日清オイリオGの認知症への前向きな取り組み姿勢

2020年4月10日 12:09

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2020年2月に発売されたる「日清MCTオイルHC」のポーションタイプ。(画像: 日清オイリオグループの発表資料より)

2020年2月に発売されたる「日清MCTオイルHC」のポーションタイプ。(画像: 日清オイリオグループの発表資料より)[写真拡大]

 大塚HDが5カ年中計(至2023年3月期)において、「計画早期で、アルツハイマー型認知症のアジテーション(行動障害)に対応する医薬品を世に送り出す」と謳った。

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 この報道を受け私の頭に浮かんだのは、日清オイリオグループ(以下日清オイリオG)。

 日清オイリオGが「介護食」事業に足を踏み入れたのは1988年。子会社を介して発売を始めた「シルキー80」。腎臓病患者向けに開発した「蛋白質や塩分控えめの食品」である。好評。これを契機に、日清オイリオGは高齢者向け介護食に加速度的に注力を開始した。

 91年に販売を開始した「トロミアップ」シリーズなどが、その代表例。食べ物や飲み物の「とろみづけ」ができる、国内初の高齢者向け食品である。

 加齢に伴い人間は「呑み込む」機能が低下する。その延長線上には「誤嚥性肺炎」といった事態もありうる。食べ物・飲み物を誤って肺に通じる器官に入れてしまうことが原因。ちなみに肺炎は、日本人の死因の4位。トロミアップシリーズは「誤りなく呑み込める」ことを手助けする食品。

 シリーズの中には「トロミアップパーフェクト:飲食物の種類を問わずトロミづけができる」や、「あっ!というまゼリー:呑み込みが苦手な高齢者に向けた飲食物をゼリー状にする食品」などのヒット商品が相次いでいる。

 日清オイリオGの介護食は現在約60アイテムに達するが、あることを契機に「時の商品」となったのが「日清MCTオイル」。10余年前に遡るが、2008年米国の医学博士:メアリー・T・ポート氏が「MCT(中鎖脂肪酸油)がアルツハイマー改善に劇的効果」とする論文を発表したのが引き金だった。同社はいまでも「MCT効果」に関し、積極的な取り組みを見せている。

 例えば昨年5月には「米国油化学協会」の年次総会で、メアリー氏を始め著名な研究者3名を招聘し「MCTと脳機能に関するシンポジウム」を開催。200名を超える研究者・関係者と情報を共有、協会から表彰を受けている。

 また「日清MCTパウダー&オイル」シリーズは「高齢者や要介護者などの低栄養対策として、料理や飲み物に混ぜるだけで簡単にエネルギーアップが図れる」という観点から、「第5回介護食品・スマイルケア食品コンクール(農水省後援)」で「食品素材・材料部門 農水省食糧産業局局長賞」を受賞している。

 更には『食生活(中鎖脂肪酸)による健康寿命延伸の可能性の追求』と題する研究論文が、日本未病システム学会誌に掲載されたりもしている。

 介護食品/MCT関連事業の今後については至20年度の中計でも「ヘルスサイエンス事業(自社開発のMCTなどの活用によるウェルネスの提案による、ライフステージに応じた健康・エネルギーを提供)をグローバルに拡大する」と、注力姿勢を明確に謳っている。

 販売先は主に病院や介護施設。卸業を介して提供しているがアナリストは「ラインアップの何らかの商品が、大抵の病院・施設に導入されている」とする。

 高齢者の「誤嚥性肺炎」「認知症」対策は、喫緊の課題であることは論を俟たない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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