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「増資=売り」の一律的捉え方への疑問
2月14日付けの日本経済新聞電子版で、証券部:二瓶悟氏の『崩れる「減損は買い」 製造業の構造不況を警戒』を興味深く読んだ。14日の東京株式市場で日本ペイントHD/三菱重工/日本電気硝子の「減損損失」計上企業が、日経平均が横這い圏維持の中で大幅安となった事実に着目「減損は買い、という経験則が崩れつつある」と指摘する内容の記事。
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確かにソニーなどは2017年に(映画事業で)巨額の減損損失を計上した後、株価は上昇局面に転じた。日本マグドナルドHD、日立製作所なども然りで「減損損失=構造改革完了」と受け止められて株価は「底打ち・反転」となった。
だが二瓶氏は楽天証券経済研究所の窪田真之氏による「これまでの『構造改革の完了』というメッセージと違い、直近の減損の多くは経営判断の失敗と捉えられている」というコメントを引用し、「(一律的な)経験則が崩れつつある」と指摘している。
まったく同感である。
私は前々から定着した感が強い経験則「増資は売り材料」に疑問を抱き続けてきた。指摘されるように「増資はEPSの希薄化」につながる。それ自体は否定しない。だが1973年に入社した日本短波放送で早々に兜倶楽部担当記者になり、先輩から「増資⇔事業拡大⇔買い」と教えられた。
思い返せばこの教えも「一律的」ではある。が、同様に「増資=売り」もまた一律的といえるのではないかと、いまある企業の株価動向を目の当たりにして痛感している。
ティーケーピー(TKP)。昨年6月に5920円まで買い進まれた株価が、本校作成時点で1000円割れという昨年来安値水準まで大きく値を崩している。TKPのビジネスモデルは遊休(不採算)不動産を一括して借り上げ、小分けして「貸会議室」「ホテル宴会場/伴うケータリング事業」「コワーキングスペース」「レンタルオフィス」「宿泊型研修所」等の展開。
働き方改革というフォローの風もあり前期の「23.8%増収、24.3%営業増益」に続き今2月期も「18.8%増収、40.7%営業増益」で立ち上がり、昨年6月・8月に相次いで上方修正。が、一転しコロナウイルス禍による「利用減」から3月6日には下方修正を余儀なくされた。業態から勘案し下方修正は当然。この限りでは株価下落も納得できる。
が、TKPの株価が下を向き始めたのは昨年10月から。428万株の公募増資(10月)/53万株の第三者割当増資(11月)が契機だった。10月から11月にかけ10%近く値下がりしている。増資資金は「優先株の買戻し、短期借入金返済に充てる」とした。更なる成長を視野に入れた「事業拡大のための体質強化資金取得」の増資である。
無論コロナウイルス禍の先行きが見定められない以上、TKPの収益/株価反転のタイミングは予想できない。だがビジネスモデル自体は、今後の日本のあるべき「ワーキングスタイル」を勘案する上で不可欠な在り様。
TKPに恩も縁もない。だが2014年の段階で貸会議室には全てプラズマクラスター加湿空気清浄機(シャープ開発)を標準設置し、「埃・花粉低減」「ウイルス抑制」「新鮮な空気の提供」を図ってきたことは承知している。そして前記の「下方修正」から5日後に、こう発表した。「全会議室に消毒液を導入し、かつ徹底洗浄した。企業がコロナウイルスへのリスクヘッジのために一時的にオフィスを分散する需要が高まっていることに対応し、低廉なレンタルオフィスとして貸し出す」。
下げ過程でも、IFIS目標平均株価:5000円を算出したアナリストは全て「強気」姿勢。
本論に戻る。増資=売り材料という経験則も「一律的」に捉えるべきではないと考えるが如何か。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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