで、かたが付く

 企業経営も新型コロナウイルス感染防止対策も、間違いなく「OR」の手法を使っている。【「問題解決」について、95%は簡単な「四則計算」レベルでかたが付く】と、50年以上前に教わった。日本で初めて警視庁管内、銀座で「系統信号機」を開発した故・唐津一教授からの教えだ。まだ松下通信工業(現パナソニックモバイルコミュニケーションズ)の部長時代だった。晩年には秋葉原再開発に関わっていた。

 唐津一氏は現在の「マイナンバーカード」の初めての提唱者だったが、当時、学生の左翼運動華やかな頃で「国民総背番号制」と言われ、ファシズム批判の的となった。その批判もまた一面正解ではあったが、その後半世紀余りにおける無数の企業活動の実践において、先生の【95%は四則計算レベルで、かたが付く】の教えは正しかった。

■品質管理の手法の基礎「いいクルマをつくろうよ」

 新型コロナの防疫について、「検査の精度」「医療崩壊防止」などは、「多種の検査との組み合わせ、繰り返し」、「予算処置」や大阪、東京などで見られる「アラート」、或いはニュージーランド首相が示した「国民に対する呼びかけの仕方」など「使い方の工夫」でしのぐしかない。「国民が一致してコロナ対策に向き合っていけるか?」が対策の第1歩だが、これは、「品質管理の手法の基礎」を知っているのかどうかが問題となる。これには「いいクルマをつくろうよ」と呼びかけるトヨタの姿勢が手本になる。

 その具体策として、社員の生活を保障していくことが大前提となるのだが、「リストラはしない」と宣言するトヨタとは違い、日本政府は「保障はしない」と言ってしまった。現実にどれほど実行できるかは問題だが、品質管理でもリーダーが「真心」を示すことが重要だ。

 リーダーは組織の構成員に寄り添い、先頭に立つ姿勢を持たなければならない。営業自粛など「厳しい指示」が通るのも、「恐怖心」を植え付けるだけでは出来ないことだ。その先に希望が見える必要がある。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: コマツのスマートファクトリー (2) 【前置き】誤解するので読まないでほしい

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