三井化学、長期経営計画で成長戦略を推進 材料・物質の革新と創出目指す

2017年12月12日 18:02

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 三井化学は8日、中国市場にて、合弁会社でのリチウム電池向け電解液の設備能力増強が完了し、11月から営業運転を開始したと発表した。リチウム電池は、ノートブックパソコン、スマートフォン、タブレット端末の普及に伴い需要が拡大しているが、電気自動車向けに中国で更に市場拡大が期待される。

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 三井化学は、三井鉱山が1913年に新規事業として石炭化学事業を開始したのがはじまりで、1950年代高度成長期に石油化学製品の大型プラントを建設し、石油化学工業に本格進出を果たした。1997年に三井石油化学と三井東圧化学が合併して三井化学が誕生した。

 2期連続で営業利益過去最高を目指し、長期経営計画により更なる成長戦略を推進する三井化学の動きを見てみよう。

■前期(2017年3月期)実績

 売上高は前年より1,316億円減の1兆2,123億円(前年比90%)であったが、営業利益は過去最高益となり、前年より312億円増の1,021億円(同144%)であった。

 売上高低下の主な要因としては、原燃料価格低下(ナフサ円/KL42,800円->34,700円)による販売価格の改定と、海外比率42%の中、急激な円高(1ドル120円->108円)による売上の低下1,006億円のほか、事業構造改革でポリウレタン材料の分社化による売上減246億円などがあげられる。

 営業利益の改善は、全社売り上げの46%を占める基盤素材事業で市況の好転、設備稼働改善により295億円のほか、ポリウレタンの構造改革効果68億円増益が主なものである。

■今期(2018年3月期)見通し

 売上高6,209億円(同109%)、営業利益482億円(同106%)と好調な上期(4-9月)実績を受けた通期見通しは、前年よりもやや円安(1ドル108円->111円)と、原油価格上昇による原燃料価格上昇(ナフサ円/KL34,700円->39,900円)を見込みながら、売上高は当初計画通り1兆3,000億円(同107%)、営業利益は30億円上方修正して1,030億円(同101%)を計画している。

■長期経営計画による成長戦略の推進

 2025年の長期経営目標として、売上高2兆円(対前期比165%)、営業利益2,000億円(同196%)を掲げ、次の成長戦略を推進する。

 1.モビリティ事業(今期売上高構成比24%)

 金属と樹脂の一体化技術や他の樹脂、添加剤との複合化技術により、リチウムイオン電池安全材料、バンパー、内装材料、燃料タンク、ドア油添加剤など幅広い車載商品の拡販を目指す。

 2.ヘルスケア事業(同11%)

 紙おむつ用高級不織布の東南アジア市場への拡販、高シェア歯科用接着剤と合わせて歯冠・ブリッジなど修復材料のデジタル加工推進、幅広い屈折率のメガネレンズ材料で世界シェア45%確保を目指す。

 3.フード&パッケージング事業(同15%)

 高成長するアジア市場への食品包装材料の展開、薬剤抵抗性のある病害虫むけ新農薬の開発を行う。

 4.次世代事業(同2%弱)

 圧電センサや次世代ディスプレイ材料などIOTソリューションなどの創出・育成を目指す。

 5.基盤素材事業(同48%)

 コスト競争力を強化し、安定収益を確保、社会・産業の基盤となる素材を提供する。

 材料・物質の革新と創出を通じて成長戦略を推進する三井化学の動きを今後も見ていきたい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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